(論点)兄弟姉妹が相続人の場合

2024年05月31日

被相続人に配偶者・子が無く、すでに両親も他界しているため、兄弟姉妹に相続が発生してしまっている場合、遺産はどのように分ければいいのでしょうか。相談者の方が、積極的に亡くなった方の身の回りの世話をしていて、他の相続人が何もしていなかった場合、世話をしていた相続人は多く遺産をもらえるのか?遺留分は考慮しないといけないのか?解説していきたいと思います。

目次

1.兄弟姉妹への相続

2.寄与分制度

3.遺産分割協議をするにあたり

4.まとめ


1.兄弟姉妹への相続

 まずは、相続人の順位を見ていきたいと思います。配偶者がいる場合、この方は常に相続人となります。そして、血族相続人とその順位は、第1順位(子又はその代襲相続人)、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹又はその代襲相続人)。ここで注意したいのは、血族第1順位の子の代襲相続人と、第3順位の兄弟姉妹の代襲相続人の範囲が異なる点です。

 ①子の代襲相続人 被代襲者の子であること。被相続人の直系卑属であること。

 ➁兄弟姉妹の代襲相続人 被相続人の子であること。

つまり、子の代襲は再代襲があり、兄弟姉妹の代襲相続人には再代襲はありません。

 また、法定相続分も変化します。

 ①配偶者・子 各2分の1

 ➁配偶者・直系尊属 配偶者3分の2 直系尊属3分の1

 ③配偶者・兄弟姉妹 配偶者4分の3 兄弟姉妹4分の1

 上記は配偶者がいた場合ですが、いない場合、各順位ごとの相続人間で人数分の按分となります。ただし、代襲相続人が複数人いる場合は、被代襲相続人の法定相続分を代襲相続人の人数で除した数でさらに按分します。

 今回の相談では、亡くなった方の兄弟が4名おり、今回の相談者以外の方たちはすでに亡くなっていて、甥姪が複数人いるとのことでした。

 この時点で、相談者が受け取れる法定相続分が4分の1であることを説明しました。

 その時に、「私は、〇〇さんを亡くなるまで世話してきたが、他の兄弟は全く寄り付かなかった。亡くなった本人も全部私にくれると言っていた。だから、私が多く遺産をもらうということはできないか?」との質問を受けました。

2.寄与分制度

寄与分制度は、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人が、その貢献に応じて相続分を増やすことができる制度です。以下に寄与分制度の主要なポイントを説明します。

①寄与分の要件

(1)特別の寄与:

寄与分を主張するためには、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な寄与をしたことが必要です。一般的な扶養や介護の範囲を超えた貢献が求められます。

(2)寄与の種類:

寄与の具体的な例としては、以下のようなものがあります。

㋐被相続人の事業に対する労務提供

㋑被相続人の事業に対する財産提供

㋒被相続人の療養看護

㋓その他、被相続人の財産の維持・増加に特別な寄与をした行為

➁寄与分の算定方法

寄与分は、被相続人の財産全体の中で寄与の程度に応じて算定されます。具体的な額や割合は、相続人間で協議して決定しますが、協議が成立しない場合は家庭裁判所が決定します。

③寄与分の効果

寄与分が認められると、その分だけ他の相続人の相続分が減少します。寄与分は被相続人の遺産全体に対して加算されるため、寄与者の取り分が増加します。

④寄与分を主張する手続き

協議:まず、相続人間で寄与分について協議を行います。協議が成立すれば、その合意に基づいて遺産分割を行います。

家庭裁判所への申し立て:協議が成立しない場合、家庭裁判所に寄与分の申し立てを行うことができます。家庭裁判所は、寄与の程度や具体的な事実を基に寄与分を判断します。

④注意点

寄与分の請求期間:相続開始後に一定の期間内に寄与分を主張しないと、その権利が消滅する場合があります。具体的な期間は法律で定められていますので、早めの対応が必要です。

証拠の収集:寄与分を認めてもらうためには、特別の寄与を立証する証拠が必要です。例えば、被相続人の事業への貢献を示す書類や証言などを準備することが重要です。

※証拠があっても、具体的な金額として寄与していなければ認められるのは困難です。

寄与分制度は、相続人が被相続人に対して特別な貢献をした場合、その貢献を公正に評価するための制度です。通常の寄与では足りません。なぜなら、法定相続分で報われていると判断されるためです。

3.遺産分割協議をするにあたり

 寄与分の話をした時に、相談者の方は、かなり落胆されていました。しかし、相続の権利者は、法定相続人すべてにありますので、この点については納得していただきました。そして、現在凍結されている被相続人の預金の解除をするためには、「遺産分割協議書」が必要であることを説明しました。先ほどの寄与分の話から、遺産分割協議は相続全員でするものであり、協議が成立しなければ預金も凍結されたままになってしまうことを説明し、他の相続人たちの様子を見て、今までの事情をはなしをして、自身の相続分について意見をもらうようにしてみてくださいとアドバイスをいたしました。

4.まとめ

 今回のケースでは、「遺言書」があれば、全額今回の相談者の方が遺産を取得できたケースです。「遺留分」があるから、全部は無理なのでは?とお思いになる方もいるかもしれませんが、「遺留分」を主張できるのは、配偶者・子・直系尊属のみで、兄弟姉妹には主張することができません。遺産を全部上げるという言葉だけではなく、「遺言書」という形で残しておかなければ、法的な効力は生まれません。

 生前の相続相談を専門家にしておく意味は、十分に感じられるケースでした。

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