相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
【第2回】決議要件はどう変わる?多数決ルール徹底解説 ― 出席者多数決・所在不明者除外でマンション管理はここまで変わる ―

2026年改正の最大のポイントは、「決議のハードルが下がること」です。
これまでマンションでは
「賛成が足りないから何も決められない」
という事態が頻発していました。
改正後は、出席者多数決や所在不明者の除外制度により、合意形成が格段に進みやすくなります。
しかしその反面、
「少数意見が切り捨てられる」「決議トラブルが増える」
という新たなリスクも生まれます。
今回は、管理組合が必ず知っておくべき"多数決ルールの変更点"を具体的に解説します。
目次
1 なぜ決議が成立しなかったのか
2 従来制度の問題点
3 出席者多数決の拡大とは
4 所在不明区分所有者の除外制度
5 特別多数決はどう変わる?
6 メリットとデメリット
7 管理組合が今すぐ準備すべき実務対応
8 まとめ
1 なぜ決議が成立しなかったのか

多くの管理組合で、こんな経験はないでしょうか。
・総会に人が集まらない
・委任状が足りない
・反対者が数人いるだけで否決
・老朽化しているのに修繕が進まない
法律上は「決議制度」があるのに、現実には機能していない。
これが長年の課題でした。
特に築古マンションでは、
・高齢化
・賃貸化
・相続未了
・所有者の無関心
が重なり、出席率は50%未満というケースも珍しくありません。
これでは、多数決以前の問題として「会議自体が成立しない」のです。
2 従来制度の問題点

従来の区分所有法では、
普通決議 → 区分所有者数+議決権の過半数
特別決議 → 4分の3または5分の4
といった厳しい要件が設定されていました。
例えば100戸の場合、
建替え決議 → 80人以上の賛成
これは理論上可能でも、実務ではほぼ不可能です。
さらに、
・所在不明者
・連絡不能者
・相続放置
これらも「反対と同じ扱い」になるため、事実上ブレーキとして機能していました。
結果として、
少数の無関心者がマンション全体の意思決定を止めてしまう
これが最大の問題でした。
3 出席者多数決の拡大とは

今回の改正では、
「出席者ベースでの多数決」
がより広く認められる方向へ変更されます。
つまり、
これまで:全所有者基準
これから:出席者基準
に近づきます。
例えば、
総戸数100戸
出席60人
この場合、
従来 → 51票必要
改正後 → 31票で可決可能
といったイメージです。
これにより、
・総会が成立しやすい
・迅速な意思決定
・修繕が進む
という効果が期待されています。
まさに「動かすための改正」です。
4 所在不明区分所有者の除外制度

もう一つ大きいのが、
所在不明者を母数から除外できる制度
です。
相続放置や連絡不能者がいる場合、これまでは何もできませんでした。
改正後は、
・調査
・公告
・一定の法的手続き
を経ることで、その所有者を決議計算から外すことが可能になります。
これは実務上、非常に大きな変化です。
「1人連絡が取れないために全体が止まる」
この理不尽が解消されます。
老朽マンション再生の現場では、特に重要な制度になるでしょう。
5 特別多数決はどう変わる?
建替えや大規模変更についても、要件が合理化されます。
これまでの「ほぼ全員同意に近い制度」から、
「現実的に成立する水準」へ緩和されます。
これにより、
・建替え
・敷地売却
・大規模改修
・再生事業
といった選択肢が、ようやく現実的になります。
「法律がネックで何もできない」時代からの脱却です。
6 メリットとデメリット
もちろん、良いことばかりではありません。
【メリット】
・迅速な合意形成
・老朽化対策が進む
・管理不全の防止
・資産価値維持
一方で、
【デメリット】
・少数派が切り捨てられる可能性
・強引な理事会運営
・決議無効訴訟の増加
・感情的対立の激化
つまり、
「決めやすい=紛争が減る」ではない
むしろ決定スピードが上がることで、対立が顕在化するリスクもあります。
合意形成プロセスの丁寧さが、これまで以上に重要になります。
7 管理組合が今すぐ準備すべき実務対応

改正に備え、次の準備が不可欠です。
・所有者名簿の整備
・相続登記の促進
・所在不明者の早期把握
・管理規約の改正
・総会運営ルールの明確化
・専門家(司法書士・弁護士)の関与
制度が柔軟になるほど、「運営力」が問われます。
準備を怠る管理組合と、しっかり整備する管理組合とでは、将来の資産価値に大きな差が生まれるでしょう。
8 まとめ
今回の決議要件緩和は、
「止まっていたマンションを動かすためのエンジン」
です。
しかし、エンジンが強くなるほど、運転技術も求められます。
これからの時代は、
法律任せではなく、
運営力+法的知識+専門家活用
この3つが不可欠です。
次回は、所在不明者問題や相続未了問題にどう対応するか、
「所有者不明マンション対策」を詳しく解説します。

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