相続登記義務化のリスクって10万円の過料だけなの?

2023年03月18日

 相談者の方で「相続登記義務化のリスクって、過料だけなんですかね。」とのご質問がありました。

 現在、相続登記義務化が浸透し始め、「過料」が主に取りあげられることが多いのですが、リスクってこれだけなんでしょうか。相続登記を放置することで生じる可能性のある過料以外のリスクについて説明しました。

①相続関係が複雑になる

 遺言がない場合、相続登記には遺産分割協議に基づく遺産分割協議書を作成して、移転する相続人を決めるのですが、あまりにも長い期間相続登記を放置すると、疎遠になった親せきや、離婚した配偶者の子供たちと協議をすることになります。そもそも協議に協力していただけるか微妙になる場合もあります。

 権利関係が複雑になりますと調査費用がかさみますし、争いとなると弁護士対応となってしまします。

➁認知症などにより遺産分割協議が難化

 相続人の中に認知症を発症された方がいますと、法定後見制度を使わなければならないケースが出てきます。法定後見には手続きが必要なうえ、後見人となる弁護士・司法書士に報酬が発生し、当該相続人の方が亡くなるまで発生します。

③他の相続人の債権者からの差押え

 相続人の中に借金がある方がいますと、当該相続人にも法定相続分の相続の権利は存在するため、その債権者が代理で相続登記をし、当該相続人の持ち分を差し押さえる可能性があります。

④保管期限が定められた公的書類が手に入らなくなる

 今からの相続ではほとんどありませんが、過去の相続で、保管期限が定められた書類が存在しました。これらがないと、登記手続き上、いろいろと煩雑になります。

➄法定相続人の一人が自己の相続分を勝手に売却する

 ③でも触れたように、相続人には法定相続分の権利があります。遺産分割をする前に、他の相続人にだまって、自己の持ち分を売却してしまうケースもあります。どうやら、こういった権利を買い取る専門の業者があるみたいです。この場合、買い取った業者との遺産分割になりますので、不動産を売却して支払うのか、業者が買い取った相続分を買い戻すのかという問題が発生します。

相続登記は、発生した場合、専門家に相談をして、早めに手続きをした方がよいでしょう。

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