(何故)民法では双方代理が禁止されているのに司法書士は登記ができるのか?

2025年02月28日

双方代理とは、同じ代理人が売主と買主など双方の代理を務めることを指し、民法第108条により利益相反のリスクから原則禁止されています。しかし、司法書士は不動産売買の登記申請をする際、売主と買主の双方の代理人として行為することをしています。なぜ、双方の代理人として登記申請ができるのでしょうか?

目次

1. 双方代理の禁止とその背景

2. 不動産登記における例外的な取り扱い

3. 利益相反が生じにくい理由

4. 司法書士の登記業務における責任

5. 結論


1. 双方代理の禁止とその背景

 まず、双方代理が原則禁止されている理由について詳しく見ていきます。代理人の基本的な役割は、本人の意思を代わりに実現し、本人の利益を最大限守ることです。しかし、同一の代理人が取引の双方に関わると、代理人は一方の利益を優先した行為を行う可能性があり、その結果、他方に不利益を与えるリスクがあります。これを利益相反の問題と言います。

 利益相反の問題が生じると、代理人がどちらか一方に利益を偏らせ、もう一方の権利を侵害することが容易になります。そのため、民法第108条では、双方代理による不公正な取引を防止するため、原則として双方代理を禁止しています。もし、双方代理が行われた場合、その法律行為は無効となる可能性があります。

2. 不動産登記における例外的な取り扱い

 司法書士が不動産売買において、売主と買主の双方の代理人として登記申請を行うことが許されている背景には、不動産登記の特性が関係しています。不動産登記は、単に権利関係を公示するための手続きであり、売買契約の内容そのものには影響を与えないため、利益相反が生じにくいとされています。

2.1 司法書士法の特別規定

 司法書士は、登記申請代理業務を行う際に、売主と買主の双方の代理人となることができます。これは、司法書士法や登記法による特別な規定に基づくものであり、司法書士が公正かつ中立な立場で、登記手続きを円滑に進めることを目的としています。ここで重要なのは、司法書士が関与するのは主に「登記申請」に限られる点です。売買契約の内容や条件交渉には関与せず、契約内容が既に合意された後の手続きを行うことに特化しているため、利益相反のリスクが低いとされています。

2.2 登記申請における司法書士の役割

 不動産の売買契約において、登記手続きは重要な役割を果たします。売主から買主への所有権の移転や、抵当権の設定などが行われる場合、これらの登記は法律上公的に記録される必要があります。しかし、登記手続きは専門的かつ複雑であるため、司法書士がその代理人として登記申請を行います。この場合、司法書士は売主と買主の双方から依頼を受け、登記申請を代理して行いますが、その業務は契約の実質的な内容には関与せず、単に法的な手続きを代行するに過ぎません。

 このため、司法書士が登記申請に関して双方代理を行う場合、利益相反の問題は生じにくいと考えられています。登記申請は、売主と買主の間で合意された内容を記録するためのものであり、契約そのものの交渉には関与しないため、双方の利益を同時に守る必要がないからです。

3. 利益相反が生じにくい理由

 司法書士が売主と買主の双方の代理人として登記申請を行う際に利益相反が生じにくい理由は、以下の点に集約されます。

3.1 登記手続きの性質

 不動産登記手続きは、取引の公示という側面が強く、契約の内容や交渉に直接関与しないため、代理人が一方の利益を偏らせる余地がほとんどありません。売買契約自体は、司法書士が関与する前に当事者間で合意されており、登記申請はその結果を公示するための技術的な手続きに過ぎません。

3.2 中立な立場

 司法書士は、登記申請の場面において、売主と買主のどちらか一方に肩入れすることなく、公平かつ中立な立場で業務を行います。これは、司法書士の職業倫理としても重要視されており、司法書士法によってその公正性が保障されています。

3.3 合意済みの取引

 登記申請が行われる時点で、売主と買主は既に売買契約を締結しており、取引内容についての交渉は完了しています。このため、登記申請において代理人が関与するのは、あくまで既に合意された内容を公示するための手続きに限られ、契約内容に影響を与えることはありません。

4. 司法書士の登記業務における責任

 司法書士が売主と買主の双方の代理人として登記申請を行う際、重要なのは、適切な登記手続きを確実に進めることです。登記手続きにおいて誤りがあった場合、売買契約に基づく権利移転が適切に反映されず、将来的に法的な紛争が発生する可能性があります。そのため、司法書士は正確かつ迅速に登記申請を行い、登記事項の確認や書類の適正性を厳重にチェックする責任があります。

 また、司法書士が双方代理を行う場合には、登記手続きにおいて利益相反が生じないように注意を払う必要があります。司法書士の業務は契約内容には関与しないものの、両当事者の信頼を損なわないように、公正かつ透明な手続きを行うことが求められます。

5. 結論

 司法書士が不動産売買において売主と買主の双方の代理人として登記申請を行うことができるのは、登記手続きが契約内容に直接関与しないため、利益相反のリスクが低いからです。司法書士は、中立な立場で公正に登記手続きを行うことが求められ、登記申請における双方代理は、法律的に許容される例外として扱われています。

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