(論点)後見人と身元引受人は同じ人がなれるのか?
後見人と身元引受人が同一人物である場合、利益相反の問題が生じる可能性があるため、慎重に検討する必要があります。この論点について、以下に詳しく説明します。
遺産分割前に、預貯金の口座が凍結されてしまい、相続人の調査が難航し相続発生後の生活に困ってしまうといった事態が、実際に起こっていました。子供がいれば、サポートも受けられると思うのですが、子供がおらず、自分以外の相続人が誰かわからない状態で、預金が凍結されますと日々の生活を続けられなくなる方もいます。そこで、2019年7月1日の民法改正により、「遺産の分割前における預貯金債権の行使」についての規定が盛り込まれています。どのような内容になっているのか確認していきましょう。
目次
1.そもそも何が問題なのか
2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点
3.事例で考える
4.まとめ
1.そもそも何が問題なのか
前のブログでも書きましたが、相続発生を金融機関が確認した場合、被相続人の口座は凍結されます。これは、金銭(現金・預金)について、当然には分割されません。遺産分割前にその金銭を保管する相続人に他の共同相続人が自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできません。これが、2019年7月1日より前の民法の取り扱いでした。
私がまだ司法書士資格の受験生だった時に、予備校の講師(司法書士)が言っていたのですが、子供のいない夫婦の夫が亡くなり、すべて夫名義の預金しかなく、夫の入院費用や葬儀代を支出してしまったのち、手持ちの現金が底を尽き、預貯金も凍結されている状態で日々の生活にも困る状態で相談に来られた方がいたそうです。いろいろ手を尽くしたのですが、結局ダメで、相続人との遺産分割協議をするにも、夫の兄弟姉妹は遠方に住んでいて、すぐにできる状態ではなかったそうで、とても大変な思いをしたということでした。
こういったことを踏まえて、民法が改正されています。
2.民法改正により遺産分割前の預貯金の取り扱いの変更点
「(民法909条の2)
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」
前段の部分が重要で、遺産分割が成立する前であっても一定額の預貯金については、各共同相続人が単独でその権利を行使できる旨が規定されています。その一定額とは、「法定相続分の3分の1」です。
それでは、夫の預貯金が90億円あるので「法定相続分の3分の1」なら、億単位のお金の引き出しができるのかというとそうではなく、上限が定められています。
「民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。」
つまり、150万円が上限として定められています。これは、各金融機関ごとに150万円が限度となり、一つの金融機関内に複数の口座があっても、その合計額は150万円が限度となります。
3.事例で考える
例えば、夫婦と子供一人がいましたが、子供は行方不明で連絡がつかない状態です。預貯金の口座はすべて夫名義で900万円の残高があったとします。この時妻は、自分の法定相続分2分の1の3分の1、つまり150万円までなら、遺産の一部分割みなしとして金融機関からの引き出しが可能となります。ただし、各金融機関の手続きが必要となりますので窓口にお問い合わせください。
4.まとめ
今回は、相続発生後、遺産分割までの間の預貯金の「いわゆる仮払い制度」の取り扱いについて解説いたしました。
相続が発生して、手持ちの現金がない場合の手段として有効かと思います。遺産分割に時間がかかりそうな場合にはぜひ活用してみてください。
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