任意後見契約と家族信託契約の違い

2023年07月07日

認知症対策として、「任意後見契約」と「家族信託契約」があります。先の家族信託万能論の罠でも解説している通り、同じ「財産管理」であっても、その内容は大きく異なります。こんな筈ではなかったとならないために、比較解説していきます。

目次

1.はじめに

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

3.結局どちらの制度がいいのか?

4.まとめ


1.はじめに

 認知症対策として「任意後見制度」と「家族信託」という2つの制度があります。「どちらの制度がいいの?」、認知症対策相談の時、相談者様からよく質問を受けます。どちらの制度も一長一短があります。制度の内容を要理解せずに、表面的なメリットのみとらえて選択してしまうと、「こんなはずではなかった。」ということにもなりかねません。内容をよく理解した上で選択することが重要になります。なぜなら、この2つの制度は、性質が異なるものだからです。ご家族の置かれた状況からどちらの制度を選択すればよいか見えてくると思います。それでは解説してまいります。

2.「任意後見制度」と「家族信託」の違い

 (事例)母は既に亡くなっており、父親が最近少し物忘れが多くなってきており、長男夫婦と次男夫婦がいる事例で見ていきます。

 このような事例で、長男が「財産管理」をしていきたい場合を考えていきます。

 ※父親に判断能力がまだあることが前提条件となります。すでに判断能力を失われている場合には、法定の成年後見制度を利用することになります。

 ※2つの制度共に詐欺被害などにあった場合の「取消権」がないので対応はできません。法定の成年後見制度にはありますので、ここでも選択の判断が分かれます。

3.結局どちらの制度がいいのか?

 事例から見ますと、父親に「身上監護まで必要」であるなら任意後見制度を利用し、必要なければ「家族信託」という選択になります。

 しかし、家族信託のみで対応していたがために、父親の認知症が進み、要介護認定の申請手続きや、介護施設への入所契約など発生した場合、「法定の成年後見制度」を利用しなければならなくなります。

 そこで、大きな財産については「家族信託」で財産管理をして、それ以外の財産と身上監護を「任意後見制度」を併用する方法もあります。

 また、併用だとコスト面で大きくなるのであれば、どちらがいいのかの選択が必要となってきます。この場合は、ご家族でよく話し合ったうえで決めていただきます。

4.まとめ

 ①積極的な財産管理を行いたいのであれば「家族信託」

 ➁身上監護が必要なら「任意後見」

 ③裁判所の関与を避けたいのであれば、「家族信託」

 ④どちらの制度もご要望になじむのであれば、費用で比較する

 「任意後見制度」も「家族信託」もどちらかを選択すれば完ぺきといった制度ではありません。それぞれの制度の趣旨が異なるためです。どちらもご要望に馴染まない場合がありますので、制度をよく理解して決めなければなりません。専門家と相談しながら進めていくのがいいと思います。

最新のブログ記事

「まだ元気だから、認知症になってから考えればいい」
これは、生前対策を先送りにする際に、最も多く聞かれる言葉です。
しかし結論から言えば、認知症になってからでは、生前対策の選択肢はほとんど残っていません。判断能力が低下すると、遺言書の作成や不動産の処分、贈与といった行為は原則としてできなくなるからです。
この記事では、認知症後に"できなくなること"と、"今だからこそできる対策"を、司法書士の実務視点で解説します。

「うちは家族仲が良いから、相続でもめるはずがない」
これは、生前対策のご相談で最も多く聞く言葉です。
しかし結論から言うと、家族が仲良しなほど、相続でもめるリスクは高くなる傾向があります。相続トラブルの原因は法律知識の不足ではなく、期待のズレや感情の行き違いにあるからです。(仲がいいからもめるのではなく、相続発生後、揉めないケースもありますが、一番大きいのが感情のもつれだと感じます。)
この記事では、なぜ"仲の良い家族"ほど相続トラブルが起きやすいのか、そしてそれを防ぐために生前に何をすべきかを、司法書士の実務経験をもとに解説します。

「とりあえず遺言書だけ書いておけば安心」
これは、生前対策について非常に多い誤解です。
結論から言えば、遺言書は相続対策の重要な手段ですが、万能ではありません。遺言書で対応できるのは、主に「亡くなった後の分け方」です。一方で、認知症になった後の財産管理や、生前の家族間トラブル、感情的な対立までは解決できません。
この記事では、遺言書の限界と、実務で本当に必要とされる生前対策の考え方を解説します。

<