名義株のリスクについて

2023年03月16日

目次

1.名義株とは

2.名義株は誰のもの?

3.名義株の何が問題なのか

4.名義株が生じる原因

5.名義株のリスク

6.名義株の整理・解消方法

7.まとめ


1.名義株とは

 名義株とは、会社に実際に資金を払い込んだ出資者と、会社の株主名簿に掲載されている株主が異なるケースをいいます。

 法律上、すべての会社は株主名簿を作成することが義務付けられており、会社は株主名簿により株主が誰かを確認することが原則です。

 ところが、何らかの事情で、会社に実際に資金を払い込んだ出資者が株主名簿に別人の名義を記載したまま放置している場合に名義株が発生します。

2.名義株は誰のもの?

 「最高裁判所昭和42年11月17日判決

 他人の承諾を得てその名義を用い株式を引受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となる」

  つまり、実際の所有者が実際の株主という判断になっています。

3.名義株の何が問題なのか

 名義株の問題点として、以下のようなことが挙げられます。

 ①匿名性が高く、企業のコントロールが困難であること。

  名義株主は、その名前のみが株式の所有者名簿に記載されており、実際には誰がその株式を所有しているかが分かりません。これにより、企業側が株主構成を把握し、経営計画や株主総会の決議に影響を与えることが困難になる場合があります。

 ➁株主構成が分散し、株主間のコミュニケーションが困難であること。

  名義株主制度により、多数の株主が分散して保有することが容易になります。しかし、株主同士が意見を交換し、企業に対して要望を出すなどの行動を起こすためには、株主間のコミュニケーションが必要です。名義株主制度では、株主間のコミュニケーションが困難であるため、株主が企業に対して十分な影響力を行使することが難しくなる場合があります。

  ③証券取引の透明性が低く、株式市場の信頼性に影響を与えること。

   名義株主制度により、証券取引の透明性が低下する場合があります。例えば、名義株主が株式を売却した場合、実際には誰が買い手となったのかが分かりません。これにより、市場の取引情報が不透明になり、市場の信頼性に影響を与える可能性があります。

 以上のような問題点があるため、一部の国では、名義株主制度を改革し、株主が実際に保有している株式数や株主構成が公開される制度を導入するなど、透明性を高める取り組みが行われています。

「犯罪収益移転防止法」などの法令による規制等も徹底されつつあり、透明性のない名義株があることは好ましくないことは言うまでもありません。

4.名義株が生じる原因

 法律上は、会社に実際に資金を払い込んだ出資者が真の株主であり、実質株主と呼ばれます。

 株主名簿に実質株主の氏名が記載されず、別人の氏名(名義株主の氏名)が記載される原因としては以下のものがあります。

 ①発起人の頭数集めのために名義株が発生するケース

  現在の会社法では、発起人は1名でも株式会社を設立することが可能ですが、平成2年以前では最低7人の発起人を集めることが必要でした。

 ➁相続税対策として名義株が発生するケース

  大手の会社で相続税対策として、株式を子供の名義にしている場合があります。少し前にニュースになった事件で、この名義株のせいで数十億円の追徴課税が科された事例などもありました。

 ③破産歴や処分歴がある人が会社を経営するケース

  自己の名前で株式を取得できないために、他人の名義を使って取得しているケースです。

5.名義株のリスク

 株式会社は「経営」と「所有」を分離できます。大手は株主総会で選任された取締役が「経営」をし、株主は株式を持つことでその会社を「所有」しています。

 中小零細企業の株式会社は、この「所有」と「経営」がまとまっていることが多いです。

 事業承継をする際も、株主が特定できない名義株の存在が、経営の移転ができても所有の移転ができないという結果になってしまいます。結果、きれいな形での事業承継ができなくなるリスクがあります。

 また、M&AやIPOといった、経営と所有を第三者に完全に引き継ぐ際にも、名義株の存在で、契約自体白紙撤回されるリスクもあります。

 先に記載したように、相続の際には、相続財産とされ追徴課税を課される結果にもなりかねません。

6.名義株の整理・解消方法

 ①名義株主の協力が得られるとき

  名義株主の協力により、株主名簿の書き換えをするをすることが可能です。

  この時、「確認書」をとっておきます。本来、自分の株が別名義になっていたものを自分の名義に書き換えるだけなのですが、税務署から贈与とみなされて贈与税を課税される恐れがあります。そのため、株式の取得代金ないし払込金の出捐者」、「名義貸与者と名義借用者との関係」、「名義借りの理由」を含む確認書を作成しておくことで、贈与されたものではないことを明確にすることができます。

 ➁名義株主の協力が得られないときは強制買取や訴訟を検討

  株式併合を行うことにより、名義株主を1株未満の株主にしてしまったうえで、名義株主の1株未満の株式を会社が強制的に買い取ることによって、名義株の解消が可能になります。

  また、株主名簿は原則として、名義株主の同意がなければ書換ができませんが、例外として、訴訟を起こして株主名簿の書き換えを命じる判決を得た場合は、名義株主の同意がなくても書換が可能です(会社法施行規則22条1項1号・2号)。

  どちらも、手続きに費用や期間を要するため、よく検討して方法を選択してください。

7.まとめ

 このように、名義株を残していた場合、様々なリスクがあります。企業法務に精通した専門家に相談し、名義株の解消を早期にしておくことが望ましいと考えます。

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