自筆証書遺言について

2023年06月01日

遺言書作成で最も手軽にできる自筆証書遺言ですが、先に述べた通り遺言は民法の要式に合致していなければ効力を生じません。保管場所なども苦慮するところですし、相続発生後相続人が遺言書を発見した場合、家庭裁判所で検認の手続きが必要でしたが、令和2年7月10日より法務局の保管制度が開始されました。法務局保管制度を利用した場合、改ざん防止や検認手続を省略することができます。

目次

1.自筆証書遺言とは

2.要件:遺言書前文の自筆

3.要件:日付の自書

4.要件:氏名の自書

5.要件:押印

6.自筆証書遺言の法務局保管制度の手順

7.まとめ


1.自筆証書遺言とは

 自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文日付及び氏名を自書し、これを押印することによって成立する遺言です。(民法968条第1項)

 つまり、要件は全文、日付、氏名を自書し、押印すれば成立するということです。

 ただし、各条項については他にも要件がありますので、専門家への相談をお勧めいたします。

2.要件:遺言書前文の自筆

 ①タイプライターやワープロなどの危機を用いて作られた遺言は無効です。

 ➁財産目録は、自書することを要しない(民法968条第2項前段)が、財産目録のすべてのページに署名・押印することを要します。(民法968条第2項後段)

 ③他人によって代筆された遺言も無効。

 ④「病気その他の理由により運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、遺言者が証書作成時に自書能力を有し、遺言者は添え手をした他人から、単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡の上で判定できる場合には、「自書」の要件を充たすものとして、有効であると解するのが相当である。」

  (最判昭62.10.8)

3.要件:日付の自書

 ①「年月」だけでなく「日」も特定できるような記載をしなければ、遺言は無効となります。

  ※「令和5年5月29日」のような具体的な年月日のほかに、「満何歳の誕生日」などでも認められる場合があります。しかし、無効になってしまう危険がありますので、普通に記載したほうがいいです。

4.要件:氏名の自書

 氏又は名の一方だけの記載や、ペンネーム・通称などの記載であっても、遺言者を特定できる場合には、遺言は有効となります。

5.要件:押印

 ①「拇印その他の指印も適法である。」

  (最判平元.2.16)

 ➁一通の遺言書が数葉に渡る場合でも、その数葉が一通の遺言書として作成されたものであることが確認されれば、その一部に日付・署名拇印がされていれば有効であり(最判昭36.6.22)また、その間に契印がなくても有効である。(最判昭37.5.29)

6.自筆証書遺言の法務局保管制度の手順

 ①自筆証書遺言書を作成(こちらは自筆し記名押印が必要となります)、必要な財産目録等(パソコンで作成したものや通帳、登記簿謄本のコピーなど)を添付します。

  様式につきましては、画像保存する上で、「余白の確保」が必要です。

  ※上部5ミリ、下部10ミリ、左部20ミリ、右部5ミリとなっています。法務局ホームページから参考書類をダウンロードして余白は必ず確認してください。

 ➁遺言書保管の申請をする法務局を選択する

  自筆証書遺言書の保管ができる法務局は、以下の3つとなります。

㋐遺言者の住所地

㋑遺言者の本籍地

㋒遺言者の所有する不動産の所在地

 ③申請書の作成

  法務局ホームページから申請書をダウンロードして申請書を作詞いたします。

  ※記載例もダウンロードできますので、その記載内容に従って項目を埋めてください。

 ④法務局に遺言書を預けるための予約

  ➁の自筆証書遺言を保管できる法務局に、電話もしくはネットで予約を入れます。

  予約は、必ず「一人一枠」という指示が出ていますので、ご夫婦で予約される場合には、お一人ずつ予約をとってください。

  ※予約は、予定する日の30日前から前々営業日の午前中までできます。

   当日予約はできないので注意してください

7.まとめ

 自筆証書遺言について解説してきましたが、現時点で、デジタル遺言の検討が始まっており、今まで以上に遺言は利用しやすくなりますので、是非、検討してみてはいかがでしょうか。

最新のブログ記事

令和6年10月23日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。

相続手続きは、思っている以上に複雑でトラブルが発生しやすいものです。遺産をめぐる相続人間の争いや、手続きの複雑さから生じる混乱は、予想外に長引くことも多いです。特に以下の5つのケースでは、相続が大変になることが多く、注意が必要です。

相続対策として遺言書を作成することは、財産分配の明確化や相続争いの防止を目的としています。しかし、遺言者の死亡後に遺言書の効力が発生し、特に遺言者の認知能力に疑義が生じた場合、その遺言書の有効性が争われることがあります。このような事態は、遺言書の有効性をめぐる訴訟に発展することが多く、遺族間の関係に大きな影響を及ぼす可能性があります。以下では、遺言書の有効性に関する基本的な法的要件や、認知能力に関する疑義が生じた場合の対応について詳しく説明します。

<