遺言・成年後見・民事(家族)信託の使い分け

2022年09月17日

自分の体調や認知症が気になる方に向けて、遺言・成年後見・民事(家族)信託についてお話ししたいと思います。

ご自身の財産を家族に自分の意思に基づいて分けたいと思っている方で、真っ先に思いつくのが「遺言書」の作成だと思います。

遺言書には、3種類あります。一番簡単なものが「自筆証書遺言」です。メリットは手軽という部分です。デメリットは、生前に遺言書の存在を伏せておく必要があり、発見されないリスクというものがあります。しかし、これは法務局の「遺言書預かりサービス」で解消されます。ただし、預けるときのチェックは、形式的なものですので、その内容まではチェックされません。

公証人により、内容をチェックし公証役場で保管される「公正証書遺言」があります。メリットは、公証人の目を通したチェックが入るので内容まで確認された遺言書として、公証役場で保管していただける点です。デメリットは、証人を2名用意しなければならない点とコストがかかる点です。

次に、成年後見がありますが、こちらは「法定後見」と「任意後見」があります。任意後見は、任意後見契約(公正証書)により後見人を自身で選択し、契約に定められた任意後見人が、人後見監督人の監督の下に、契約で定められた特定の法律行為をご本人に代わって行うことができる制度です。また、法定後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度で、本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3類型があり、判断能力を常に欠いている状態の方には成年後見人を、判断能力が著しく不十分な方には保佐人を、判断能力が不十分な方には補助人を裁判所が選任し、本人を支援する制度です。ここで、成年後見といった場合には、法定後見の話とさせていただきます。

それでは、民事(家族)信託とは、ある特定の財産を自分自身(委託者)が、自分の財産を信頼できる人(受託者)に託して名義を移転し、信託契約で定めた一定の目的に従って「管理(守る)」「活用(活かす)」「承継(遺す)」を行ってもらいます。そして、信託の利益を享受する人(受益者)に信託財産を利用させたり、運用益などを給付したりする制度のことです。

非常に簡単にですが、3つの制度の概要を解説いたしました。

しかし注意してほしいのは、認知症等発症前と後とで使える制度が異なります。

認知症が発症してしまいますと、「契約」「意思表示」そのものができなくなる可能性があります。よって、契約・意思表示で行う「遺言書」「民事(家族)信託契約」がこれに該当します。遺言書の場合、民法973条(成年後見人の遺言)「成年被後見人(認知症になった方)が事理を弁識する能力を1時回復したときにおいて遺言をするには、医師2人以上の立会がなければならない」とされていますので、全くできないというわけではありません。

認知症発症後は、申し立てによる「成年後見制度」を活用することになります。現時点では、成年後見制度を利用すると、その方が亡くなるまでの財産管理を成年後見人が行うこととなります。

詳しくは司法書士まで。

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