【第2回】決議要件はどう変わる?多数決ルール徹底解説 ― 出席者多数決・所在不明者除外でマンション管理はここまで変わる ―

2026年04月21日

2026年改正の最大のポイントは、「決議のハードルが下がること」です。

これまでマンションでは
「賛成が足りないから何も決められない」
という事態が頻発していました。

改正後は、出席者多数決や所在不明者の除外制度により、合意形成が格段に進みやすくなります。

しかしその反面、
「少数意見が切り捨てられる」「決議トラブルが増える」
という新たなリスクも生まれます。

今回は、管理組合が必ず知っておくべき"多数決ルールの変更点"を具体的に解説します。

目次

1 なぜ決議が成立しなかったのか
2 従来制度の問題点
3 出席者多数決の拡大とは
4 所在不明区分所有者の除外制度
5 特別多数決はどう変わる?
6 メリットとデメリット
7 管理組合が今すぐ準備すべき実務対応
8 まとめ


1 なぜ決議が成立しなかったのか

多くの管理組合で、こんな経験はないでしょうか。

   ・総会に人が集まらない

   ・委任状が足りない

   ・反対者が数人いるだけで否決

   ・老朽化しているのに修繕が進まない

法律上は「決議制度」があるのに、現実には機能していない。

これが長年の課題でした。

特に築古マンションでは、

   ・高齢化

   ・賃貸化

   ・相続未了

   ・所有者の無関心

が重なり、出席率は50%未満というケースも珍しくありません。

これでは、多数決以前の問題として「会議自体が成立しない」のです。

2 従来制度の問題点

従来の区分所有法では、

普通決議 → 区分所有者数+議決権の過半数
特別決議 → 4分の3または5分の4

といった厳しい要件が設定されていました。

例えば100戸の場合、

建替え決議 → 80人以上の賛成

これは理論上可能でも、実務ではほぼ不可能です。

さらに、

   ・所在不明者

   ・連絡不能者

   ・相続放置

これらも「反対と同じ扱い」になるため、事実上ブレーキとして機能していました。

結果として、

少数の無関心者がマンション全体の意思決定を止めてしまう

これが最大の問題でした。

3 出席者多数決の拡大とは

今回の改正では、

「出席者ベースでの多数決」

がより広く認められる方向へ変更されます。

つまり、

これまで:全所有者基準
これから:出席者基準

に近づきます。

例えば、

総戸数100戸
出席60人

この場合、

従来 → 51票必要
改正後 → 31票で可決可能

といったイメージです。

これにより、

   ・総会が成立しやすい

   ・迅速な意思決定

   ・修繕が進む

という効果が期待されています。

まさに「動かすための改正」です。

4 所在不明区分所有者の除外制度

もう一つ大きいのが、

所在不明者を母数から除外できる制度

です。

相続放置や連絡不能者がいる場合、これまでは何もできませんでした。

改正後は、

   ・調査

   ・公告

   ・一定の法的手続き

を経ることで、その所有者を決議計算から外すことが可能になります。

これは実務上、非常に大きな変化です。

「1人連絡が取れないために全体が止まる」

この理不尽が解消されます。

老朽マンション再生の現場では、特に重要な制度になるでしょう。

5 特別多数決はどう変わる?

建替えや大規模変更についても、要件が合理化されます。

これまでの「ほぼ全員同意に近い制度」から、

「現実的に成立する水準」へ緩和されます。

これにより、

   ・建替え

   ・敷地売却

   ・大規模改修

   ・再生事業

といった選択肢が、ようやく現実的になります。

「法律がネックで何もできない」時代からの脱却です。

6 メリットとデメリット

もちろん、良いことばかりではありません。

【メリット】

   ・迅速な合意形成

   ・老朽化対策が進む

   ・管理不全の防止

   ・資産価値維持

一方で、

【デメリット】

   ・少数派が切り捨てられる可能性

   ・強引な理事会運営

   ・決議無効訴訟の増加

   ・感情的対立の激化

つまり、

「決めやすい=紛争が減る」ではない

むしろ決定スピードが上がることで、対立が顕在化するリスクもあります。

合意形成プロセスの丁寧さが、これまで以上に重要になります。

7 管理組合が今すぐ準備すべき実務対応

改正に備え、次の準備が不可欠です。

   ・所有者名簿の整備

   ・相続登記の促進

   ・所在不明者の早期把握

   ・管理規約の改正

   ・総会運営ルールの明確化

   ・専門家(司法書士・弁護士)の関与

制度が柔軟になるほど、「運営力」が問われます。

準備を怠る管理組合と、しっかり整備する管理組合とでは、将来の資産価値に大きな差が生まれるでしょう。

8 まとめ

今回の決議要件緩和は、

「止まっていたマンションを動かすためのエンジン」

です。

しかし、エンジンが強くなるほど、運転技術も求められます。

これからの時代は、

法律任せではなく、
運営力+法的知識+専門家活用

この3つが不可欠です。

次回は、所在不明者問題や相続未了問題にどう対応するか、
「所有者不明マンション対策」を詳しく解説します。

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