役員変更登記(代表を役員による互選で定める場合の注意点)

2024年01月16日

取締役会や理事会を設置しない会社法人について、代表役員の選任方法はいくつかあります。しかし、株式会社・一般社団財団の役員(取締役や理事)の代表を決める場合、定款に記載されている内容によっては、「制約」が出てしまい、代表者を定める場合に手続きが複雑になる場合があります。今回は、どのような点に注意すべきなのかについて話していきたいと思います。今回は、株式会社に絞ってお話します。

目次

1.取締役会非設置の代表取締役の選任方法

2.定款記載内容による手続きのポイント

 2-1.定款の取締役員数確認

 2-2.代表取締役選任を互選でする場合の注意点

 2-3.上記の場合の添付書類

3.まとめ


1.取締役会非設置の代表取締役の選任方法

 取締役会非設置の代表取締役の選任方法としては、以下の3つが考えられます。

 ①株主総会で選任する。

 ➁定款に代表取締役を記載する。

 ③定款の定めによる互選による。

※何も定めていない場合は、「全員代表」状態になりますので、取締役全員を代表取締役として登記申請することになります。

 ①から③の手続きをするには、定款に代表取締役の選任方法を記載しておかなければなりません。

2.定款記載内容による手続きのポイント

 ここでは、定款に取締役の互選による代表取締役の選任についての記載があるものとして、考えていきます。

 2-1.定款の取締役員数確認

  定款に、取締役の員数の記載があります。そこに2人以上と記載されている場合、2人の取締役(A・B)でそのうちの1人が代表取締役(B)だったとすると、Bが死亡または取締役を辞任した場合、この株式会社には取締役はAのみとなってしまいます。ですので、まずは、取締役の員数を整合させるために、他に1名取締役に選任するか、定款の取締役員数の変更(「取締役の員数は、1名以上とする。」)と変更しなければなりません。どちらがコストや時間がかからないかと言いますと、定款の変更です。

 2-2.代表取締役選任を互選でする場合の注意点

  定款の互選の規定について、その表現の仕方により、手続きが変わってきますので、注意が必要です。

 (事例1)取締役A・B、代表取締役B B死亡

      定款記載「取締役を2名以上置とする。

取締役の互選により代表取締役を1名置く。」

 この場合には、取締役Aの代表権は当然には発生しません。この場合には、株主総会にて、取締役を選任後互選をするか、定款を変更して互選の定めを廃止する等の対応が必要です。

 (事例2)取締役A・B、代表取締役B B死亡

      定款記載「取締役を1名以上置とする。

取締役が2名以上いるときは、取締役の互選により代表取締役を1名置く。

 事例1との違いは、「取締役が2名以上いるとき」に互選をするという表現になります。先例により読み替えが起こるみたいで、「取締役が2名の場合には代表取締役を互選により定めるが、取締役が1名の場合にはその者が当然に代表取締役になる」趣旨と解されています。そのため、申請では代表取締役を選任するのではなく、「代表権付与」という形になります。

 2-3.上記の場合の添付書類

  事例1の添付書類は

   ①役員変更(取締役の死亡退任と選任)の株主総会議事録

   ➁株主リスト

   ③互選書

   ④就任承諾書

   ➄印鑑証明書

   ⑥定款

  事例2の添付書類

   ①役員変更(取締役の死亡退任)の株主総会議事録

   ➁株主リスト

   ③定款

事例2の方が、添付書類がシンプルになります。

3.まとめ

 このように、定款に記載されている内容により、代表取締役を定款の定めによる互選により定める場合に、大きな差が出てきます。会社法人の定款をもう一度ご確認いただき、専門家に相談することをお勧めいたします。

 アイリスでは、会社法人登記のご相談も無料で受け付けておりますので、是非ご活用ください。

最新のブログ記事

「認定特定創業支援等事業」(にんていとくていそうぎょうしえんとうじぎょう)は、日本政府や自治体が提供する創業支援の一環として、中小企業や新規事業者の立ち上げをサポートするための制度です。この制度の一つの大きな利点は、会社設立時の登録免許税が半額になる点です。以下、その概要について説明します。

2026年度末をもって、長年企業間の取引に用いられてきた手形・小切手の利用が廃止されることが決定しました。この変革は、デジタル化の進展と効率化を目指す金融業界の動きの一環として行われます。本記事では、全国銀行協会の情報を基に、手形・小切手の廃止の背景や影響、今後の課題について詳しく解説します。

日本に住所を持たない外国人が株式会社を設立し、その後「経営・管理」の在留資格を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。また、平成27年までは、日本国内に居住しない代表取締役についての制限があり、外国人を代表取締役とする株式会社は作れませんでしたが、今では代表取締役全員が外国に居住していても設立可能です。それでは、在留資格の要件などについて解説します。

<