誤った内容で登記が実行されてしまった場合の対処法

2023年09月04日

先日、県外の同業者と電話で話をしていた時に、誤った内容で登記が実行されてしまいその後大変だった、という話を聞きました。まさかその数日後に自分が経験することになるとは、思いもよりませんでしたので、自戒の念も含め備忘録として記録しておきます。

目次

1.登記が誤って実行されてしまうメカニズム

2.登記官が職権で行える登記

3.その後の対処法

4.まとめ


1.登記が誤って実行されてしまうメカニズム

 申請書には「登記原因証明情報」という書類を添付します。契約書や司法書士作成の報告形式のものもありますが、今回は契約書でお話をいたします。この契約書に係れている内容と、電子申請データに記載した内容、例えば氏名や会社の商号の一部の漢字が異なっていた場合、契約書と付け合せると、当然異なりますので、法務局から補正の連絡があり、補正を実施したのち改めて審査がなされます。この時稀にそのまま登記が通ることがります。

 

2.登記官が職権で行える登記

 (1)職権抹消

   ①「抵当権消滅に関する付記」登記がある場合

   ➁収用によって消滅した抵当権設定の登記

   ③起業者からの収用の裁決手続の開始の登記

   ④処分禁止の登記で、仮処分権利者が単独で所有権移転登記をした時の担保権等

   ➄「保全仮登記に基づく本登記」がされた場合

   など

 (2)職権登記

   ①「地役権設定」の登記を申請した場合の「要役地」についての登記

   ➁「信託財産に属する不動産」について、権利の移転・権利の変更する場合の「信託の変更」登記

   ③根抵当権の分割譲渡の登記を申請した場合の「原根抵当権の極度額の変更」の登記

   などがあります。今回は、登記簿の権利部の一部の登記についてのみ書いております。

 このように、登記官ができる抹消登記・登記については法定されており、今回のように誤った内容で登記された場合の更正登記については、法定されていないため、登記官側で対応することができません。

3.その後の対処法

 登記官側で対処できないので、本人もしくは代理人(司法書士)が更正登記をすることになります。

 しかし、簡単にもう一度、登記原因証明情報や委任状、印鑑証明書が入手できる先ならいいのですが、金融機関などが一方当事者の場合、代表の印鑑をいただくことになります。これはとてもハードルが高いですし、時間もかかります。特に、担保権の債務者の表示でこのような事態になった場合には、実際は存在しない氏名・商号の方を表記してしまっているため、他の債権者が担保権を実行した場合などには、対抗できない可能性が出てくるわけです。

 ですので、まずは法務局に連絡をして内容を相談し、登記原因証明情報が、以前使った契約書類等でいいのかどうかの確認をしました。今回の更正案件では、前回の契約書類で構わないとのことでした。しかし、委任状はいるわけです。

 その後すぐに、担当者のいる金融機関に出向き、現状をお伝えすると同時に、対策として更正登記を実行するために委任状が必要な旨を伝えました。とても恥ずかしかったです。しかし、放置はできませんので正直に話をして何とか委任状の発行まで取り付けました。あとは、他方当事者の登記識別情報・印鑑証明書・委任状になります。連絡がつく時間帯になってから、電話で連絡をして、こちらも何とかうまくいきました。この間、約3時間、生きた心地がしませんでした。

4.まとめ

 今回は登記原因証明情報の内容と申請情報が誤っていたために、このようなことが発生してしまいました。自分のミスが完全にトリガーになっているので、言い訳はできません。しかし、この時に何をどうするのかについては、すぐに思い出せました。これも、受験の時に必死で学習した職権抹消登記・登記の内容と、できない場合の更正登記の実行がリンクしていたから、短時間で対処できたわけです。

 本来起こしてはいけないことです。改めて、申請前の登記の内容のチェックは、慎重にすべきであると思いました。

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