名変。されど名変。「所有権登記名義人住所変更の申請と登記原因証明情報」

2022年11月25日

氏名・住所の変更・更正登記なのですが、この登記と同時に他の登記(所有権移転、抵当権設定登記等)をする場合、司法書士としては、特に細心の注意を払います。なぜなら、この氏名・住所の変更・更正登記で、法務局から補正なら、補正をすることにより何とか受付順位をキープしたまま登記が実行されるのですが、取下げとなると他の登記もすべてもう一度申請しなおすことになります。特に、売買の場合、取下げ、再申請の間に、別の登記により本来の権利を害される可能性も出てきます。現状、特例方式が一般的な申請方法になりますが、この時の登記原因証明情報の取り扱いについて、他の所有権移転・抵当権設定の登記と異なる点がありますので、お話をしたいと思います。

添付情報の提供方法に関する特例(不動産登記令附則5条)により不動産登記のオンライン申請をする際は、申請情報と併せて登記原因証明情報のPDFファイル(当該書面に記載された情報を記録した電磁的記録)を提供しなければならないとされていますが、登記名義人住所変更の登記をするときには住民票の写し等のPDFファイルを添付する必要はありません。

つまり、登記申請時に登記原因証明情報のPDFファイルは添付不要であり、申請後に登記原因証明情報としての住民票の写し等を提出すればよいということになります。特例方式による場合は、申請情報と併せて当該書面に記載された情報を記録した電磁的記録を提供しなければならないとされていますが、不動産登記法64条の登記(登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記)のみ除外されていますので、同様の扱いとなっています。

所有権登記名義人住所変更で、申請の際に登記原因証明情報(住民票等)のPDFファイルを提供する必要がない根拠は次のとおりです。

書面を登記所に提出する方法により添付情報を提供(特例方式、令附則5条1項)するときは、申請情報と併せて当該書面に記載された情報を記録した電磁的記録を提供しなければならない(令附則5条4項)が、この電磁的記録の提供は法64条の登記(登記名義人氏名変更等)以外の登記についてするとされています(規則附則第22条)。

「不動産登記令附則第5条(添付情報の提供方法に関する特例)

 電子情報処理組織を使用する方法により登記の申請をする場合において、添付情報(登記識別情報を除く。以下同じ。)が書面に記載されているときは、第10条及び第12条第2項の規定にかかわらず、当分の間、当該書面を登記所に提出する方法により添付情報を提供することができる。

2 前項の規定により添付情報を提供する場合には、その旨をも法第18条の申請情報の内容とする。

3 第17条及び第19条の規定は第1項の規定により添付情報を提供する場合について、第18条の規定は同項の規定により委任による代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を提供する場合について、それぞれ準用する。

4 第1項の規定により書面を提出する方法により当該登記原因を証する情報を提供するときは、法務省令で定めるところにより、申請情報と併せて当該書面に記載された情報を記録した電磁的記録を提供しなければならない。この場合においては、第12条第2項の規定は、適用しない。」

「不動産登記規則附則第22条

 令附則第5条第4項の電磁的記録は、法務大臣の定めるところにより送信して提供しなければならない。

2 令附則第5条第4項の電磁的記録の提供は、法第64条の登記以外の登記につき、同項の書面に記載された情報のうち登記原因の内容を明らかにする部分についてすれば足りる。

3 令附則第5条第4項の規定により同項の書面に記載された情報を記録する場合には、法務大臣の定めるところにより当該書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)で読み取る方法によらなければならない。

不動産登記法第64条(登記名義人の氏名等の変更の登記又は更正の登記等)

 登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる。

2 抵当証券が発行されている場合における債務者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、債務者が単独で申請することができる。」

結論として、氏名・住所変更・更正登記の登記原因照明情報である「住民票の写し・戸籍の附票」については、PDF化して申請データに添付する必要はないということになります。

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