会社・法人解散後にする官報公告について

2024年02月13日

会社・法人が解散をした後、清算人が行う仕事は3つ、「現務の結了」「債権の回収」「債務の弁済」です。この中で「債務の弁済」、つまり当該会社・法人の債権者に向けて解散を知らせる手段として、「官報公告」があります。今回は、「官報公告」について、お話をしたいと思います。

目次

1.会社・法人が解散した後の手続き

2.具体的な官報公告の手続きと費用

3.まとめ


1.会社・法人が解散した後の手続き

 会社・法人が解散をした後、清算人が行う清算事務は3つ、「現務の結了」「債権の回収」「債務の弁済」です。この中で「債務の弁済」、つまり当該会社・法人の債権者に向けて解散を知らせる手段として、「官報公告」があります。合併など、解散以外の手続きでは、2重公告(官報公告+新聞広告(定款で定めた公告方法))で知れたる債権者への格別の催告を省略できる場合がありますが、解散の場合には、知れたる債権者への催告は、省略できません。

ご覧の通り、「官報公告」は必ず求められます。それでは、具体的な官報公告の手続きと費用についてお話します。

※官報とは政府が発行する機関誌で、行政機関の休日を除き毎日発行されています。一般の人は官報をあまり見る機会がないと思いますが、現在はインターネットでも直近30日分の官報を無料で閲覧できるようになっています。

2.具体的な官報公告の手続きと費用

 全国には、48か所の官報販売所があります。官報公告をする場合、最寄りの官報販売所に連絡をして、「官報公告等掲載申込書」をメール又はFAXで入手します。記載事項に記載し、この時一緒に「公告文(官報に掲載するための内容文)」も送ります。「公告文」について、どのような内容が必要なのか法定されています。必須事項と任意事項がありますが、掲載料は行数に応じて発生しますので、できるだけ任意事項については、必要な場合以外は外しておいた方がいいかもしれません。そして、事前に記載内容を確認し、その上で依頼します。

 掲載までにかかる期間について、香川県官報販売所においては、入稿から13営業日後に掲載されます。結構時間がかかりますので、解散する日が確定している場合などは逆算して掲載日を決めることをお勧めします。解散して後に官報公告を依頼したのでは、13営業日だと約半月官報掲載までに時間を要します。そして、会社法499条には

「(債権者に対する公告等)

第499条 清算株式会社は、第475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。

2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。」とあります。

 つまり、官報で公告しますが、その期間は2か月を下回ることができませんので、法務局では、解散登記から2か月経過後でなければ、清算決了登記を受け付けません。仮に、2ケ月以内に登記申請すると却下されます。

 費用面についてですが、官報に掲載する分の行数により変わってきますが、1回の公告費用は、3から4万円ぐらいです。

 また、法人の種類によっては、複数回の官報公告を規定しているものもありますので、専門家にご相談ください。(例:医療法人の解散の場合、3回要求されます。)

 「医療法第56条の8

清算人は、その就職の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもつて、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二月を下ることができない。

2 前項の公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければならない。ただし、清算人は、判明している債権者を除斥することができない。

3 清算人は、判明している債権者には、各別にその申出の催告をしなければならない。

4 第一項の公告は、官報に掲載してする。」

 3回の公告をしますので、行数が増加し、費用は10万円~12万円程度になります。

3.まとめ

官報とは、政府が発行する機関誌のことです。

また、解散する場合、会社は債権者に対して『2か月以上の期間内にその債権を申し出るべき旨』を官報に公告しなければならないとあります。

官報公告をしなかったとしても、『清算結了登記』は申請できるが、官報公告を欠いた清算は、法律上有効な清算手続きとは言えません。

 官報公告費用は、掲載する行数により異なりますが、大体3~4万円の間です。

 会社・法人を解散清算する場合には、必ず、解散後に官報公告をしてください。

 アイリスでは、会社・法人解散の手続きについて、受け付けております。無料相談を受けたのちに、見積もりを出しております。相談だけであれば無料で対応しております。お気軽にご相談ください。

最新のブログ記事

2024年1月10日より、東京都と福岡県の公証役場において、定款作成ツール(日本公証人連合会ホームページ掲載)を使用して作成された定款に対し、48時間以内に定款認証手続き(いわゆる「48時間処理」)を完了させる新たな運用が始まりました。さらに、2024年9月20日からは、この運用が神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府の公証役場にも拡大される予定です。この措置は法人設立手続きの迅速化を目指したものであり、企業家や法人設立を目指す個人にとって利便性が向上します。加えて、2024年6月21日に閣議決定された新しい運用では、公証役場と法務局が連携して、48時間処理された定款を基に、法人設立手続き全体を72時間以内に完了させる「72時間処理」が導入されます。この運用により、法人設立までの時間...

会社・法人の役員の任期がある場合、みなし解散の制度の適用を受ける場合があります。みなし解散とは、一定の要件を充たした場合に、法務局からの通知書が届き、通知から2ケ月以内に、法務局に対し「事業を廃止していない旨の届出」を行うことなく期間が経過してしまった場合に、登記官が職権で解散の登記をする手続きを言います。勿論、解散の効果は同じなので、その影響は様々な部分に出てきます。それでは解説していきます。

ルシアンホールディングスのM&Aに絡む詐欺事件の詳細が少しずつ報道されるようになってきましたが、現在この事件の検索で上位表示されている東洋経済オンラインの記事で、関わったとされていたM&A総合研究所が反論文を令和6年7月11日に出されています。現状、どのような事態になっているのかは、まだ表面化しておりませんが、今後の動向が気になるポイントです。

先日、令和6年5月3日の東京新聞に「ルシアンホールディングズの詐欺事件」にM&A仲介会社が深く関与していたとして、詳しく取り上げられていました。ルシアン側が買主となり、業績の悪い中小企業の買収をにおわせ、「企業再生するのが得意」と言いながら、企業のキャッシュを根こそぎ持っていきました。なぜ、このような事件が起こってしまったのか、現状のM&A仲介の背景や問題点について解説したいと思います。

<