(論点)相続時精算課税の利用の5つの注意点

2024年08月09日

相続時精算課税制度は、高齢者が生前に財産を贈与しやすくするために設けられた制度です。しかし、この制度を利用するにはいくつかの注意点があります。以下に、相続時精算課税を利用する際の注意点を5つのポイントにまとめて説明します。

目次

1. 適用条件の確認

2. 2500万円の特別控除の理解

3. 相続時の税負担

3. 相続時の税負担

4. 不動産の贈与に関する注意点

5. 制度利用の長期的な計画

結論


1. 適用条件の確認

 相続時精算課税制度を利用するには、適用条件を満たしていることが必要です。具体的には、贈与者が60歳以上であり、受贈者が20歳以上の直系卑属(子や孫)である必要があります。また、適用を受けるためには、受贈者が「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要があります。この条件を満たしていない場合、この制度を利用することはできません。

2. 2500万円の特別控除の理解

 相続時精算課税制度では、贈与者から受贈者に対して、2500万円までの贈与については贈与税が課されません。ただし、これを超える金額については、一律20%の贈与税が課されます。この2500万円の特別控除は一生に一度限りのものであり、超過分の贈与税は申告しなければなりません。この特別控除の適用範囲や計算方法をしっかり理解しておくことが重要です。

 そして、令和6年1月1日から、年間の贈与額から110万円の控除も追加されていますので、計画的に生前贈与を行えば、110万円の控除を複数年適用を受けることができます。

3. 相続時の税負担

 相続時精算課税制度を利用すると、贈与された財産の価値は、贈与時の価値で相続財産に加算されます。相続時には、贈与時に課された贈与税額を差し引いた額で相続税が計算されます。このため、相続時に予想以上の税負担が生じる可能性があります。贈与時の財産評価額が相続時に増加する場合、相続税が高額になることを見越して、将来の税負担を考慮した計画を立てることが重要です。

 2500万円分の相続時精算課税を利用して贈与した場合の110万円は暦年贈与制度のように7年に遡っての相続財産への組み戻しはありません。

4. 不動産の贈与に関する注意点

 不動産を相続時精算課税制度で贈与する場合、その評価額を慎重に考慮する必要があります。不動産の評価額は市場価格に基づくため、贈与時と相続時で評価額が変動することがあります。特に地価が上昇している地域では、相続時に高額な評価額がつく可能性があり、結果として相続税が増加するリスクがあります。また、不動産を贈与する際には、登記費用や贈与税申告の手続きなどの追加費用も発生するため、事前にこれらの費用も考慮しておくことが重要です。

※110万円の控除(相続時精算課税制度も暦年贈与制度も含め)を有効利用するために、一度に所有権を移転するのではなく、「持分」を少しづつ計画的に生前贈与するケースもあります。詳しくは、税理士又は司法書士にご相談ください。

5. 制度利用の長期的な計画

 相続時精算課税制度を利用する際には、短期的な節税効果だけでなく、長期的な資産運用計画も考慮する必要があります。例えば、将来的に家族がどのように財産を活用するか、財産の分割方法や管理方法などを含めた総合的な資産計画を立てることが重要です。また、制度の利用を決定する前に、専門の税理士やファイナンシャルプランナーと相談し、個別の状況に応じたアドバイスを受けることも有効です。

結論

 相続時精算課税制度は、贈与者が生前に財産を子や孫に移転しやすくするための有効な手段ですが、その利用には慎重な計画と適切な判断が求められます。適用条件の確認、2500万円の特別控除の理解、相続時の税負担の予測、不動産贈与の際の注意点、そして長期的な資産計画の策定といったポイントをしっかりと押さえて、制度の利用を検討することが重要です。適切な準備と計画を立てることで、将来の税負担を軽減し、家族の財産を効果的に管理することができます。

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