(論点)死亡保険金受取人と法定相続人の違いと相続手続きの重要なポイント

2024年10月28日

死亡保険金受取人と法定相続人は、相続に関する手続きにおいて重要な役割を担いますが、その意味や権利には大きな違いがあります。相続手続きを進める際には、この違いをしっかり理解することが必要です。本記事では、死亡保険金受取人と法定相続人の違い、相続税の扱い、相続財産との関係などを中心に解説します。

目次

1. 死亡保険金受取人とは

2. 法定相続人とは

3. 死亡保険金は相続財産に含まれるか?

4. 死亡保険金と相続税

5. 死亡保険金と遺産分割の関係

6. まとめ


1. 死亡保険金受取人とは

 死亡保険金受取人とは、生命保険契約に基づいて被保険者(通常、亡くなった方)が亡くなった際に、保険金を受け取る権利を持つ人のことです。被保険者が生命保険に加入する際、受取人を指定することが一般的です。受取人として指定されるのは通常、家族や親族ですが、法定相続人でない第三者を受取人に指定することも可能です。

1.1. 指定された受取人の権利

生命保険金は、保険契約によってあらかじめ指定された受取人が権利を持つため、被相続人(亡くなった方)の遺産には含まれません。つまり、生命保険金は遺産分割協議の対象外となり、他の相続人と分け合う必要がありません。この点が、法定相続人に関わる遺産とは異なる重要な違いです。

1.2. 受取人の指定変更

生命保険契約では、受取人を後から変更することが可能です。契約者が変更を希望する場合は、保険会社に対して正式に手続きを行う必要があります。なお、受取人が変更されない限り、当初の指定受取人が保険金を受け取る権利を持ちます。

2. 法定相続人とは

 法定相続人とは、民法に基づいて遺産を相続する権利を持つ人々を指します。被相続人が遺言書を残さなかった場合、または遺言書に特段の指定がない場合、法定相続人が相続財産を分割します。民法では、法定相続人の範囲を以下のように定めています。

配偶者は常に相続人となり、他の相続人と共に相続分を分け合います。

子供がいる場合、子供が第一順位の相続人です。

子供がいない場合、第二順位として直系尊属(両親や祖父母など)が相続人になります。

直系尊属もいない場合、第三順位として兄弟姉妹が相続人となります。

2.1. 相続分の割合

法定相続人の相続分は、配偶者と子供がいる場合、配偶者が遺産の半分を相続し、残り半分を子供が均等に分け合います。もし子供がいない場合、配偶者と直系尊属で相続分を分け合います。兄弟姉妹が相続人となる場合も、同様に相続分が定められています。

3. 死亡保険金は相続財産に含まれるか?

 死亡保険金は、通常、相続財産には含まれません。これは、保険契約に基づいて特定の受取人に直接支払われるため、遺産分割協議の対象外とされるためです。そのため、生命保険金を受け取った受取人は、相続財産の分割に関しては基本的に影響を受けません。

 しかし、例外的に「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合があります。以下にその詳細を説明します。

4. 死亡保険金と相続税

死亡保険金は遺産には含まれないものの、相続税の課税対象となることがあります。ただし、一定の非課税枠が設けられており、法定相続人が受け取る保険金については、非課税限度額があります。

4.1. 非課税限度額

非課税限度額は、次の計算式で求められます。

「非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数」

例えば、法定相続人が3人いる場合、500万円×3=1,500万円が非課税限度額となり、この額までは相続税が課されません。それを超える金額については、相続税の対象となります。

4.2. 法定相続人以外の受取人の場合

受取人が法定相続人以外の人(例えば、友人や恋人)である場合、生命保険金は、非課税枠の適用は受けられません。

5. 死亡保険金と遺産分割の関係

 死亡保険金は遺産分割協議の対象外であり、指定された受取人が保険金を単独で受け取る権利を持ちます。しかし、法定相続人の一部が受取人となり、他の相続人が全く保険金を受け取れない場合、相続人同士で感情的な対立が生じることがあります。このような場合、受取人が得た保険金の一部を相続財産として考慮し、遺産分割協議で調整することもありますが、法的には義務ではありません。

5.1. 遺留分への影響

 相続人には、最低限の相続分である「遺留分」が法律で保障されています。死亡保険金は遺産には含まれませんが、場合によっては遺留分を巡る争いの原因となることもあります。例えば、全財産を特定の相続人に譲る内容の遺言書があった場合でも、他の相続人は遺留分減殺請求を行うことが可能です。しかし、死亡保険金自体はこの請求の対象とはなりません。

6. まとめ

 死亡保険金受取人と法定相続人には、それぞれ異なる役割と権利が存在します。死亡保険金は保険契約によって指定された受取人が直接受け取るものであり、相続財産には含まれません。そのため、遺産分割協議の対象外ですが、相続税の課税対象にはなる場合があります。

 法定相続人が死亡保険金の受取人である場合、一定の非課税枠が適用され、課税負担が軽減される一方で、受取人が法定相続人以外の場合は、相続税が全額課税されることに注意が必要です。相続手続きを円滑に進めるためには、事前に受取人や相続人の権利を十分に理解しておくことが重要です。

最新のブログ記事

令和6年11月20日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。

農地が共有で登記されているケースにおいて、相続が発生した場合、相続登記を行うだけでなく、最終的に所有者を一人にまとめたいという依頼が、ありました。この場合、特に農地が含まれている場合には、農地法の規定に従う必要があります。相続に伴う農地の登記については、農地法3条の「届出」により、原則として許可を得ずに登記が可能ですが、持分を他の共有者に贈与する場合は、農地法3条の「許可」が必要となります。この許可の取得は、農地の引継ぎ先が農業に従事できるかどうかが重要な判断基準となります。この場合どのように手続きを進めればいいのかについて解説いたします。

根抵当権とは、不動産を担保にして設定されるもので、特定の債権ではなく、一定範囲内で複数の不特定債権を担保します。元本確定前は、借入れや返済が自由に行えますが、元本確定事由が発生すると、債権が固定され、新たな借入れは担保されなくなります。元本確定事由には、相続や破産、競売などがありますが、法人の破産は登記されないこともあります。

<