相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
他人の住民票を勝手に変更し口座開設?

令和5年7月10日のニュースで、他人の住民票を勝手に変更し口座開設をして、そのキャッシュカードを販売していた50代男性2人が逮捕されました。現在、住民票の変更手続きがどうなっているのか、その本人確認をどのように実施されているのかを見ていきたいと思います。(今回の事件で空き家の住所が使われていました。)
目次
1.市役所の住民票変更手続き
2.事件の手口
3.まとめ
1.市役所の住民票変更手続き
実際の手続きを確認して、本当にできるのかどうかを確認してみることにしました。
私の事務所の最寄りの市役所で、住民票の移転の届出をする場合の手続きについて確認しました。届け出ができる方として
①本人 ➁世帯主又は同一世帯の方 ③代理人(①➁以外の方)
※代理人の場合は、委任状(原則、異動する人が自筆で記入したものに限る。)が必要です。
つまり、直筆という要件で、変更の届出ができてしまうものでした。本人確認は窓口にきた方の本人確認になります。(市役所HPより抜粋)
・・・できちゃいますね。
ただし、委任状には、「偽り、その他不正な手段により委任状を偽造した場合は、刑罰の対象になります。」との注意書きがあります。当然、本人に成りすまして、この委任状を作成した場合、「公正証書原本不実記載罪」で罰せられることになります。刑法157条1項では、 同罪の刑事罰は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
2.事件の手口

犯人らは、上記手口を使い、融資希望で連絡をしてきた男性から免許証のコピーを取得し、その男性を住民票の住所を空き家の住所の変更し、その住所を使ってネットバンクの口座を開設。そのキャッシュカードをネット上で販売していたそうです。
ネットニュースでしたので、そのコメント欄には、行政や政府の批判が多かったですね。
3.まとめ
士業専門家が使う「職務上請求書」というものがあるのですが、とある士業(司法書士ではない)の先生が、この冊子(100枚つづり)を興信所に売りさばき、その結果、権限のない者が、不法に戸籍などの個人情報を取得する事件が起こっています。その損害額は5億円とも言われていますが・・・・。政府は、その士業に対して、今後職務上請求書を使わせない方針をにおわせており、当該士業の単位会(香川県会など)では、研修など盛り込んで教育している状態です。この士業の先生と話をする機会があったのですが、「職務上請求書がなくても大丈夫だよ。委任状があれば、取得できるからね。むしろ、トラブルがないから、そっちの方がいい。」とおっしゃっていました。
果たしてそうなのでしょうか?
今回の事件、かなり大問題だと思います。その代理人の委任状を使って、代理人の本人確認で手続きができてしまうことが、大々的に分かってしまったわけじゃないですか。おそらく、代理人への行政の対応は厳しくなるか、無くすかの方向に向かうと考えられます。そうなったとき、委任状も職務上請求書も使えなかったら相続人調査用の戸籍については、相続人に取得してもらうしかなくなりますよね。
だからこそ、職務上請求に関しては、使用する際には慎重になりますし、県外郵送対応の場合、職務上請求が空振りで不要な場合でも、必ず私は、回収をしております。
また、途中で依頼者が断ってきた場合には、請求中の戸籍について、即連絡をして権限がなくなったので、職務上請求書の返還をお願いしております。そのくらい重要なものであり、その書類の効力が絶大なものであることを理解しているからです。単に戸籍が取得できる書類ではありません。
近隣の市町村でも、職務上請求を使った不当な住民票取得で処罰された士業の先生がいます。また、司法書士YOUTUBERの女性司法書士の住民票を本人に無断で職務上請求した方もいらっしゃったみたいです。
あまり、このような事件を起こすと、職務上請求自体無くなってしまう可能性があります。安易に考えることはやめましょう。
また、今回の事件で住所の移転先が「空き家」だったことも問題だと思っています。空き家もどんどんご近所でも増えている状況です。空き家問題は、行政の問題のように話をされる方がいますが、個人の持ち物なので、個人の責任であると考えます。こちらも、相続登記義務化も含め、早めの対策が必要かと考えます。

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