令和6年4月1日から、不動産登記で追加された項目

2024年06月06日

令和6年4月1日に施行されたのは、相続登記義務化だけではありません。不動産登記において、所有権の登記名義人について、任意・必須項目が追加されています。その内容について、解説したいと思います。

目次

1.旧姓の併記

2.会社法人等番号

3.外国人名のアルファベット表記

4.まとめ


1.旧姓の併記

 不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)により、現在の所有権の登記名義人の氏名に旧氏を併記することができるようになりました。結婚等により、姓が変わった方が所有者の場合、旧姓の氏名もカッコで表記できるようになりました。

(表記)

 権利部(甲区)

 順位番号  登記の目的  受付年月日・受付番号 権利者その他の事項

  1    所有権移転  年月日第〇号     香川県高松市番町一丁目1番1号

                          香川 髙子

                         (讃岐 髙子)

 ただし、旧姓表記ができる所有者である登記名義人の要件があります。それは、

「旧氏は現在の所有権の登記名義人の氏名にのみ併記することができ、これ以外の者は、旧氏併記の対象とはなりません。

また、日本の国籍を有しない者については、旧氏を併記することはできません。」

 申出をすることができる場合として

「次の(1)及び(2)の登記を申請する場合に、それぞれに定める者が当該登記の申請人である場合には、登記官に対し、その一の旧氏を申請情報の内容として、当該旧氏を登記記録に記録するよう申し出ることができます(※)。(規則第158条の34第1項)

※併記したい旧氏が登記される氏と同一である申出をすることはできません。

 また、次の(1)及び(2)に定められた方以外の方が申し出ることはできません。

(1) 所有権の保存若しくは移転の登記、合体による登記等(不動産登記法(平成16年法律第123号)第49条第1項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときに限る。)又は所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る。) 所有権の登記名義人となる者

(2) 所有権の登記名義人の氏についての変更の登記又は更正の登記 所有権の登記名義人

  ※名前や住所のみの変更の登記の申請と併せて申出をすることはできません。」

(法務省HP引用)

 つまり、所有権を取得した者が、所有権保存・所有権移転登記等を行うときや、氏名の変更が生じたときのみにしかできません。例えば、すでに今の姓で登記がなされている場合に、住所変更のみ生じ、住所変更の登記を申請する場合は、同時に旧姓の登記をすることはダメということを言っています。

(登記申請例)

登記の目的 所有権移転

原 因 令和○年○月○日売買

権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号

法 務 太 郎( 登 記 太 郎

義 務 者 ○○郡○○町○○34番地

    甲 野 花 子

添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報

代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報

旧氏を証する情報

登記識別情報(又は登記済証)を提供することができない理由 □不通知 □失効 □失念 □管理支障 □取引円滑障害 □その他( ) □登記識別情報の通知を希望しません。 令和○年○月○日申請 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)

(以下省略)

2.会社法人等番号

 令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として法人識別事項が追加されました。この理由としては、法務省から以下の通り説明があります。

①所有権の登記名義人である法人の識別性が向上。

➁令和8年4月1日からは、所有権の登記名義人が会社法人等番号を有する法人であって、その会社法人等番号が所有権の登記に記録されているときは、会社法人等番号を検索キーとして、商業・法人登記システムの情報に基づき、登記官が職権で法人の名称又は住所の変更の登記をすることが想定されていため。

とされています。

(法人識別事項申出書の例)

申出の目的 ○番所有権変更

法人識別事項証明情報 会社法人等番号 1234-56-789012

申 出 人 ○○市○○町一丁目34番地 法務商事株式会社

    代表取締役 法 務 太 郎

添付情報 法人識別事項証明情報(会社法人等番号がある法人に関しては、なしとなります) 代理権限証明情報

令和○年○月○日申出 ○○ 法務局(又は地方法務局)○○支局(又は出張所)

(以下省略)

 ここで、「法人事項証明情報」とは何かといいますと、「民法等の一部を改正する法律により、令和6年4月1日から、所有権の登記名義人が法人であるときの所有権の登記の登記事項として、会社法人等番号その他の特定の法人を識別するために必要な事項(以下「法人識別事項」といいます。)が追加されました。」とあります。すでに閉鎖されている法人の場合には、会社法人等番号を確認することができる閉鎖事項証明書又は閉鎖登記簿謄本を提供する必要があります。

3.外国人名のアルファベット表記

 外国人を所有権の登記名義人とする登記の申請の際(※1)には、ローマ字氏名(氏名の表音をアルファベット表記したもの)を申請情報として提供する必要があります。また、添付情報として、ローマ字氏名を証する情報(※2)を提供する必要があります。ただし、代位により登記を申請する場合その他の登記名義人となる者等以外の者が登記を申請する場合において、登記名義人となる者等が住民基本台帳に記録されていない外国人であるためローマ字氏名を証する情報の提出が困難であるときは、例外的にローマ字氏名を申請情報として提供しないこととして差し支えありません。

(法務省HP引用)

例外の代位登記によりアルファベットが住民基本台帳に乗っていないなどの理由がある場合のみ、アルファベット表記のみでもよいというもので、原則、カタカナ表記(アルファベット表記)という形で申請するようになります。

(登記申請書の例)

登記の目的 所有権移転

原 因 令和○年○月○日売買

権 利 者 ○○市○○町一丁目5番6号

ジョン・スミス(JOHN SMITH) 義 務 者 ○○郡○○町○○34番地

義 務 者  甲 野 花 子

添付情報 登記識別情報(登記済証) 登記原因証明情報 代理権限証明情報 印鑑証明書 住所証明情報 ローマ字氏名証明情報

ローマ字氏名証明情報について、具体的には、「住民票の写し(ローマ字氏名が記載されているものに限ります。)

4.まとめ

 今回ご紹介した不動産登記についての変更点について、1.旧姓の併記は「任意」ですが、2.会社法人等番号と3.外国人のアルファベット表記については、「必須」事項となります。

 今後、不動産登記で所有権が法人もしくは外国人に移転する場合には、注意が必要となります。

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