相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
【第3回】 管理組合が機能しないマンションの現実 ― 滞納・理事不足・外国人オーナー問題…法改正だけでは解決しない理由 ―

2026年の区分所有法改正により、マンションは「決めやすく」なります。
しかし、それだけで問題が解決するわけではありません。
なぜなら、管理組合の最大の問題は「法律」ではなく、
人がいない・参加しない・払わない という"運営そのものの崩れ"だからです。
理事のなり手不足、総会が開けない、管理費滞納の増加、外国人や投資オーナーの増加、民泊トラブル…。
現場ではすでに「管理組合が機能しないマンション」が現実のものとなっています。
今回は、法改正の前に知っておきたい「機能不全の実態」を深掘りします。
目次
1 管理組合が機能しないマンションが急増している
2 典型例① 理事がいない
3 典型例② 総会が成立しない
4 典型例③ 管理費滞納の連鎖
5 典型例④ 外国人・投資オーナー問題
6 典型例⑤ 民泊・短期賃貸トラブル
7 管理費値上げスパイラルの恐怖
8 法改正しても解決しない理由
9 本当に必要なのは「参加率」と「当事者意識」
10 まとめ
1 管理組合が機能しないマンションが急増している

近年、司法書士や弁護士、管理会社の現場でよく聞く言葉があります。
それが
「このマンション、もう管理組合が回っていません」
というものです。
・理事がいない
・総会が開けない
・滞納が増える
・修繕が止まる
法的には存在していても、実態としては"自治が崩壊している"。
こうしたマンションが、地方都市だけでなく、都市部でも増えています。
区分所有建物は本来「共同体」で成り立つ仕組みです。
しかし、その共同体が崩れると、制度は一瞬で機能停止します。
2 典型例① 理事がいない

最も多い相談がこれです。
「理事のなり手がいない」
・高齢化
・賃貸化
・仕事が忙しい
・責任を負いたくない
結果として、理事の押し付け合いが起こります。
中には、
「役員が決まらないから総会が開催できない」
という本末転倒なケースもあります。
理事会がなければ、
・滞納督促
・修繕計画
・業者選定
・会計管理
すべてが止まります。
管理組合は事実上の"会社"と同じです。
経営陣不在の会社が回らないのと同じ現象が起きているのです。
3 典型例② 総会が成立しない

次に多いのが総会不成立。
出席率が30〜40%程度しかないマンションも珍しくありません。
理由は単純です。
・関心がない
・委任状を出さない
・投資物件で放置
この状態では、どんな議案も決議できません。
大規模修繕も、エレベーター更新も、何も進まない。
結果、建物は老朽化し、資産価値は下がり続けます。
これが「管理不全マンション」と呼ばれる状態です。
4 典型例③ 管理費滞納の連鎖

管理費滞納は、さらに深刻です。
最初は1戸の滞納でも、やがて連鎖します。
「払わなくても大丈夫らしい」
この空気が広がるからです。
滞納が増えると、
・修繕積立金不足
・工事延期
・サービス縮小
そしてついに、
・管理費値上げ
となります。
すると、今度は支払えない人がさらに増える。
負の連鎖が始まります。
5 典型例④ 外国人・投資オーナー問題

最近増えているのが、
「所有者がマンションに住んでいない」問題
です。
・海外投資家
・遠方オーナー
・法人保有
・賃貸専用化
こうなると、
・総会に出席しない
・連絡が取れない
・管理に無関心
管理組合は「当事者」が減っていきます。
特に外国人オーナーの場合、
・言語の壁
・住所不明
・滞納時の回収困難
といった実務上の課題も発生します。
法律上の権利者でも、運営上は"幽霊所有者"になってしまうのです。
6 典型例⑤ 民泊・短期賃貸トラブル

さらに近年は民泊問題。
・騒音
・ゴミ
・治安不安
・共用部の無秩序利用
居住者とのトラブルが絶えません。
しかし規約変更をしようにも、総会が成立しない。
ルールを作れない。
結果、住環境が悪化 → 退去 → 空室増加。
これも管理不全を加速させます。
7 管理費値上げスパイラルの恐怖
最終的に起きるのがこれです。
滞納増加
↓
資金不足
↓
管理費値上げ
↓
さらに滞納増加
この「値上げスパイラル」に入ると、抜け出すのは困難です。
市場価値も下がり、「売れないマンション」になります。
実際、地方では競売でも買い手がつかない事例も出ています。
マンションは管理で価値が決まる。
これは不動産実務の鉄則です。
8 法改正しても解決しない理由
ここが重要です。
今回の区分所有法改正で、
・決議はしやすくなる
・所在不明者は除外できる
確かに制度は改善されます。
しかし、
理事がいない
参加者がいない
払う人がいない
この問題は法律では解決できません。
法律は「道具」にすぎないからです。
道具を使う人がいなければ、何も変わらないのです。
9 本当に必要なのは「参加率」と「当事者意識」

結局のところ、
マンション管理の本質は
「住民自治」
です。
・総会に参加する
・役員を引き受ける
・ルールを守る
・費用を負担する
この当たり前の積み重ねが、資産価値を守ります。
制度よりも、文化。
法律よりも、人。
これが現場で痛感する真実です。
10 まとめ
管理組合が機能しないマンションは、今後さらに増えます。
そして、
「買ってから後悔する」
人も増えるでしょう。
これからの時代は、
✔ 管理が機能しているか
✔ 参加率は高いか
✔ 滞納はないか
これを確認せずにマンション購入はできません。
問題の本質は「法律」ではなく「人」。
ここを理解することが、区分所有建物と付き合う第一歩です。
次回は、管理費滞納問題とその法的対処法(差押え・競売・実務対応)について詳しく解説します。

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