(論点)相続の民間資格の危うさについて

2024年07月05日

日本では、相続問題がますます複雑化しており、専門家のアドバイスを求めることが一般的です。しかし、近年では司法書士や弁護士といった専門家に依頼せず、民間資格を持つ人々が相続手続きをサポートする事例が増えています。これには費用面の負担軽減や手軽さが利点とされていますが、その一方で重大なリスクも存在します。今回は、相続における民間資格の危うさについて、専門家に依頼しないことのリスクと合わせて考察します。

目次

1.民間資格の概要

2.民間資格の危うさ

3.専門家に依頼するメリット

4.まとめ


1.民間資格の概要

 民間資格とは、国や自治体の公的資格とは異なり、企業や団体が独自に認定する資格を指します。相続に関連する民間資格としては、「相続診断士」や「家族信託コーディネーター」などが存在します。これらの資格は、数日から数週間の短期間で取得可能であり、相続に関する基礎知識を学ぶことができます。しかし、実際の法律知識や実務経験が乏しいことが多く、専門的な判断を要する場面で問題が発生することが懸念されています

※そんなことはない、インターネット上に転がっている情報を集めればそれなりに相談できるという方がいらっしゃいましたが、それこそ危険で、法律上の判断をしながら、情報の精査ができるのが国家資格者です。仮に、専門的な相談をしたいなら、あなたを信じて相談に来るお客様のためにも、数日から数週間で取れる民間資格ではなく、国家資格を取るべきです。国家資格がベースにある民間資格者なら問題ないと思います。

2.民間資格の危うさ

①法的な権限の欠如

 民間資格を持つ者には、司法書士や弁護士のような法的な権限がありません。たとえば、相続登記や遺産分割協議書の作成といった法的手続きは、法に基づいて専門知識を持った司法書士や弁護士によって行われる必要があります。法律相談も然りです。民間資格者がこれらの手続きを行うことは、法律上許されていないため、無資格のままこれを行うと、違法行為に該当する可能性があります。

➁誤った情報提供のリスク

 民間資格を持つ者が提供する情報が必ずしも正確であるとは限りません。相続手続きには、税務や法務の複雑な知識が必要であり、誤ったアドバイスが財産分配に重大な影響を及ぼすことがあります。例えば、相続税の申告漏れや、遺産分割協議書の不備により、相続人が後にトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

③責任問題

 民間資格者によるアドバイスが原因で問題が発生した場合、その責任を追及することが難しい場合があります。公的資格を持つ専門家には、職業上の倫理規定や監督機関が存在し、トラブル発生時にはこれに対処するための仕組みが整っています。しかし、民間資格者の場合、こうした制度が不十分であり、被害を受けた依頼者が救済を求めることが難しいのです。

④費用面の不透明さ

 一部の民間資格者が提供する相続サービスには、料金体系が不透明なものが多く、依頼者が知らない間に高額な費用を請求されるリスクがあります。また、事前に契約書を交わさずにサービスを提供するケースも見られ、後になって費用トラブルが発生することもあります。

3.専門家に依頼するメリット

①法的な保障

 司法書士や弁護士といった専門家に依頼することで、法的に認められた資格者が手続きを行うため、法律に基づいた正確な手続きが保証されます。また、これらの専門家は法律に基づいた責任を負うため、トラブル発生時にも安心です。

➁高度な専門知識

 相続には税務や法務、金融など多岐にわたる知識が必要です。専門家は長年の経験と知識に基づき、依頼者にとって最適な解決策を提供することができます。例えば、相続税の適切な申告や、相続人間での公正な財産分配など、専門的なアドバイスが求められる場面での対応が可能です。

③透明な費用体系

 専門家に依頼する場合、事前に契約書を交わし、費用についても明確に説明を受けることが一般的です。これにより、後で不当な請求を受ける心配がなく、依頼者は安心してサービスを利用することができます。

④万が一のトラブルに備えての保険制度

 国家資格の士業には、万が一のトラブルに備えて、団体の補償制度に加え任意の保険に加入しているケースが多いです。何かトラブルがあったとしても、このような制度で保証してもらえるという安心感があります。

4.まとめ

 相続手続きを行う際に、民間資格を持つ者に依頼することは、手軽で費用面でも魅力的に思えるかもしれません。しかし、法的な権限や専門的な知識に欠けることが多いため、誤った情報提供やトラブルのリスクが高まります。相続手続きは人生の中でも重要なイベントであり、専門家に依頼することで正確で安心な対応を得ることができます。専門家のサポートを受けることで、法的に正確な手続きが保証され、依頼者が安心して財産を管理・分配できる環境を整えることが重要です。

参考文献

「相続診断士とは?」 日本相続診断協会

「家族信託コーディネーターの役割」 信託協会

「司法書士法の概要」 日本司法書士会連合会

「相続登記の手続きと注意点」 法務省

「相続税の申告漏れが多い理由」 税理士法人

「弁護士の役割と責任」 日本弁護士連合会

「相続手続きの費用とその内訳」 不動産ジャーナル

「相続における司法書士の役割」 法務省

「相続税の正しい申告方法」 税理士会

「弁護士の費用体系とトラブル防止」 弁護士ドットコム

最新のブログ記事

令和6年12月18日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。

司法書士試験に合格するためには、効果的な学習方法と徹底的な準備が必要です。私が合格する前年と合格年度に実施した学習法は、時間の使い方と効率的な復習を重視し、最終的には「回す道具」を整えることに集中しました。この学習法は、学習のインプットだけでなく、アウトプットを通じて知識を定着させることに焦点を当てたものです。

明治31年(1898年)7月16日から昭和25年(1950年)5月2日までの間における相続制度は、旧民法(明治民法)によって規定されていました。特に、この時代の相続制度は「家督相続」と「遺産相続」という2つの異なる制度が存在しており、家制度(家族制度)に基づく相続形態が特徴的です。

<