遺言書による不動産の相続登記

2024年05月17日

生前対策として、アイリスでは相談者の方に、積極的に遺言書の作成のアドバイスをしております。遺言書を作成することにより、どのようなメリットがあるのか、いまいちピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。遺言書があった場合と、なかった場合の比較も含めて解説したいと思います。

目次

1.遺言書の種類

2.遺言書があった場合の相続登記の書類

3.遺言書がなかった場合の相続登記の書類

4.まとめ


1.遺言書の種類

 遺言は、方式、種類、作成方法が民法で定められており、この定めに従っていない遺言は無効となります。

一般的な方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、特別証書遺言の3種類の遺言があります。それぞれ作成手続きが異なります。

①自筆証書遺言

 自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び氏名を自筆し、押印する必要があります。(民法968条1項)ただし、財産目録については、パソコン等で作成することが可能となっています。

➁公正証書遺言

 公正証書遺言とは、遺言者が口述した遺言内容を公証人が筆記する方式の遺言です。(民法969条)実務上では、事前に遺言者にヒアリングし、遺言の内容を決めたのち、公証人が文書にまとめ、面談当日に公証人から遺言者に読み聞かせ、その内容で問題なければ、署名、実印による押印をするものです。その面談の際に証人2人以上が同席することとなります。

 遺言書は公証人が作成し、公証人と証人2名以上の下で面談が行われるため、意思能力等の面で覆しにくくなります。また、文字が書けない、目が見えないといった障害がある方でも、この方式での遺言書の作成は可能です。

③秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が自分で作って封印した遺言書を公証役場に持参し、公証人に、その遺言書が間違えなく遺言者本人のものであることを公証しもらう方式の遺言です。  

 公証人が遺言内容を作成するわけではありませんので、自筆証書遺言同様遺言者がある程度、知識を持っている必要があると思います。ただし、どうしても中身を誰にも知られたくないときに使う方式です。

 遺言者は、証人2人以上と共に公証役場に行き、持参した封書を公証人と証人の前に提出して、自己の遺言書である旨とその筆者の住所、氏名を申述します。

 これを受けて公証人は、提出の日付及び遺言者の申述を封紙に記載します。この秘密証書遺言は、遺言者本人が保管することになります。

 一般的なのは①と➁です。また、①の自筆証書遺言書を作成した場合、法務局で保管できる制度があります。この場合、相続が発生した場合の検認の手続きが不要となります。

2.遺言書があった場合の相続登記の書類

 ①遺言書(検認手続きを経た自筆証書遺言書であっても、中身の有効性まで証明するものではありませんので、自筆・日付、氏名の記載・押印・加除の方式が規定に従っているかについて、確認が必要です。自筆証書遺言書の場合、検認した場合の検認済証明書の添付も必要です。(法務局に保管されている場合は、検認済証明書は不要)

 ➁被相続人の死亡の事実がわかる除籍謄本

 ③被相続人の住民票の除票(登記簿上の住所と一致するもの)

 ④不動産を取得する相続人の現在戸籍(被相続人死亡日後に取得されたもの)

 ➄不動産を取得する相続人の住民票

 ⑥固定資産評価証明書

 ⑦司法書士に依頼する場合の委任状

以上となります。それでは、遺言書がなかった場合どのようになるのでしょうか。

3.遺言書がなかった場合の相続登記の書類

※遺産分割協議により、特定の相続人に不動産の名義を変更するケース

 ①被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍(除籍、改正原戸籍)

 ※数次相続により、すでに亡くなっている方も生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要

 ➁被相続人の住民票の除票(登記簿上の住所と一致すること)

 ③相続人全員の現在戸籍(被相続人死亡日後に取得されたもの)

 ④遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印による押印)

 ➄印鑑証明書(相続人全員分 申請人分は除けます)

 ⑥相続関係説明図

 ⑦不動産を取得する相続人の住民票

 ⑧固定資産評価証明書

 ⑨司法書士に依頼する場合の委任状

 以上となります。被相続人の戸籍は、生まれてから亡くなるまで、そして、相続人の戸籍は全員分となります。そして、その相続関係を表した、相続関係説明図を作成して添付することになります。

4.まとめ

 遺言書があった場合とない場合の相続登記の申請書に添付する書類の違いを解説してきました。確かに、遺言書がなかったら書類が増えるのはわかるがそれだけでしょう、という方もいらっしゃいますが、それは、「遺産分割協議が争いなくできる状況にある」という前提があるからそう思われるのかもしれません。しかし、いくつかのケースで、圧倒的に遺言書があった場合、相続登記がスムーズにいくケースがあります。例えば

 ①前婚の配偶者との間に子供がおり、現在の配偶者と婚姻後は、全く連絡を取っていない場合

  その子供も「相続人」です。残された配偶者と今の子供たちは、前婚の際の子供とは全く面識がありません。前婚社との子供の心情として、すんなり遺産分割協議に協力していただけるか疑問です。

 ➁外国に相続人がいる場合で、外国居住者が相続登記の手続きについて手間を取りたくない場合

  外国に居住していても、相続人であることには変わりません。外国に住居を移すことで、印鑑証明書や住民票は取得できなくなります。これに代わって、「サイン証明」を日本領事館等で手続きをすることになるのですが、領事館に行くまで命がけという方もいらっしゃいました。

 上記のような状況に当てはまる方は、遺言書を作成しておくことで、残された家族にかかる負担を軽減することが可能になります。

 ぜひ、生前対策としての遺言書の作成を検討してみてください。

 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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