相続放棄(自分にとって都合のいい放棄はできません)

2024年05月16日

随分前になるのですが、相続放棄をしたいという相談がありました。話の中で、負動産は取得したくないが、現金預金だけもらうことはできないのかと質問されました。このようなことはできるのでしょうか?

目次

1.相続放棄とは

2.負動産はいらないが現金預金は欲しいとき

3.結局、相続放棄という制度を使うと


1.相続放棄とは

 相続放棄とは、民法で以下のように規定されています。

「(相続の放棄の方式)

第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

(相続の放棄の効力)

第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす

(相続の放棄をした者による管理)

第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。」

 つまり、相続放棄とは、民法に書かれている手続き(家庭裁判所への申述)をすることで、認められれば、当該相続において、初めから相続人ではなかったとみなされるということです。はじめから相続人ではなくなりますので、財産にせよ借金にせよ、受け取る権利、引き受ける義務、双方ともに無くなるということになります。

2.負動産はいらないが現金預金は欲しいとき

 上記の通り「相続放棄」という制度を利用した場合、相続人ではなくなるため、その相続で発生した権利義務共に負わなくてもよくなります。「借金が多い」という場合であれば、相続財産と比較して、「相続放棄」又は「限定承認」という手続きを選択することができますが、「負動産」の場合、価格がついていなくても、財産と扱われます。同じ財産で金は欲しいが不動産はいらないというわけにはいかないんですよね。相談者の中の多くは、ネットなんかで調べていて「できない」ことを知ったうえで相談してくるケースがすごく多いです。

結局、負動産を抱えて相続する場合には、周りにもらってくれる方がいた場合には贈与を検討する。しかし、周りも同じように過疎化が進んでいて、高齢化している状態では、「空き家」化してしまうこととなり、そうなってくると「相続土地国庫帰属制度」を検討するしかなくなってきます。勿論「相続土地国庫帰属制度」の対象は土地となりますので、建物を取り壊したり、引き取ってくれるような状態にできるのか考える必要があります。当然ですが、その分のコストも発生します。だって、国に管理してもらうのに「タダで」というわけにはいきませんからね。

3.結局、相続放棄という制度を使うと

 相続放棄という制度を利用すると、当該相続において、初めから相続人ではないとみなされますので、相続で発生した財産も受け取る権利は亡くなってしまいます。いくら現預金をたくさん持っていても、相続放棄をしてしまいますと、それを受け取る権利は、無くなります。

 結局、現金預金だけもらって負動産を無視することはできません。そして相続放棄という選択肢も使えなくなります。現金預金を使った段階で、相続財産を処分したということで、相続放棄をすることはできなくなります。また、一度、相続放棄を認められていても、相続財産の処分により「法定単純承認(相続人であることを認めた)」したことになり、承認された相続放棄は取り消されることになります。

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