相続登記 登記簿が「田」で現況宅地の手続き

2023年09月19日

先日、受任した相続登記で、登記簿の地目が「田」で、固定資産税評価証明書の記載では「田 現況宅地」となっている土地の手続きをいたしました。通常、農地関連は農地法3条の3の届出が必要となりますが、今回の場合はどのように手続きをすればいいのでしょうか。

目次

1.農地の相続登記手続き

2.農業委員会に提出する届出

3.今回のケース

4.登記簿地目「田」で現況宅地の土地を売買する場合

5.まとめ


1.農地の相続登記手続き

 農地の相続手続きは、売買と異なり農地法の許可は不要です。一般的な相続登記と同様に、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍と、相続人の現戸籍、遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書、本件土地を引き受ける相続人の住民票で、相続登記が可能です。

2.農業委員会に提出する届出

 農地の相続登記前に農地法の許可は不要ですが、相続登記後に農地法の届出は必要になります。この届出は、相続発生から10か月以内にする必要があります。この届出の重要なポイントは、農地を活用するために、あっせんが必要かどうかという部分です。仮に、親は農業をしていたが、その子供は農業をしない場合には、あっせんをお願いして、農地があれないようにしてもらう方法もあります。

3.今回のケース

 農業委員会は、何を基準に「農地法の届出の有無」を判断しているのかを解説したいと思います。

 以前農業委員会に問い合わせをしたところ、現況で判断しているので、すでに宅地など他の地目で活用されている場合には、農地法の届出は不要とのことでした。

 登記簿上の地目ではなく、現況で判断しているようです。

※迷わる場合には、一度、農業委員会に問い合わせてください。

4.登記簿地目「田」で現況宅地の土地を売買する場合

 農地の相続登記の場合には、登記後に農業委員会への届出でいいのですが、売買や贈与の場合にはどのような手続きになるのでしょうか。

 所有権移転登記の条件として、「農地法の許可」が必要となります。地目を変えずに売買する場合には3条、地目を変更して所有権移転する場合には5条の農地転用の許可が必要となります。ここで重要なのは、届け出はなく許可だという点です。許可がなければ、売買を原因とする農地の所有権移転登記は、できません。売買契約の日付より許可日が後の場合には、許可日が原因日付となります。つまり、農地法の許可は所有権移転登記の要件の一つであるということになります。

5.まとめ

 つまり、登記簿地目が「田」で現況も農地の相続登記の場合には、農地法の届出で相続登記後にすればよく、売買の場合には事前に許可が必要ということになります。

(追加情報)

 また、相続登記終了後に、これらの複数の農地を手放したいと考え、各筆ごとに別々の人に売買する場合には、注意が必要です。

 なぜなら、「宅建業法違反」に問われる場合があるからです。不特定多数に不動産を反復継続して売買する場合、宅建免許が必要となるからです。免許なく取引をした場合の罰則が適用される可能性があります。

 「宅地建物取引業を無免許で営むことは、宅地建物取引業法の免許制度の根本をゆるがす重大な違反行為である。 そのため、無免許の営業を行なった者には、宅地建物取引業法上の最も重い罰則として、3年以下の懲役または100万円以下の罰金(または両者の併科)が予定されている(法第79条第2号)。」

 怖いのは、法人である業者の場合だと、行政機関が監督機関となりますが、個人の場合ですと、「警察」が監督機関になっています。つまり、行政指導ではなく逮捕される可能性があるということになります。

 個人で、相続土地の処分を考えられている方は、必ず不動産業者、専門家に確認するようにしてください。

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