【第4回】所有者が亡くなっていたら? 相続登記が必要になる抵当権抹消の基本ルール

2026年04月16日

住宅ローンを完済したあと、多くの方が「これで不動産の手続きは終わり」と考えます。
しかし、実務の現場ではそう単純にはいかないケースが少なくありません。

特に問題となるのが、抵当権抹消の前に所有者が亡くなっている場合です。

この場合、
「ローンは完済しているのだから、そのまま抵当権を消せばよいのでは?」
と考えがちですが、登記の世界ではそうはいきません。

所有者が亡くなっている場合、原則として
相続登記を先に行う必要があります。

第4回では、単独所有のケースを中心に、
抵当権抹消と相続登記の関係について、基本ルールを整理していきます。

目次

  1. 抵当権抹消の当事者関係をもう一度確認
  2. 登記権利者が死亡している場合の扱い
  3. 単独所有のケースの基本的な流れ
  4. なぜ先に相続登記が必要なのか
  5. 相続登記義務化との関係
  6. 読者への気づき

1.抵当権抹消の当事者関係をもう一度確認

まず、抵当権抹消登記の基本構造を確認しておきましょう。

抵当権抹消登記では、

  • 登記義務者:金融機関(抵当権者)
  • 登記権利者:不動産の所有者

という関係になります。

つまり、
金融機関が「抵当権を消します」と同意し、
所有者が「その登記を受けます」と申請する

という構造になっています。

この「所有者」が誰なのか、という点が非常に重要です。

2.登記権利者が死亡している場合の扱い

では、登記権利者である所有者が、すでに亡くなっていた場合はどうなるのでしょうか。

たとえば、

  • 所有者A(単独所有)
  • 抵当権付き不動産
  • ローン完済後にAが死亡

というケースです。

この場合、登記簿上の所有者は依然としてAのままですが、
現実にはAは亡くなっており、法律上の権利は相続人に移転しています。

つまり、
登記簿上の所有者と、実際の権利者が一致していない状態
になっているのです。

登記は、この「現実の権利関係」を反映させる制度です。
そのため、まず行うべきは、

Aから相続人への所有権移転(相続登記)
ということになります。

3.単独所有のケースの基本的な流れ

単独所有者が亡くなっている場合、手続きの基本的な順序は次のとおりです。

① 相続登記
 A → 相続人(Bなど)

② 抵当権抹消登記
 金融機関 → 新所有者B

この順序が、実務上の原則です。

もし相続登記をせずに、
亡くなったAの名義のままで抵当権抹消をしようとすると、

  • 登記権利者が死亡している
  • 本人の意思確認ができない
  • 代理関係も成立しない

という問題が生じます。

そのため、原則として
相続登記を先に行う必要がある
という結論になります。

4.なぜ先に相続登記が必要なのか

ここで、「なぜ順序にこだわるのか」という疑問が出てきます。

理由は大きく分けて2つあります。

(1)登記の当事者が存在しないから

抵当権抹消登記では、所有者が登記権利者になります。

しかし、その所有者がすでに死亡している場合、

  • 登記権利者本人が存在しない
  • 委任状も取得できない

という状態になります。

つまり、
登記申請の当事者が成立しない
という根本的な問題があるのです。

(2)登記の連続性が保たれないから

登記制度では、権利の移転は順序どおりに行う必要があります。

本来の権利の流れは、

A(死亡)

相続人B

Bが抵当権のない完全な所有者になる

という順序です。

ところが、相続登記を省略すると、

A(すでに死亡)

抵当権だけ消える

という不自然な登記の流れになります。

このような状態は、登記制度の原則に反するため、
相続登記を先に行う必要があるのです。

5.相続登記義務化との関係

さらに重要なのが、
相続登記の義務化制度です。

2024年4月から、相続によって不動産を取得した場合、

  • 相続を知った日から3年以内に
  • 相続登記を申請する義務

が課されています。

これに違反すると、
過料(行政罰)の対象になる可能性もあります。

つまり、

  • 抵当権抹消のために相続登記が必要
  • そもそも相続登記自体が義務化されている

という二重の意味で、
相続登記は避けて通れない手続きになっているのです。

6.読者への気づき

今回のポイントをまとめると、次のようになります。

  • 抵当権抹消の登記権利者は所有者
  • その所有者が死亡している場合
  • 先に相続登記が必要になる

つまり、

「ローンを完済しただけでは終わらない」

ということです。

完済後も、

  • 抵当権抹消
  • 相続登記
  • 名義の整理

といった手続きをきちんと行っておかないと、
将来の売却や相続の際に大きな負担となってしまいます。

次回は、
共有者の一人が亡くなっていた場合という、
さらに実務で悩ましいケースについて解説していきます。

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