株式会社の設立について(手続概要)

2023年07月14日

アイリスが開業した当初、一番初めに受任したのが株式会社の設立でした。その後、時折「NPO法人設立」や「一般社団法人の設立」を手掛けております。株式会社以外の法人設立が多かったところ、今回、再び株式会社の設立について受任をしました。株式会社設立の必要書類や費用などのポイントなどをご紹介いたします。

目次

1.はじめに

2.公証人のよる定款認証手続

3.株式会社の設立登記に向けての書類の準備

4.株式会社の設立登記

5.まとめ


1.はじめに

 今回の株式会社設立は、取締役会非設置会社で取締役1名のシンプルな株式会社でした。

 初回の面談で、定款の作成に必要な情報とヒアリングと、出資額及び会社の代表印の作成のお願いをいたしました。なぜ、定款の情報をはじめにヒアリングするのかというと、手続きの流れが「公証人による定款の認証」→「設立登記」となっており、定款の認証日以後の設立登記となるからです。それでは、定款に記載すべき「絶対的記載事項」を見ていきます。

 ①目的 ➁商号 ③本店所在地 ④設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 ➄発起人の名称又は氏名及び住所

となっています。

 ㋐目的について

  目的の文言について、実績があるもので構成したほうが、登記の際に問題になりませんので、必ず事前にチェック致します。また、できるだけ実態が見えるものであり具体的なものがいいです。今後のことも想定して、異なる業種の目的をてんこ盛りに記載する方もいらっしゃいますが、登記自体はできるかもしれませんが、その後、金融機関で融資を受ける際に、「実態がよくわからない」との理由で断られてしまうケースもあるそうですので、注意が必要です。

 ㋑商号について

  同一住所・同一商号はNGです。しかし、紛らわしい商号もいいとは言えませんので、いくつか候補を出していただき、こちらでチェックして、大丈夫な候補を絞り、ご依頼者の方に決めていただいております。

 ㋒出資者が法人の場合の注意点

  発起人の中に法人がいた場合、その目的と今回設立する会社の目的が、大きくかけ離れている場合には、公証役場からNGが出ます。法人の場合、実質的支配者として法人名を載せる場合には、その登記簿や代表者の本人確認等、追加の資料を要求されます。シンプルな株式会社の場合には、代表者個人の出資が妥当と判断しアドバイスいたしました。

 

2.公証人のよる定款認証手続

 紙の定款での認証手続きには、定款に貼る印紙5万円分が余計にかかります。ですので、今回の定款認証は、電子認証で行うことといたしました。

 出資額(資本金の額)に応じて、認証の費用が異なります。資本金の額等が100万円未満の場合「3万円」に、資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合「4万円」に、その他の場合「5万円」となっております。

 事前に公証役場に連絡をして、メールで認証をお願いする定款を送りチェックをしていただきます。送付すべき書類は以下の通りです。

 ①作成した定款

 ➁実質的支配者となるべき者の申告書(令和5年6月1日より書式が変わっております。)

 ③発起人の本人確認資料(免許証のコピー等)

 ④発起人の印鑑証明書コピー

 問題なければ、予約を入れて、その当日に必要書類等(CD-ROM含む)を持参して定款の認証作業を行っていただきます。1時間もかからないくらいで終わりますので、その間に窓口で「紙の認証済み定款」を数通取得するために書類を書きます。登記用・各種届出用・保管用で3通取得するようにしております。認証済みの定款は、原則CD-ROMで、電子データとしてしかいただけませんので、紙の認証済み定款が必要な場合には、手数料を支払って取得する必要があります。また、これを忘れた場合、紙の認証済み定款の発行はしていただけませんので、定款認証時に忘れずに取得してください。

3.株式会社の設立登記に向けての書類の準備

 設立登記に必要な書類は以下の通りです。日付についても注意が必要です。

 ⓪認証済み定款

 ①発起人全員の同意書(発起人の実印)

 ➁発起人の過半数の一致を証する書面(発起人の実印)

 ③払込を証する書面(通帳表紙、通帳裏表紙、実際に出資した内容を含むページのコピーを証明書に会社代表者による代表者の押印)※通帳は発起人名義のものが良い。

 ※令和3年1月29日民商第10号通達が発出され、現在ではこれらの押印が不要となりました。 

 ④資本金の額の計上に関する証明書(代表印で押印。ただし、現金のみの出資の場合には省略できます。)

 ➄就任承諾書+印鑑証明書

 ⑥委任状(代表者による代表印)

以上となります。

4.株式会社の設立登記

 書類がそろえば、あとは申請するのみです。個人で申請する方は、申請書を作成し、必要書類を添付し、登録免許税15万円(資本金の額の1000分の7で計算しますが、最低額が15万円となります。2145万円より大きいと15万円を超えた金額となります。)

 ただし、資本金をはじめから1000万円以上とすると消費税がかかってきますので、そちらも税理士の方と相談しながら決めて頂い報がいいと思います。また、事業年度末日から定時株主総会開催の時期を3か月まで設定できるのですが、2か月が多いのは、法人税の関係で申請期間が2か月になっているとのことです。こちらも、税理士の方と相談して決めていただいた方がいいと思います。

5.まとめ

 会社の設立についてお話をしてきました。設立日にこだわる方もいらっしゃいますが、設立日は、登記を申請した日になります。ですので、そこから逆算し、定款の認証をゆとりを持って実施しておけば、その後の希望日での設立登記が可能です。専門家に相談される場合には、事前にスケジュールについてよく話し合っておいてください。

 以前、新人研修で先輩司法書士が新人の頃に合った笑い話をしてくれました。とある方が会社の設立を依頼してきたので出向くと、「先生で2人目です。」と言ったそうです。前の人はどうしたのですかと尋ねると、「前の若い先生はだめだ。」とだけ言われたそうですが、その後手続きが済み、もう一度聞いてみると、「いやあね。前の先生、「株式会社の作り方」という本を持参して、私に説明するんですよ。」とのこと。その先輩司法書士の方が、「間違っても「株式会社の作り方」の本を持参して、依頼者に説明しないように。」とアドバイスがありました。もちろん私は、手続きは頭に入っているので、そんなことしませんが、にわかに信じがたい話でしたので、研修終わりに聞いてみると実話だそうです。

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