(論点)不動産登記(同一物件の登記簿中で住所が異なる同一人物の取り扱い)

2024年06月10日

相続登記において、住所が異なるが、戸籍の附票で同一性を証明することが必要となります。生前贈与で持分を数回に分けて移転している方の相続登記にて、同一物件内で、住所表記が異なっている場合にはどのような影響が出るのか、解説したいと思います。

目次

1.不動産登記簿のシステム

2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性

3.同一であることを確認できたとしても

4.まとめ


1.不動産登記簿のシステム

 法務省の不動産登記のシステムについて、「同一性(本人であることを判別)」を「氏名」と「住所」で見極めています。つまり、住所が異なるが、氏名は同じという場合、変更の登記をしておかなければ、同一人とはみなされないわけです。

 所有権を売買により第三者に移転する場合、その前提として住所・氏名を現状に合わせるために「変更登記」をしてから、売買による所有権移転登記がなされます。仮に、この変更登記を抜かした場合は、却下となってしまいます。決済の際には、特にこの点を調査し、変更登記が必要かどうかの判断をしなければなりません。

2.相続登記の際の被相続人の登記簿との同一性

 それでは、相続登記の場合にはどのように実務で行っているのかと言いますと、被相続人(登記簿の名義人で亡くなった方)の住所が現状と異なる場合には、前住所が登記簿上の住所ですと「住民票の除票」の添付で構いません。

しかし、登記簿上の住所が、前住所よりも前の住所である場合には、「戸籍の附票」を用いて、同一性の証明をすることになります。直近の相続については問題はないのですが、ずいぶん前に亡くなった方の相続登記をする場合、この「住民票の除票」も「戸籍の附票」も廃棄されてしまっている場合があります。

 この場合の対応として、「廃棄証明書」を取得し、同一性を証明する「住民票の除票」も「戸籍の附票」すでにないことを相続登記申請書に記載し、他の方法での同一性の証明をすることになります。

 ①住所と戸籍謄本に記載されている本籍の住所が同一である場合には、これだけで証明可能。

 ➁権利証の添付で、被相続人本人であることを証明可能。

 ③上申書を作成し、これに相続人全員が署名、実印による押印をして、全員の印鑑証明書を添付することで証明責任を免れます。

 上記の3つの手続きが必要となります。

 現住所が異なる場合で、住所のつながりを証明できない場合、被相続人の同一性を証明が、一つのポイントとなります。そして、この証明は、登記官の検査によりなされますので、書類がそろっていれば、相続登記は可能となるわけですが、住所を変更していない場合の問題点は、これ以外にもあります。

3.同一であることを確認できたとしても

 さて、相続登記の審査のために、被相続人の同一性を証する書面として「住民票の除票」または「戸籍の附票」が必要なことは、すでにお話しました。

 それでは、不動産登記システム上でも何も問題がないのかと言いますと、場合によっては弊害が出てきます。

 所有権全部の移転や同一の住所で登記されている持分を相続人に相続させる場合には問題とはなりませんが、例えば、1筆の土地を戦前の相続対策で、一部移転を複数回実施しており、その間に住所が変わったにもかかわらず、過去の住所の変更をしなかった場合に、問題が起こります。

 それは、「登記の目的」が、単純な「所有権移転」や「○〇持分全部移転」とはならず、「○〇持分全部移転(順位番号3番の持分)及び○〇持分全部移転(順位番号4番の持分)」という表記になってしまいます。

 これは、登記官の審査で同一性が証明できたとしても、システム上では、住所が変更されていなければ、別人と扱われてしまうためです。

4.まとめ

 以上、所有権などの登記名義人が、住所・氏名が変更になった場合には、変更登記をすることで、上記のような問題を防ぐことができます。登記簿を見た方が、「先生、何かミスったの?」と言われる場合がありますので、書類の返却の際には、必ず、ご説明をさせて頂いております。

 また、2026年4月までに、「住所や氏名の変更」があったときも、2年以内に変更登記をしなければ、「5万円以下の過料」を課せられます。

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