(論点)法定相続人と遺留分の関係についての解説

2024年10月29日

相続が発生した際、遺産は法定相続人によって分割されますが、その中でも「遺留分(いりゅうぶん)」という法的に保護された最低限の相続分が重要な役割を果たします。遺留分は、被相続人(亡くなった方)が遺言などで特定の相続人や第三者に全財産を譲渡しようとした場合でも、法定相続人が最低限保証される相続権を持つ仕組みです。これにより、家族の経済的な保護を図ることが目的とされています。本記事では、法定相続人と遺留分の関係について詳しく解説します。

目次

1. 法定相続人とは

2. 遺留分とは

3. 遺言書と遺留分の関係

4. 遺留分の放棄

5. 遺留分を巡る相続トラブル

6. まとめ


1. 法定相続人とは

 法定相続人とは、民法によって定められた相続権を持つ者を指します。被相続人が遺言を残さなかった場合、または遺言が無効であった場合、法定相続人が相続人となり、法律に基づいて遺産を分割します。法定相続人の範囲は以下のように定められています。

1.1. 法定相続人の順位

配偶者:常に相続人となります。配偶者は他の相続人がいても、常にその相続人と共同で相続します。

第1順位:子供:被相続人の子供(養子も含む)が法定相続人になります。もし子供が亡くなっている場合、その子供(被相続人の孫)が代襲相続人となります。

第2順位:直系尊属:子供がいない場合、被相続人の両親や祖父母などが相続人となります。

第3順位:兄弟姉妹:子供も直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が亡くなっている場合、その子供(甥や姪)が代襲相続人となります。

1.2. 相続分の割合

相続分は法定相続分として定められています。配偶者がいる場合、配偶者の相続分は以下のように決まります。

配偶者と子供が相続人の場合:配偶者1/2、子供1/2

配偶者と直系尊属が相続人の場合:配偶者2/3、直系尊属1/3

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

2. 遺留分とは

 遺留分とは、法定相続人が最低限確保できる相続分です。被相続人が全財産を特定の相続人や第三者に譲渡する遺言を残した場合でも、遺留分を持つ相続人は「遺留分侵害額請求権」に基づき、自身の遺留分を確保する権利があります。

2.1. 遺留分を持つ者

遺留分は、以下の法定相続人に限られます。

配偶者

子供(代襲相続人を含む)

直系尊属(両親や祖父母など)

兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、兄弟姉妹が相続人であっても遺留分請求を行うことはできません。

2.2. 遺留分の割合

遺留分は、相続財産全体の一定割合を相続人に保証するものです。遺留分の具体的な割合は以下の通りです。

直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の1/3

その他の相続人がいる場合(配偶者や子供がいる場合):相続財産の1/2

遺留分は相続人全員で分割されます。例えば、配偶者と子供がいる場合、遺留分の半分を配偶者が、残りの半分を子供が分け合います。

2.3. 遺留分侵害額請求権

遺留分が侵害されている場合、相続人は遺留分侵害額請求権を行使できます。この請求権により、相続人は遺留分を超えて取得した者(通常は他の相続人や受遺者)に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の返還を求めることができます。遺留分請求は、相続開始後1年以内に行使しなければならず、これを過ぎると請求権は消滅します。

3. 遺言書と遺留分の関係

 被相続人は遺言書によって、遺産を自由に配分することが可能です。しかし、法定相続人が遺留分を侵害される形で遺言が作成されていた場合、遺留分請求を行うことができ、遺言通りに全財産を特定の相続人や第三者に譲渡することはできません。

3.1. 遺言書による財産配分の自由

遺言書は、被相続人が自分の財産を誰にどのように分配するかを指定するための強力な手段です。しかし、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。そのため、遺言を作成する際には遺留分を考慮することが重要です。

3.2. 遺留分を侵害しない遺言の作成

遺留分を侵害しないように遺言を作成することが、相続トラブルを避けるためのポイントです。遺言者は、遺留分に配慮して遺産配分を計画し、遺言内容を法的に有効に保つために、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

4. 遺留分の放棄

 遺留分は原則として保障されていますが、相続開始前でも放棄することが可能です。相続開始前においては、遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です。

4.1. 遺留分放棄の手続き

遺留分の放棄は、相続開始前に家庭裁判所に対して申立てを行い、許可を得ることで有効となります。この手続きにより、放棄した相続人は遺留分の請求権を失い、遺産分割の際にも遺産を受け取る権利を失います。

4.2. 放棄の影響

遺留分を放棄した場合、その相続人は相続財産を一切受け取ることができなくなります。これにより、他の相続人や受遺者に対して遺留分請求を行うことができなくなるため、相続財産の分割がシンプルになります。

5. 遺留分を巡る相続トラブル

 遺留分は相続人の権利を保護するための制度ですが、遺言によって特定の相続人に多くの遺産が譲渡された場合、他の相続人が遺留分請求を行うことでトラブルが発生することもあります。特に、家族間の感情的な対立が遺留分を巡る紛争を引き起こす原因となることが多いです。

6. まとめ

 法定相続人と遺留分は、相続において重要な要素です。法定相続人は民法に基づいて定められており、遺留分はその法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産を保証する制度です。遺言を作成する際には、遺留分の存在を考慮し、相続トラブルを未然に防ぐために適切な配分を行うことが求められます。

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