家族信託の手続き
認知症対策としての「家族信託」。いったいどのような場面で使えるのでしょうか。「将来認知症になったときの対策として、息子に賃貸アパートの管理をしてもらいたい。」などの場合、家族信託がお勧めです。それでは、家族信託の手続きは、どのように行うのでしょうか。通常、1か月から3か月程度必要とします。それでは、見ていきましょう。
①家族信託の設計(個々の事例に対するプラニング)
契約自体は、「委託者(父親)」と「受託者(管理を任せる息子様)」になります。他の家族を交えなくても「違法」ではありません。では、違法ではないから、このまま契約してしまってよいのでしょうか?
結論から言いますと「ダメ」です。
契約締結後、認知症になった父親を心配に思い、他の家族の方が父親の基を訪れたときに、管理を任された息子様が財産管理をしているのを見てどのように思うのでしょうか?
- 「父親をだまして財産を横取りしようとしている」
- 「どうして一言、他の家族にも連絡しなかったのか。」
と、あらぬ疑いをかけられかねません。当然そうなった場合には、その後父親が亡くなったときの相続ではもめるでしょう。
このようなトラブルを回避する意味でも、他の家族様を交えた家族信託の設計は、非常に重要になってきます。必要な場合には、同意書の作成も有効かもしれません。
それでは、家族信託の設計で「何を」決めるのでしょうか。
- 家族信託を実施する目的
- 今後の財産管理をどのように家族に任せていくのか
- どの財産を信託するのか(対象外の財産は通常の相続財産となります)
- 誰を委託者・受託者とするのか
- 信託代理人、信託管理人をオプションで決める
これらを家族全員立会いの下で、打ち合わせをしていきます。ご本人様と法定相続人全員とで信託のスキームを決定していきます。
いうなれば、個人個人の体形に合わせて作るオーダーメイドの服のようなものです。ご依頼者のそれぞれの事情に合わせる必要性があるので、必ず、この過程を実施いたします。
➁公正証書の作成
委託者・受託者が公証役場委に行き、公証人の目の入った契約書に押印する必要があります。要は、専門家のチェックの入った契約書を作ることが目的です。それではなぜ、公証人チェックの契約書が必要なのでしょうか?
③信託開始の手続き
- 金融資産の場合
金融機関と調整して「委託者(父親)受託者(息子様)信託口」名義の口座の開設をいたします。このような信託専用の「信託口口座」を作り、その口座で信託財産である金融資産の管理を行っていきます。
※口座開設できるのは、「受託者」の住居地・勤務先付近の金融機関の支店に限られます。
※受託者の個人の口座での管理はできません。
※基本的に、メガバンクは対応してくれません。一部地銀や信用金庫では、対応していただけます。
※この時に先ほどの公正証書信託契約書が必要になってきます。信託契約の内容によっては、単純な口座開設だけではダメなケースがありますので、専門家への相談をお勧めいたします。
- 不動産の場合
名義変更手続きを行い「委託者(父親)」「受託者(息子様)」「受益者(父親)」で、登記簿の変更が必要になります。(通常、委託者=受益者となることが多い)
- 信託対象となる、その他の財産について
すべての名義変更が必要となります。例えば、保険については、父所有の建物の火災保険や地震保険などです。また、引き落とし口座や振込口座も名義変更が必要です。他にも、父親名義の株主名簿の変更の手続きも信託財産に株式が含まれる場合には、名義変更手続きが必要です。
このような、手続きを経て「家族信託」の手続きは終了いたします。
ご覧の通り、信託の設計の部分でご家族からの要望なんかをヒアリングして、個々の事例に合わせたカスタマイズが必要になります。専門家を通さずネットに落ちている契約書のひな型では、やはり対応は難しいと思いますので、専門家への相談をお勧めいたします。
(信託の終了)
それでは、家族信託が終了する場面は、どのようなものがあるのかを考えていきましょう。
こちらも、契約書に定めておきます。
「第〇条(信託の終了事由)」・「第〇条(清算事務)」(通常受託者)・「第〇条(終了に伴う残余財産の帰属)」・「第〇条(残余財産の引き渡しの方法)」を項目して盛り込みます。こうすることで、契約書の効力発生から、当該信託終了の手続きまで、本契約書で行うことができます。
詳しくは司法書士まで。費用は、こちらから確認してください。