相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
第1回|日本の遺言制度の基本 ― まずは「種類」とそれぞれの特徴を正しく知る ―

結論から言うと、遺言は「種類の違い」を理解しないまま作成すると、かえって相続トラブルの原因になります。
日本には複数の遺言方式がありますが、実務で使われるのは主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。
本記事では、遺言制度の基本から、それぞれの特徴・効力・注意点までを整理し、「自分にはどの遺言が合うのか」を判断できる土台をつくります。
目次
- 遺言制度とは何か
- 遺言がないとどうなるのか(法定相続の仕組み)
- 遺言の主な種類と特徴
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- その他の遺言方式 - 遺言書の効力と「検認」という手続き
- 【比較表的まとめ】2つの遺言の違い
- 司法書士から見た「最初につまずきやすいポイント」
- よくある質問(FAQ)
- まとめ|第2回へのつながり
1. 遺言制度とは何か

遺言とは、自分が亡くなった後に、財産を誰に・どのように引き継がせるかを法的に決めておく制度です。
単なる「希望」や「メモ」ではなく、民法に基づく正式な法律行為であり、正しい形式で作成された遺言は、相続人全員の合意よりも優先されます。
👉 つまり、
**遺言は「家族へのお願い」ではなく、「法的に効力を持つ最終意思表示」**なのです。
2. 遺言がないとどうなるのか(法定相続)

遺言がない場合、相続は民法で定められた「法定相続分」に従って進みます。
例えば
- 配偶者と子がいる場合
- 不動産しか財産がない場合
- 相続人同士の関係があまり良くない場合
このようなケースでは、
「話し合い(遺産分割協議)」がまとまらず、相続が止まってしまうことが珍しくありません。
📌 よくある誤解
「家族仲がいいから遺言はいらない」
→ 実務上、もめる相続ほど『遺言がなかった』ケースが大半です。
3. 遺言の主な種類と特徴

① 自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
遺言者が、全文・日付・氏名を自分で手書きして作成する遺言です。
メリット
- 費用がほとんどかからない
- 思い立ったときにすぐ作成できる
- 内容を誰にも知られずに作れる
デメリット・注意点
- 書き方を間違えると無効になるリスク
- 内容の法的チェックが入らない
- 原則として死後に「家庭裁判所の検認」が必要
※現在は「法務局での保管制度」を使えば、
✔ 紛失防止
✔ 検認不要
といったメリットもあります(詳細は第2回で解説します)。
② 公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
公証人が関与して作成する、最も安全性の高い遺言です。
メリット
- 形式不備で無効になる可能性が極めて低い
- 原本が公証役場に保管される
- 家庭裁判所の検認が不要
- 相続手続きが非常にスムーズ
デメリット
- 費用がかかる
- 原則として証人2名が必要
- 従来は公証役場への出向が必要だった
※この「ハードル」が、2025年10月から大きく変わります(第4回で詳述)。
③ その他の遺言方式
「秘密証書遺言」なども法律上は存在しますが、
実務で使われることはほとんどありません。
👉 実際の相談現場では
「自筆」か「公正証書」かの二択と考えて差し支えありません。
4. 遺言書の効力と「検認」という手続き

自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所での検認手続きが必要です。
検認とは
- 遺言書の存在・内容を確認する手続き
- 有効・無効を判断するものではない
という位置づけですが、
時間も手間もかかるため、相続手続きが止まる原因になりがちです。
📌 ただし
法務局の自筆証書遺言保管制度を利用していれば、検認は不要になります。
5. 2つの遺言の違い(整理)
- 手軽さ重視 → 自筆証書遺言
- 安全性・確実性重視 → 公正証書遺言
- 不動産がある → 公正証書遺言が向く
- 相続人同士の関係が微妙 → 公正証書遺言が安心
6. 司法書士から見た「最初につまずきやすいポイント」

✔ 書いたけれど無効だった
✔ 遺言はあるのに使えない
✔ かえって争いの火種になった
これらの多くは、
「遺言の種類を正しく理解しないまま作成した」ことが原因です。
7. よくある質問(FAQ)

Q. 遺言は何歳から作れますか?
A. 原則15歳以上で作成可能です。
Q. パソコンで作った遺言は有効ですか?
A. 自筆証書遺言は全文自筆が原則です(例外あり)。
Q. どの遺言が一番おすすめですか?
A. 財産内容・家族構成によって異なります。
8. まとめ|第2回につづく

遺言制度の第一歩は、
「どの遺言があるか」を正しく知ることです。
次回【第2回】では、
👉 自筆証書遺言の具体的な書き方
👉 法務局保管制度の実務的なメリット・注意点
を詳しく解説します。
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