会社法第120条に違反すると、以下のような責任が生じ得ます。
- 刑事罰:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(会社法第976条)
- 民事責任:株主代表訴訟による損害賠償請求
- 役員責任:善管注意義務違反として解任の理由となり得る
違反が発覚すれば、レピュテーションリスクにも直結し、取引先や金融機関からの信頼を失うことにもつながりかねません。
5. 専門家が関与する場面と助言内容
法律の専門家としては、以下のような場面で助言や手続きを行うことがあります。
- 株主総会の招集通知・議案内容の事前チェック
- 第三者割当増資などにおける利益供与リスクの助言
- 議決権行使に関連する金品授受の有無の確認
- 内部規程の整備に関するアドバイス
利益供与に該当する可能性がある場合は、速やかに弁護士と連携を取るなど、関係専門職が連携してリスクの回避を図ることが重要です。
6. 適法なインセンティブとの違いとは?
たとえば株主優待制度や、株主への公平な配当は「適法な利益」とされます。
しかし、特定の株主の議決権行使に影響を与える目的でのみ行われる利益供与は、たとえ金額が少額であっても違法となる可能性があります。
判断に迷う場面では、文書化と証拠保全を徹底することがトラブル予防に有効です。
7. まとめ:経営判断と法令遵守のバランスをとるために
会社法における利益供与の禁止規定は、形式的なルールではなく、企業の健全性・透明性を守るための本質的なルールです。
経営判断の自由と法令遵守のバランスを保つためには、社内体制の整備と、外部専門家の適切な関与が必要不可欠です。
「これは利益供与に該当するか?」と少しでも迷う場面では、早めに専門家に相談することで、大きなリスクを未然に防ぐことができます。