(商業)取締役・代表取締役選任の際の印鑑証明書について
取締役・代表取締役の就任に際して提出が求められる印鑑証明書について、取締役設置会社と取締役会非設置会社に分けて解説いたします。
就任承諾書や辞任届を株主総会議事録の記載を援用する方法があります。どのような要件がそろったときに、議事録の援用ができるのか解説していきます。
目次
1.就任承諾書の議事録の援用
2.辞任届の議事録援用
3.まとめ
1.就任承諾書の議事録の援用
役員変更登記の際、商業登記法54条より「就任を承諾したことを証する書面」を添付しなければなりません。また同様の証明力がある書面で、就任者本人が選任される株主総会等の議事録上で、当該総会等の場に置いて、その就任の意思表示を示した表現があれば、議事録を就任承諾書として援用することが認められています。
援用するためには、総会等の場において就任の意思表示をしたことが本質的な要素として重要ですので、株主総会の議事録の出席役員欄に必ず記載するように留意する必要があります。
実際の議事録の記載は以下の通りです。今回の事例は、取締役会日設置の株式会社となります。
「 出席取締役(3名)
X
B
D 」
「 第〇号議案 取締役選任の件
議長は、取締役Aの死亡及び取締役Bの辞任及び取締役Cの死亡により、後任の取締役1名を選任する必要がある旨を述べ、その選任方法を議場に諮ったところ、満場一致をもって議長の指名に一任することとなり、議長は次の者を指名し、その可否を再度議場に諮ったところ、満場一致によりこれを選任することに可決確定した。
なお、被選任者は、席上その就任を承諾した。
香川県高松市○〇町100番地10
取締役 D 」
取締役の就任登記には、添付書類として①取締役会設置会社の場合、本人確認証明書、➁取締役会非設置会社の場合、印鑑証明書が必要となります。本人確認証明書には「住民票の写し」「免許証、マイナンバーのコピー」を要求されます。そこに記載されている住所と氏名が同じである必要があるため、就任する取締役の住所の記載が株主総会議事録にない場合、援用することができません。印鑑証明書にも「住所」が記載されていますので、株主総会議事録に就任する取締役の住所の記載がない場合、援用はできません。
2.辞任届の議事録援用
辞任の場合では同等の取扱は認められているでしょうか?
「株主総会議事録中、役員が辞任した旨の記載がある場合は、辞任届の添付は要しない(登記研究81号)」
「株主総会議事録に、席上取締役は辞任を申し出た旨の記載があるときは、当該取締役の辞任による登記申請書には、辞任届を添付を要しない(登記研究83号)」
少し古いですがこのような質疑応答があります。
また、記載援用について
「株主総会等の席上、辞任意思を本人が表明した場合に限って、議事録の記載援用が許される。(昭36.10.12民四197号)」
つまり、上記ケース以外で、退任を証する書面として「辞任届」を添付しなければならないということになります。
就任も辞任も要件は総会出席の事実と、その総会内で対象役員が就任・辞任の意思表示をすることになるのですが、辞任の場合は少し慎重になってしまいます。必ず、総会内の事実確認をとるようにしています。なぜなら、株主総会議事録は、株主総会という株式会社における最高意思決定機関でありその議事における内容を記録したもので、虚偽の記載があってはなりません。虚偽の記載を行った場合は、会社法974条(虚偽届出等の罪)により罰せられることになります。この罰則は「三十万円以下の罰金に処する。」とありますので、刑事罰になります。
ですので、仮に株主総会で本人出席とその意思表示があっても、「就任承諾書」「辞任届」は頂くようにしております。
3.まとめ
司法書士は申請代理人として、登記ができたらいいというのではなく、その事実関係及びプロセスの確認は怠ってはいけません。相続により代表者が変わる場合にも、何度か残った役員の方たちとヒアリングを重ねることで、現状を確認しその先の登記に繋げるように心がけております。
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