遺留分の生前対策について アイリス国際司法書士・行政書士事務所

2023年03月06日

目次

1.遺留分とは

2.遺留分対策①早期の生前贈与

3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄

4.遺留分対策③遺留分の生前放棄

5.遺留分対策④生命保険の活用

6.遺留分対策➄養子縁組制度の活用

7.まとめ


1.遺留分とは

 遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。

 遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に全財産を遺贈することもできます。しかし、それでは残された家族が住む家を失い、生活もできなくなるという事態も起こり得ます。

 こうした、あまりにも相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する「遺留分(いりゅうぶん)」という制度が規定されています。

 それでは、遺言者が全ての財産を特定の相続人または受遺者に移転させるために、遺留分についてどのような対策ができるのか、解説していきたいと思います。

2.遺留分対策①早期の生前贈与

 遺留分侵害額請求の対象となるのは遺贈と贈与になります。贈与とは遺言書で財産を引き継がせることであり、遺贈は必ず遺留分を計算するうえで対象財産となります。一方、生前贈与は一定の期間制限があります。この期間制限外での贈与については、遺留分侵害額請求の対象財産とはなりません。

 つまり、「一定期間内に行われた贈与が遺留分の対象となる=期間外の贈与は遺留分侵害額請求の対象から除かれる」となります。

 この「一定期間」については、相続人と相続人以外で異なってきます。(民法第1044条)

 (遺留分算定のための財産の価額に算入される贈与)

 ※特別受益:自宅購入資金、事業資金、不動産をもらう等の扶養の範囲を超えた資金的援助を受けることを言います。

  例えば、12年前に長男が自宅購入資金として2千万円、父親から援助を受けその後相続が発生した場合、この2千万円は、特別受益に該当する贈与とはなりません。

 また、遺留分権利者を害すると知ってなされた贈与については、期間制限はなくなりますので注意が必要です。これに該当するかどうかの要件は、

  ①その贈与が、個人の財産が増加しないという予見があること

  ➁将来、個人の財産が増加しないという予見があること

   →「全く収入が立つ予定がないのに贈与する行為=損害を与えることを知っていた」

    と、判断される可能性があります。

 相続はいつ発生するかわかりませんので、できるだけ早期の対策が必要となります。

3.遺留分対策➁生前贈与と相続放棄

 遺留分権利者とは、「配偶者」「子供」「直系の親」が該当します。つまり、相続人が対象になります。そこで、「相続放棄」を検討していきます。相続放棄した相続人は、初めから相続人ではなかったと扱われます。そうなると、相続人以外の贈与の対象となりますので、1年前のものでなければ遺留分侵害額請求の対象財産ではなくなります。

 ただし、この場合も遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である場合には、この1年という期間制限はなくなってしまいますので注意が必要です。

 遺留分権利者により裁判となった場合、この「遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与である」ことの立証責任は遺留分権利者側になりますので、相当困難にはなると思われますので、権利行使されないことが多くあると思われます。

4.遺留分対策③遺留分の生前放棄

 相続放棄は、被相続人の生前にはすることができません。相続を相続人が知ったのち3か月以内にすることができます。しかし、遺留分の放棄は、被相続人の生前であってもすることは可能です。

 遺留分対策として、「最も確実な方法」として、生前に相続人となる方と話し合い遺留分を放棄していただく方法があります。

 遺言書の相談で最も多い内容が、「どうやって、対象の相続人の方に遺留分を放棄してもらうか」です。「念書」を書いてもらっていたら大丈夫なのかというお話をされる方もいらっしゃいますが、生前の遺留分放棄の手続きとしては、民法1049条にある通り、「家庭裁判所の許可」がなければ、当該念書に法的な効力はありません。

 家庭裁判所の許可を要する理由としては、被相続人による不当な圧力によって、不本意に遺留分の放棄が行われてしまう可能性があるためです。

 遺留分権利者が不当に権利を奪われることがないようにとのことで、家庭裁判所で許可を得る要件として次の事項が挙げられます。

  ①遺留分権利者の自由な意思によること(強制的な遺留分の放棄は不可)

  ➁遺留分放棄の必要性や合理性が認められること

  ③遺留分権利者へ十分な代償が行われていること(遺留分に相当する程度の贈与を行うこと)

 なお、遺留分を放棄した相続人は、相続人として遺産を相続することができます。この点が相続放棄と大きく異なる点です。ですので、遺言書を書いて当該相続人への遺産の相続をしないように意思表示しておかなければ、遺留分放棄者は法定相続人として相続財産を相続することとなってしまいます。

5.遺留分対策④生命保険の活用

 あらかじめ相続財産に現金・預金が多くある場合には、「生命保険」の活用が考えられます。生命保険の活用は、相続税対策においても有効ですが、遺留分対策においても有効です。

 相続対策に活用する保険は、終身型の死亡保険となります。被保険者が亡くなったときには、「受取人」に死亡保険金が支払われることになります。相続対策の生命保険活用する場合の保険料は、一時払いで現金・預金を保険金に変えることができます。

 この死亡保険金の大きな特徴は、相続財産として取り扱われないという点があります。

 ①相続税法上は相続財産とされるので、相続税の課税対象となりますが、「相続人の人数×500万円」の控除の枠があります。

 ➁相続する上では相続財産から除外されています。つまり、相続財産ではありません。

  つまり、死亡保険金は、受取人である相続人固有の財産ということになり、遺産分割協議などなくても、保険証書をもって死亡保険金の受け取りができます。

  相続財産ともされていないため、遺留分の対象ともなりません。

  生命保険の活用も、過度の利用(遺産総額に対して50%程度)となりますと、相続財産と扱われて、遺留分の対象となる可能性が高いため、利用する割合については注意が必要です。

6.遺留分対策➄養子縁組制度の活用

 養子縁組は、相続税対策にも活用されていますが、遺留分対策にも有効です。養子縁組によって各相続人の遺留分も減少します。

(事例)

 事例で、父親が何もしていない場合、相続分は長男、次男それぞれ2分の1ずつとなり遺留分はそれぞれ4分の1となります。

 父親が、長男の配偶者と孫を養子とした場合、各相続分は4分の1となり、それぞれの遺留人は8分の1となります。

 相続税の側面でも、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)で相続人の数が4人としたいところですが、

 ・実子がいる場合は、養子は1人まで

 ・実子がいない場合は、養子は2人まで

この基礎控除の相続人の人数に加えることができます。

 一方で、遺産を相続する側面では、人数制限はありません。

 相続税の考え方と相続の考え方では、違いがありますので詳しくは各専門家に相談してください。

7.まとめ

 遺留分対策として、

 ①早期の生前贈与

 ➁生前贈与と相続放棄

 ③遺留分の生前放棄

 ④生命保険の活用

 ➄養子縁組活用

 を解説してきました。内容でも少し触れましたが、「相続」と「相続税」についての考え方が異なる個所があります。専門家に相談しながら、対策を進めていくことをお勧めいたします。

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