(論点)遺言書に相続人への相続と遺贈の併記がある場合

2024年08月21日

遺言書に全財産の半分を相続人Aに相続させ、残りの半分をXに贈与(遺贈)するとの記載がある場合、特に不動産の登記をする場合、各ケースごとに、どのような手続きになるのかについて解説をしたいと思います。また、これらを踏まえて、専門家に相談することに優位性についてもお話をしたいと思います。

目次

1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?

2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合

3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・


1.遺贈の登記と相続登記、どちらが先に手続きをするのか?

 「全財産の2分の1は相続人Aに相続させ、残りの2分の1はXに贈与する」旨の遺言書があった場合、「遺贈」で一部移転登記を申請した後、持分全部移転の相続登記を申請する(登研523号)。

 つまり、遺贈による登記を相続登記に先んじてしなければならないという点です。相続登記と遺贈の登記は、根本的に異なる点が、「共同申請」か「単独申請」かという点です。相続登記は、単独申請であるため亡くなった名義人の住所に変更があったとしても、それを証明する資料を添付すれば、同一人認定していただけますが、遺贈の場合、「住所変更の手続」を要します。詳しいことは、専門家にご相談ください。

※遺贈の単独申請について(要件を確認してください)

 法律改正により、令和5年4月1日からは、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、その所有権の移転の登記を単独で申請することができるようになります。 なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになります。

2.相続登記後に被相続人が土地の一部を売却する契約をしていた場合

 仮に、A名義の甲土地をA死亡により、その子B及びCに2分の1づつ相続登記をした後に、実はAが生前にDに持分2分の1を売却していたという事実が判明したというもの。

 本来の事実関係からすると、A死亡時にその持分の2分の1はDのものだったということになります。これを実現しようとすると、すでに申請している相続登記は、事実とは異なる内容ということになり、抹消登記をすべきということになります。

 しかし、この場合、「B持分4分の1、C持分4分の1移転」という、すでになされている相続登記を活かし、相続人から等しい割合による持分2分の1の移転登記で、実態に合わせることが可能です。

3.もうお気づきになっているとは思いますが・・・・

 実は、不動産登記法という法律について、長年、司法書士と法務局の登記官との間で意見交換を実施して、法律に則り、実務に即した形での運用を念頭に様々な「先例」等が存在いたします。

 登記簿の全部事項証明書に記載されている内容については、実態を表現するように申請書類を準備し、実態に合った形での登記実行がなされています。

 受験生時代に、民法で法令上に則った形で実現する登記と、不動産登記法を学習した際に出てくる、「いわゆる便宜上の登記」というものを区別し、関連付けながら進めていったことを思い出します。多くの方は、この部分でつまずいているのではないでしょうか。

 また、相続登記で、ご近所の方と自分のものが微妙に異なるなんてのも、これらが関連している可能性もあります。

 そうなんです。相続登記とひとくくりにお話をしておりますが、実はお一人お一人、その対処すべき内容というのが変わってくることが多いです。ですので、専門家への相談ということが、非常に大事になってくると考えております。

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