セミナー資料公開(遺留分の生前対策➁)

2024年04月11日

「遺留分の生前対策➁」で、遺留分の算定から遺留分侵害額の算定まで解説しております。遺留分侵害額が算定出来ましたら、遺留分権利者による遺留分侵害額請求権の請求ができることになります。その効力範囲などを解説していきます。

目次

1.遺留分侵害額請求権とは

2.遺留分侵害額の請求順

3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲

4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効

5.まとめ


1.遺留分侵害額請求権とは

 被相続人が財産を遺留分権利者以外に贈与又は遺贈し,遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合,遺留分権利者は,贈与又は遺贈を受けた者に対し,遺留分を侵害されたとして,その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。 これを遺留分侵害額の請求といいます。(民法1046条)

 遺留分侵害額請求権の法的性質は形成権であることから、受遺者又は受贈者に対する具体的な金銭請求権は、遺留分侵害額請求権を行使して初めて発生することになります

※形成権:権利者の一方的な意思表示によって現存の権利関係に一定の変更を生じさせる権利のことです。

2.遺留分侵害額の請求順

 ①受遺者と受贈者がある場合

 (受遺者:遺言で遺産を受けた場合、受贈者:生前に贈与を受けた場合)

  先に受遺者が負担することとなります。(民法1047条第1項第1号)

 ➁受遺者が複数ある場合又は、贈与者が複数あるときで贈与が同時に行われた場合

  原則:受遺者。受贈者は遺贈・贈与の目的の価額の割合に応じて負担

  例外:遺言者がその遺言に別段の意思表示をした時は、その意思に従う

  (民法1047条第1項第2号)

 ③受贈者が複数あるとき(上記➁を除く)

  後の受贈者から順次前の受贈者が負担(民法1047条第1項第3号)

※贈与を先にした場合、明確にならない場合があるので、遺贈が先の順位となります。

 遺贈は遺言者の死亡により効力を発生するので同時になり、贈与も同時なら価額の割合になります。贈与の場合は、前後関係があるので新しい後の贈与から順番に負担することがルールとして定められています。

受遺者又は受贈者が無資力(請求時に財産がない状態)で遺留分権利者が満足を得ることができない(金銭債権を回収できない)場合の損失の負担は、遺留分権利者が負担することになります。(民法1047条第4項)つまり、請求しても請求先が無資力なら、次の順位の受遺者、受贈者が負担するのではなく、遺留分権利者自身が負担することになるということです。

3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲

 ①金銭債権の発生(民法1046条第1項)

  ※金銭債権が発生するものの、いきなり受遺者に支払えと請求しても、遺贈されたものが不動産などすぐに金銭に変換できないもので、受遺者に資力が乏しかった場合には、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、金銭支払債務の支払いに係る期限の許与をすることができます。(民法1047条第5項)

 ➁受遺者又は受贈者が、第三者弁済等により遺留分権利者が負担すべき相続債務を消滅させた場合、遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務の額の限度において、遺留分侵害額請求権によって負担する債務の消滅を請求することができます。(民法1047条第3項)

 ※受遺者、受贈者が、遺留分権利者が負うはずだった債務を消滅させたのだから、その分減額してと言える権利です。これも遺留分権利者に受遺者又は受贈者が減額又は消滅させてと意思表示しなければ効力は生じません。

4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効

 遺留分侵害額請求は、遺留分権利者から相手方に対する意思表示によって行います。そして、この意思表示は、「裁判上」でも「裁判外」でも構いません

 つまり、単純に相手方に請求すれば、遺留分侵害額請求をしたことになりますので、請求時に金銭債権が発生することになります。

 ここで、いつまでも侵害額請求することができるとすると、受遺者や受贈者にとって、いつ請求されるかわからないという不安がずっと続くことになりますので、民法上遺留分侵害額請求権の消滅時効が設けられています

 ①遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年(民法1048条前段)

  ※単に相続開始・贈与・遺贈があったことを知るのみでなく、それが遺留分を侵害し、遺留分侵害額請求を市うべきものであることを知ったときである。(最判昭57.11.12参照)

 ➁相続開始の時から10年(民法1048条後段)(除斥期間-多数説)

  ※つまり、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときが相続開始から10年経過していた場合には、もはや請求することはできません。

5.まとめ

 遺留分侵害額請求権を行使した場合のルールについて解説してきました。遺留分侵害額請求権は、各相続人に残された最終的に行使できる権利です。他の相続人たちから妨害されないような仕組みになっていますが、権利ですのでいつまでも行使しないと時効にかかってします仕組みもあります。

 また、遺留分侵害額請求権の行使につきましては、裁判上、裁判外共に行使することができます。

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