それって本当に「相続放棄」ですか?

2022年09月16日

「相続放棄」とは、裁判所に「相続放棄申述書」を提出して行うもので、効果として、初めから申述した方は、当該相続の相続人ではなかったとなるものです。

つまり、当該相続の権利(財産)及び義務(負債)を相続しないことが確定します。

それでは、次の事案は相続放棄なのでしょうか。

「私は、亡くなった父の財産をもらっていないから相続放棄したんだ。」

これって相続放棄したことになるのでしょうか?

母・子供2人の事例で考えてみましょう。遺産分割協議で、子供の一人が資力があるので財産をもらわない旨定め、遺産分割協議書を作成しました。その後、父親が財産を超える負債があることが発覚した場合、財産をもらわなかった子供は、当該債務の債権者の請求を受けることはないのでしょうか?

民法909条(遺産分割の効力)遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

今回の事例の債権者はこの第三者にあたり、相続人間で定めた遺産分割協議の効力は及ばないため、債務の履行請求に対して「相続放棄」を理由に拒否することはできません。マイナスの財産を遺産分割協議書で定める場合には、債権者の承諾があって初めて有効になります。つまり「第三者の権利を害することはできない」からなのです。

それでは、「相続放棄」をするには、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?

まずは、被相続人(亡くなった方)の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出しなければなりません。期間は、相続を知った時から3か月です。添付書類として、被相続人と相続放棄をする方の関係を証する書面が必要です。注意すべき点は、相続財産を一部でも使った後に相続放棄申述はできなくなります。気を付けてください。

費用は、相続放棄申述書に貼る収入印紙800円と、裁判所から照会書の郵送のための郵便切手が必要です。

結論として、家庭裁判所に「相続放棄申述書」の提出をして受理されていなければ、それは相続放棄ではありませんのでご注意を。

詳しくは、司法書士まで。

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