相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
生前贈与(親から未成年者への贈与契約)

民法上、未成年者は制限行為能力者という扱いになっております。未成年者へ生前贈与として不動産を贈与契約することは可能なのか?という点が問題になってくると思われます。贈与契約はどのようにすればいいのか、そして、不動産登記の際に未成年者を権利者として名義変更をすることができるのかについてお話をしていきたいと思います。
目次
1.未成年者への贈与契約はできるのか
2.贈与契約書は作成しなければならないのか
3.名義を変更する登記の際に必要な書類
4.まとめ
1.未成年者への贈与契約はできるのか

細かい点にはなるのですが、「贈与」と「贈与契約」は法律上別物です。贈与とは、贈与者が一方的に財産を譲渡するものであり、受贈者の合意、承諾などは不要です。これに対し、贈与契約とは、贈与者が贈与することを約束し、受贈者がこれに合意することによって成立します。贈与契約には、受け取る側にも「意思表示」が必要となります。しかし、民法上未成年者は制限行為能力者なので親権者の同意が必要となります。
未成年者の意思表示については、親権者である法定代理人が同意することで贈与契約も可能になるということです。
2.贈与契約書は作成しなければならないのか

未成年者でも贈与契約はできることは先にもお話をしました。贈与は、贈与者の「あげます」という意思表示に対し、受贈者の「もらいます」という意思表示が合致すれば成立する契約だからです。最低限このことが理解できる年齢であれば、契約自体は成立します。
しかし、親権者の同意を得るか、親権者を代理として契約を結ばなければ後から親権者によって贈与契約が取り消される可能性があります。そのため、契約書を交わす際は、親権者の署名押印も要れた方がいいでしょう。未成年者が署名できるなら署名押印し、それに加えて親権者も署名押印します。
意思表示の合致だけでは、親権者代理人の意思がわかりません。また、生前贈与の場合は、贈与者の死後、相続人間でトラブルが起こることや、税務署から本当に贈与がされたか、もしくは譲渡されたのが本当に贈与によるものかについて指摘を受ける可能性があるので、このようなリスクを回避するためにも、契約書を交わしておくことが大切です。
3.名義を変更する登記の際に必要な書類
さて、贈与契約書まで作成できましたら、次は登記の手続きが必要です。贈与を原因とする所有権移転登記を申請することになります。
通常の贈与による所有権移転登記の添付書類は
①贈与者(譲渡人)に必要な書類
㋐利証書(登記済証又は登記識別情報)
㋑印鑑証明書(有効期限3か月)
㋒固定資産税評価証明書等の評価額がわかる書類
㋓実印
㋔身分証明書(運転免許証・パスポート) 本人確認資料のため
以上が基本的な必要書類です。また住所変更・氏名変更がある方は、その変更登記が事前に必要となるため、住民票・戸籍の附票・戸籍謄本等が必要になります。また、事案によっては上記以外の書類等が必要になる場合があります。
②贈与を受けられる方に必要な書類
㋐住民票
㋑印鑑(認印でも可能です)
㋒身分証明書(運転免許証・パスポート) 本人確認資料のため
未成年者に贈与する場合は、契約は未成年者の親権者だけでなく、未成年者自身が締結
できますが、登記申請においては、親権者が未成年者に代わって申請する事が一般的です。
この場合通常の必要書類に加えて、以下の書類が必要となってきます。
➁贈与を受けられる方に必要な書類(受贈者が未成年である場合の追加資料)
㋓親権者と未成年者の親子関係が分かる戸籍謄本(有効期限3か月)
㋔親権者及び未成年者の本籍地入りの住民票
基本的に、親権者の戸籍謄本及び本籍地入りの住民票(家族全員)を取得すれば良いと思われます。なお上記㋓にも記載していますが、戸籍謄本には3か月以内の有効期限がありますので、ご注意ください。
4.まとめ

親から未成年の子への贈与をする場合、贈与を原因とする所有権移転登記をする場合、通常の贈与による所有権移転登記に必要な添付書類に加えて、親子関係がわかる戸籍謄本(3か月以内のもの)と親権者及び未成年者の本籍入りの住民票が必要になります。
また、重要な点としては、「贈与税」が発生する場合があるという点です。税金につきましては、税理士先生への相談が必要となります。
アイリスでは、ワンストップで法律上の問題と税務上の問題を解決すべく「法律・税務無料相談会」を定期的に開催しております。ぜひご活用ください。



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