内縁の妻は相続で何ももらえないのか?
昨今、事実婚についてのニュースをよく目にしますが、何も対処していない場合、パートナーが亡くなったとき、その財産はどうなるのでしょうか。
目次
1.内縁の妻の法律上の立場
2.内縁の妻と法律上の妻の違い
3.内縁の妻でも相続財産を取得できる場合
4.相続財産の不動産の帰属先
5.まとめ
1.内縁の妻の法律上の立場
内縁の妻とは、婚姻関係にあるわけではないが、事実上の夫婦関係にある女性のことを指します。一部の国や地域では、法的に内縁関係というステータスが認められている場合がありますが、日本の場合、内縁関係には法的なステータスはありません。
日本の場合、内縁の妻は、法律上の配偶者と同じ権利を持っていません。例えば、相続権や扶養義務、財産分与など、配偶者に与えられる法的な権利は、内縁の妻には認められていません。また、内縁の妻は、夫の姓を名乗ることもできません。
つまり、内縁の妻に相続の権利はありません。
2.内縁の妻と法律上の妻の違い
3.内縁の妻でも相続財産を取得できる場合
①遺言書による遺贈
亡くなったパートナーが、生前に内縁の妻に財産を移送ずる旨の遺言書を作成しておくことで、相続が発生した場合に、その財産を内縁の妻が取得することができます。
➁民法958条の3の場合
相続人のいることが明らかでないときは、その相続財産は法人とされ、相続財産法人が成立します。(民法951条)
この場合、相続財産中の不動産については、移転登記の方法ではなく、登記名義人表示変更(氏名変更)登記の方法により相続財産法人名義にします。(昭10.1.14民甲39号)
その後、民法958条の3の規定により、特別縁故者(内縁の妻)からの請求により、相続債権者への清算後に残余財産がある場合には、家庭裁判所は残余財産の特別縁故者(内縁の妻)への分与の審判をすることができます。(民法958条の3、家事手続法39条)
つまり、相続人が不存在であれば、その相続財産は法人化され、相続財産管理人選任後に相続債権者等に清算後に内縁の妻に財産を分与するかどうかの審判をすることになるということです。手間・時間・費用共に掛かる内容です。
該当する方は、遺言書の検討をお勧めいたします。
4.相続財産の不動産の帰属先
先にも書いた通り、亡くなった方に相続人がいなかった場合、相続財産法人として取り扱われます。最終的に国庫に帰属することとなるのですが、その間に特別縁故者や共有者への財産分与といった形になる場合があります。その優先順位はどのようになるのでしょうか。
①特別縁故者への財産分請求が認められ審判が確定した場合:特別縁故者(内縁の妻)へ
➁特別縁故者への財産分与請求が認められなかった場合:㋐共有の場合は共有者へ
㋑単有の場合は国庫に帰属
5.まとめ
内縁の妻が亡くなった内縁の夫の財産を取得するためには、
①内縁の夫が生前に、内縁の妻への財産の遺贈をする旨の遺言書を作成しておいた時
➁内縁の夫に相続人がおらず、不動産が共有所有でない場合であって、特別縁故者への財産分与の請求をした後、家庭裁判所の審判で認められた時
の2パターンが考えられます。
特に➁は、時間・費用共に必要なうえ、最終的に家庭裁判所の審判によることから、特別縁故者の申し立てが却下される場合もあります。
残されたパートナーのためにも、遺言書で「想い」を残すようにしておいた方がいいと思います。