権利証(登記済証)・登記識別情報を紛失した場合の対処法

2023年03月22日

自宅を売買したいが、権利証がない!本当に焦りますよね。そんな場合の対象法について、解説いたします。

目次

1.権利証(登記済証)・登記識別情報とは

2.権利証や登記識別情報を紛失等された場合

3.3つの対処法

4.まとめ


1.権利証(登記済証)・登記識別情報とは

 ①権利証(登記済証)

  登記済証は、不動産に関する権利証の一種であり、不動産の所有権を証明する書類です。具体的には、日本において不動産を所有する場合、法務局に登記する必要があります。登記が完了すると、その不動産についての情報が法務局に登録され、その不動産の所有権を証明する「登記済証」が、かつて発行されていました。現在は、登記識別情報に代わっています。

 登記済証には、不動産の所在地や所有者名、登記された権利の種類などが記載されています。また、登記済証は不動産を売却したり、担保として利用する場合に必要となる書類の一つとなります。

 ➁登記識別情報

  登記識別情報とは、日本の法務省が提供する、不動産の所有権に関する情報を検索するための識別情報のことです。権利証と同じく、不動産の取引や担保として利用する場合には必要不可欠な情報となります。また、登記識別情報は、不動産の売買や担保設定をする前に、不動産の所有権の状況や抵当権の有無を確認するために利用されることもあります。

2.権利証や登記識別情報を紛失等された場合

 前にも記載しましたが、これらの書類は、権利を証明するために書類の一つとなり、不動産を売却したり、担保として利用する場合に必要となります。

 では、紛失した場合にはどのようになるのか?

 まず、再発行は絶対にしていただけません。再発行してくれないということは、売買や担保設定できなくなってしまうのでしょうか?

3.3つの対処法

 ①事前通知制度

  法務局から登記申請人に対し直接「登記申請についての意思確認の照会」を行う制度です。

  権利証・登記識別情報を添付せずに登記申請を行うと、数日後、法務局から売主である登記義務者に対して登記申請についての本人の意思を確認するための書面が郵送で通知されます。

  法務局からの通知を受けた登記義務者は、一定期間内に「登記申請の内容について間違いのない旨の申出」を行う必要があります。(本当に贈与をしたかどうかの確認)

  具体的には、法務局から送られてくる事前通知書に「この登記申請の内容は真実です」という回答欄がありますので、署名および実印で捺印をし法務局へ持参または郵送で送り返します。指定の期間までに書類が法務局に到着することで、権利証がなくても不動産の売却手続き(受贈者への名義書換)を行うことが可能になります。

  ちなみに、申出期間は、法務局が通知を発送した日から二週間以内と定められており、この期間内に法務局に登記義務者から申出がなければ、登記申請自体が却下されるか、または登記申請を取下することになりますので、指定の期日までに法務局へ返信が届くよう注意が必要です。

 ➁資格者代理人による本人確認情報の提供

  登記の申請代理人である司法書士(資格者代理人)がご本人様と直接面談し、本人のパスポートや運転免許証等の身分証明書の提示を受けて本人であることを確認して、司法書士がその責任において本人確認をしたことを明らかにした上で、その内容を本人確認情報という書類を作成して、法務局に提供するというものです。

  その本人確認情報が適正であれば、事前通知を省略して登記が実行されます。

  ただし、あくまで「登記を代理して申請する司法書士等」が本人確認をしなければなりませんので,本人確認だけを知り合いの司法書士等に依頼し,登記だけは別の司法書士に依頼するということはできません。

  この司法書士による本人確認をすれば,登記官が確実であると判断した場合、前住所通知等様々な手間が省けるため,権利証を紛失している場合に一番多く使われている方法です。

※前住所通知は、前の所有権移転から3か月以内に再度所有権移転が発生した場合に実施されます。

 ③公証人の認証制度

  公証人の面前で、司法書士に対する登記申請委任状等にご署名・ご捺印いただき、公証人が間違いなく本人であることを確認し、その書類が真正なものであることの認証を受ける手続です。公証人による認証を受けた登記委任状を添付し、法務局に登記申請を行います。

  こちらの手続きは、数千円程度の認証手数料を支払うだけで済みますので、本人確認情報を作成する費用を抑えることができます。

  ただし、公証人による本人確認は,印鑑証明書、ご実印,運転免許証等の身分証及び認証文を付ける委任状を持って、公証役場が空いている時間(平日)に公証役場へ直接行っていただく必要がございます。

4.まとめ

 売買など、取引と登記申請の間の時間をできる限り空けたくない場合には、本人確認手続きが最も適しているといえます。売買のように、対第三者への所有権移転の場合、登記申請までに時間が空いてしまうことにより、元の所有者がさらに別の第三者に売買してしまう恐れや、登記申請できていない間に融資を受けて別の抵当権を設定するいわゆる二重取引をされる可能性があるためです。

 また、親族内での贈与や法人関係者に対する贈与など、登記申請に時間がかかっても問題が生じる可能性が低い場合には、事前通知制度を利用するのが一般的です。

 今回、アイリスで引き受けた贈与については、法人から法人関係者への贈与であったため「事前通知」を選択しました。この事前通知は、原則売主本人への本人限定郵便で送付されるのですが、法人の場合、法人の主たる事務所への送付又は、法人代表者本人の住所への送付ができます。今回の贈与では、すでに法人代表は県外に住まわれており、ほとんど法人の主たる事務所には来ていないとのことでしたので、代表者個人の住所への送付を法務局にお願いいたしました。

 ケースバイケースで利用方法に差が出てきますので、今回、権利証・登記識別情報を紛失した場合の対処法を解説いたしました。

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