遺産分割協議がもめてしまった

2023年07月21日

相続が発生し、遺言書もないときに相続人全員で遺産分割協議をして遺産を分割していきます。この時に、どうしても協議がまとまらない場合にどのような手段があるのでしょうか。その点について、解説していきます。

目次

1.遺産分割の方法

2.遺産分割協議がうまくいかなかった場合

3.遺産分割調停の手続き

4.どこの家庭裁判所に申立てをするのか?

5.遺産分割調停の申立てに必要な書類等

6.遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合どうなるの?

7.最後に


1.遺産分割の方法

 ①遺言による指定分割

  「民法第908条前段

  被相続人は、遺言で、遺産分割の方法を定め(遺産分割方法の指定)、もしくはこれを定めることを第三者に委託すること(遺産分割方法の指定の委託)ができます。」

 ➁協議分割

  「民法第907条第1項 遺産分割自由の原則

  共同相続人は、遺言による遺産分割方法の指定又は指定の委託がない限り、いつでも協議で遺産の全部または一部の分割をすることができます。」

  ※令和5年4月1日から施行される「遺産分割新ルール 10年・5年の猶予期間」になり、遺産分割協議はいつでもできるわけではなくなるので注意が必要です。期間を過ぎた場合には、法定相続による遺産分割協議しかできなくなります。

 ③裁判分割

  「民法第907条第2項

  協議が都となわないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、家庭裁判所にその全部または一部の分割を請求することができる。

   民法第907条第2項但し書き

  ただし、遺産簿一部分割をすることにより他の共同相続人の利益を害する恐れがある場合には、一部分割を請求することはできない。」

 つまり➁の協議(話し合い)でまとまらないなら、家庭裁判所の遺産分割調停によることとなります。

2.遺産分割協議がうまくいかなかった場合

 遺産分割協議は、相続人の全員が参加し、全員の同意がなければなりません。ですので、時として、協議がうまくまとまらないケースもあります。そんな時は、家庭裁判所に対して「遺産分割調停」を申立することとなります。

3.遺産分割調停の手続き

 相続人全員で遺産分割の内容を裁判所で行うための手続きとなります。遺産分割調停では、裁判所の調停委員にサポートしていただきながら手続きを進めていくことになります。顔を合わせたくない相続人との話し合いも、裁判所の配慮により調停委員が間に入り顔を合わせることなくスムーズに進めていくことができます。調停委員が間に入ることによって、相続人同士が冷静に話し合うことができます

 調停の手続きでまとまった内容は、調停調書にまとめられます。その後、調停調書の内容に従って遺産の分配を進めていくことになります。

4.どこの家庭裁判所に申立てをするのか?(管轄裁判所)

 遺産分割調停は、相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てをすることができます。相手方とは、申立てをする相続人以外の相続人の方のことです。また、申立人とそれ以外の相続人との合意によって決めた家庭裁判所に対しても申立てをすることができます。

5.遺産分割調停の申立てに必要な書類等

 例)被相続人:夫、相続人:妻、子供の場合

 ①被相続人(亡くなられた方)1人に対して1,200円分の収入印紙と切手(必要な額と枚数が家庭裁判所ごとに異なるので事前に確認が必要です。)

 ➁遺産分割調停申立書

 ③被相続人(亡くなられた方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本

 ④相続人全員の戸籍謄本・住民票

 ➄相続関係説明図

 ⑥遺産を証明するもの(固定資産評価証明書、預金通帳の写し等)

 ※必要書類は、相続の内容により異なりますので、専門家への相談をお勧めいたします。

6.遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合どうなるの?

 遺産分割調停は、話し合いによって解決を目指す手続きです。相続人の全員が合意しなければ成立はしません。1人でも納得しない人がいると成立しないのです。調停が不成立になると「自動的に審判手続きに移行」します

 遺産分割調停では、調停委員が間に入り話し合いにより解決する手続きですが、審判では「話し合いは行われません」。裁判と同じように証拠に基づいて裁判官が審判を下します。つまり、調停のように話し合いではなく、裁判官が審判を下して遺産の分割方法を決めるということになります。そして、この審判には強制力がありますので、必ず従わなければなりません。相続人の希望に沿った結論ではない場合もありますが、どうしても解決できなかった場合の解決手段と考えてください。

 遺産分割により取得した不動産については、この遺産分割調停調書、審判書を基に登記をすることとなりますが、すでに家庭裁判所で相続関係を確認しているために、再度戸籍等の添付が不要となります。

7.最後に

 相続に関する相談で遺産分割協議に応じてくれない、そもそも遺産分割協議に参加してくれないといった相談を受けることがありますが、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の手続きを話し、それでもダメな場合は実際に手続きに入っていただくようにアドバイスしております。

 極力家庭裁判所の手続きを避ける理由としては、その後の家族関係の悪化です。できる限り話し合いで解決したほうが良いと考えております。

 遺産分割調停や審判の話をすると、たいていの場合、遺産分割協議に応じてくれるケースが多いです。ただし、応じてくれない場合も当然あるので、上記手続きの内容を参考にしてみてください。

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