公正証書遺言について
以前、株式会社設立の定款認証で、お世話になった公証役場ですが、公正証書遺言は公証役場でつくる遺言となります。当然費用はかかりますが、遺言者本人で書いた「自筆証書遺言」よりもお勧めなポイントがあります。最近、遺言書の問い合わせが増えてきましたので 話してまいります。
①自筆証書遺言をお勧めしない理由として
- 書き方を間違えて「無効」になるケースが散見される
- 内容が不明確で「相続手続きに支障が出る」
- 「紛失」する可能性がある※1
- 相続開始後、「家庭裁判所の検認が必要となる」※1
※1 この2つにつきましては、法務局による「自筆証書遺言保管制度」を利用することで防止・不要とすることができます。しかし、内容の確認まではしないので、やはり公正証書遺言の方が良いと思います。
➁公正証書遺言であれば
- 公証人が関与するので形式面で無効になる可能性はまずない
- 内容が不明瞭で相続手続きに支障が出る可能性も低い
(遺産に不動産を含む場合には、司法書士にサポートを依頼した方が確実性が増します。不動産の記載の不備により相続手続きに支障をきたす恐れがあるため)
- 公証役場に原本が保管されるので、紛失する心配がありません
- 相続開始後に家庭裁判所の検認は不要となります
③民法上の規定
「民法第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 「証人二人以上の立会い」があること。
二 遺言者が「遺言の趣旨を公証人に口授(くじゅ)すること」
三 「公証人が、遺言の口述を筆記」し、これを遺言者及び証人に「読み聞かせ」、又は閲覧させること。
四 「遺言者及び証人が」、筆記の正確なことを承認した後、各自これに「署名し、印を押す」こと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 「公証人が」、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに「署名し、印を押す」こと。」
④公正証書遺言作成の流れ
- 公証役場で相談(士業等にサポートを依頼する場合は士業等に相談)
- 必要書類を集める※2
- 予約の上、公証役場委に実印を持っていく(証人2人必要)
※2 この場合の必要書類について
- 遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
- 受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者)の住民票
- 固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書(不動産の漏れを防ぐことがポイント)
- 不動産の登記簿謄本
- 証人の確認資料(住所、職業、氏名、生年月日が確認できるもの)
- 遺言執行者の特定資料(相続人又は受遺者以外の者が遺言執行者となる場合、その方の住所、職業、氏名、生年月日が確認できるもの)
(日本公証人連合会HPより引用)
- 遺言者の印鑑証明書(3か月以内のもの)が必要です。
金融資産関係の必要書類
- 通帳のコピー(金融機関名、支店名、口座番号で特定する場合)
- 株、国債、投資信託などの資料(定期提起に証券会社から送られてくる資料等)
- 保険関係の資料(受取人が指定ある死亡保険は遺言書に記載する必要はないが、受取人が死亡していた場合に受取人を遺言書で変更することもできるケースがあります)
※相続開始後、登記が確実にできる遺言書の文言にすることが重要です。
➄証人になれない方
「民法第974条 次に掲げる者は、遺言の承認または立会人となることができない。
一 未成年者
二 「推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族」
三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
士業等に依頼している場合は士業等が承認になるケースがあります。
※公証役場で承認を手配してもらうこともできます。
⑥公証役場で当日行うこと
- 遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述(証人以外は同席できない)
- 公証人が遺言書の原稿を読み聞かせ
- 遺言者と証人が署名押印(遺言者は実印)
- 公証人が署名押印
- 公証人手数料を支払って、公正証書遺言の正本・謄本をもらう
※本人保管は謄本となります。
遺言の効力が発生した場合、金融機関等が遺言執行者に対して「正本」を求めるケースがあるので、しかるべき時に相続人又は遺言執行者の方に「正本」を渡します。
⑦公証人の手数料
目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
ここで注意したいのは、遺産の総額に対して上記手数料が適用されるのではない点です。
例えば、配偶者に2,000万円と長男に1,000万円の財産を遺贈(相続)する場合、
- 配偶者3,000万円 → 手数料2万3千円
- 長男 1,000万円 → 手数料1万7千円
※手数料は、合計額の4万円となります。
上記の表とは別に
- 全体の財産が1億円以下の時は、「遺言加算」として、1万1000円
- 4枚目(横書きの場合)から1枚250円加算
- 正本、謄本も1枚につき250円
- 祭祀主宰者の指定 1万1000円加算
- 遺言の取消 1万1000円加算
- 病床執務手数料(公証人が出張する場合) 手数料に50%加算 +日当+交通費等実費
以上となります。
当事務所の費用といたしまして、
- 遺言書作成(公正証書遺言)サポート 65,000円~(税別)
- 証人1人につき7,500円(税別)
- 戸籍等の収集につき、実費+5,000円(税別)
- 登記簿謄本 実費
となっております。