相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
(論点)相続手続きで重要なこと「相続人の確定」と「相続財産の確定」

相続に関する相談の中で、特に遺言書がない場合、「相続人の確定」と「相続財産の確定」が重要なステップとなります。この2つの手続きが相続登記や相続税の申告に直接関わるため、確実かつ迅速に行う必要があります。以下では、それぞれの重要性とプロセスについて説明します。
目次
1. 相続人の確定
2. 相続財産の確定
3. 相続人・財産の確定が必要な理由
4. 専門家のサポートが不可欠
まとめ
1. 相続人の確定

遺言書がない場合、相続手続きは法律で定められた「法定相続」に基づいて進められます。この際に最初に行うべきことが、誰が相続人であるかを明確にする「相続人の確定」です。これには以下のポイントが含まれます。
戸籍謄本の収集:相続人の確定には、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を集めることが必要です。これにより、配偶者や子どもがいるか、または前妻・前夫との間に子どもがいるかといった家族構成を正確に把握できます。さらに、子どもがいない場合は、両親や兄弟姉妹が相続人となるため、彼らの戸籍も調査対象になります。
法定相続人の範囲:日本の相続法では、配偶者は常に相続人となり、子ども、直系尊属(親)、兄弟姉妹がそれぞれのケースで相続人となります。このため、被相続人が複数の配偶者や子どもを持っている場合、法定相続分が複雑になることもあります。さらに、婚姻関係にない実子や養子がいる場合は、相続分が変わる可能性もあるため、慎重な確認が必要です。
2. 相続財産の確定
相続人が確定したら、次に重要なのは「相続財産の確定」です。特に、相続登記や相続税の申告において、財産の内容を正確に把握しておくことが求められます。主に不動産や現金、株式、債権などが対象となり、不動産が含まれる場合は登記手続きが必要です。
財産目録の作成:相続財産を正確に把握するためには、被相続人が持っていたすべての財産をリストアップした財産目録を作成します。この財産目録には、土地や建物、現金、預金、証券類の他、借金やローンなどの負債も含めます。これにより、相続税の申告に必要な資料が揃い、正確な財産評価が可能となります。
不動産の相続登記:不動産が相続財産に含まれている場合、相続登記を行う必要があります。相続登記は、不動産の名義を被相続人から相続人に移す手続きで、相続が発生した後、速やかに行うことが推奨されます。相続登記を怠ると、将来的に不動産の処分が難しくなったり、相続人が増えて手続きが複雑になるリスクがあります。相続人全員の同意が必要なため、事前に遺産分割協議を円満に進めることが重要です。
3. 相続人・財産の確定が必要な理由

遺言書がない場合、相続人と相続財産の確定は、後々のトラブルを避けるために不可欠です。相続人が特定できないと、遺産分割協議が進まないだけでなく、相続登記や相続税の申告も遅れ、延滞税や加算税が課されることもあります。特に、不動産に関しては、以下のようなトラブルが発生しやすいです。
共有名義の問題:不動産を複数の相続人で共有する場合、売却や賃貸などの処分が難しくなることがあります。相続人の一人が同意しなければ、売却ができないため、相続人間のトラブルにつながりやすいです。このため、相続財産を早期に確定し、遺産分割協議をスムーズに進めることが重要です。
不動産の評価:相続税の申告では、財産の評価額が重要になります。不動産の評価は、路線価や時価などに基づいて行われますが、評価方法が異なると納税額も変わるため、専門家のアドバイスを受けることが必要です。また、相続人が複数いる場合、誰がどの不動産を相続するかで相続税の負担が変わることもあるため、適切な財産分割が求められます。
4. 専門家のサポートが不可欠

相続人の確定や相続財産の確定は複雑な作業であり、法律的な知識も必要です。遺言書がない場合は、特に法的手続きや相続税の計算が煩雑になるため、早めに専門家(司法書士や税理士)のサポートを受けることが推奨されます。司法書士は相続登記の手続きを代行し、税理士は相続税の申告に関するアドバイスを提供します。
まとめ
遺言書がない相続においては、まず「相続人の確定」と「相続財産の確定」が最初の重要なステップです。相続人が確定しないと遺産分割が進まず、財産の確定ができないと相続登記や相続税の申告が遅れるリスクがあります。これらの手続きを迅速かつ正確に進めるためには、専門家の協力を得ながら、相続手続き全体をしっかりと計画することが大切です。
特に市役所や士業団体が開催している無料相談は、相談時間が30分と限られています。何度も足を運ばなくていい様に、戸籍を取得したり評価証明書を取得しなくても、ある程度確定した状態で相談をすることをお勧めいたします。

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