相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
第2回:「子どもたちがもめる理由」──遺言で防げる3つのズレ

「うちの子どもたちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、相続をきっかけに関係がぎくしゃくしてしまうケースは少なくありません。
実は、"お金"ではなく、"思いのズレ"が争いを生みます。
今回は、司法書士の立場から、遺言で防ぐことができる「3つのズレ」について、やさしく解説します。
📖目次
- 相続トラブルは「お金」ではなく「気持ちのズレ」から始まる
- ズレ① "公平"と"平等"を混同してしまう
- ズレ② 家族の「情報格差」が不信感を生む
- ズレ③ 「親の想い」が伝わっていない
- 遺言書が"ズレ"を埋める3つの効果
- まとめ:家族の絆を守るための「伝える勇気」
1. 相続トラブルは「お金」ではなく「気持ちのズレ」から始まる

司法書士として相続の現場を見ていると、
「兄弟が財産を取り合った」というような単純な争いは、実はそう多くありません。
多くの場合、その背景には**"感情のズレ"や"認識のズレ"**があります。
たとえば、
- 親の介護を一番していた長女が「少し多くもらってもいい」と思っている。
- 一方で、他の兄弟は「親の遺産は平等に分けるのが当然」と考えている。
両者とも"悪気がない"のです。
でも、「なぜそう考えるのか」が共有されていないために、誤解が生まれ、関係がこじれてしまう。
遺言書は、そうした"考え方のズレ"を事前に埋める、いわば家族の調整書のような役割を果たします。
2. ズレ① "公平"と"平等"を混同してしまう

日本では「子どもはみんな平等に相続するべき」という考えが根強くあります。
しかし、実際の家庭にはそれぞれの事情があり、平等=公平とは限りません。
たとえば──
- 長男は実家の土地の管理や法要の段取りを担っている。
- 長女は遠方に住んでおり、普段の介護や家の維持には関わっていない。
こうした状況で遺産を「きっちり1/2ずつ」にしても、
「自分ばかり負担してきたのに…」という思いが残ってしまうことがあります。
遺言書は、単なる分け方の指示ではなく、
「日ごろの感謝を込めて、実家は長男に託します」
という**"気持ちのメッセージ"**を添えることで、家族が納得しやすくなります。
公平と平等を整理して伝える──それが"争族"を防ぐ第一歩です。
※平等を前面に出し、話し合いをこじらせるケースが多いです。平等を突き詰めれば、不平等になります。平等は一端置いておいて、話し合いに臨みましょう。
3. ズレ② 家族の「情報格差」が不信感を生む

相続では、「知らなかった」「聞いていない」がトラブルの種になります。
たとえば、
- 不動産の名義が誰になっているかわからない
- 生命保険の受取人を家族が知らない
- 預金通帳がどこにあるかわからない
こうした"情報の非対称"が、「何か隠しているのでは?」という不信感を生みます。
相続は"信頼の上に成り立つ手続き"です。
遺言書には、財産の一覧や意図を記しておくことで、
「すべてオープンにしてくれていた」という安心感を残すことができます。
司法書士としては、財産の整理リストを作りながら
「これはどこにある」「この不動産は誰に引き継いでほしい」
と、可視化する作業をおすすめしています。
※ただし、現預金については、相続の時にいくらになるのかはわかりません。まずは、不動産や有価証券、保険などから手を付けていきましょう。
4. ズレ③ 「親の想い」が伝わっていない

もっとも大きなズレは、「なぜそうしたのか」という親の気持ちが伝わっていないことです。
子どもたちは「遺産の分け方」よりも、「親がどう考えていたか」を知りたいのです。
たとえば、
- 「兄が家を継いでほしい」という思い
- 「妹には介護で苦労をかけたから、少し多く渡したい」
こうした"意図"が言葉で残されていれば、たとえ金額に差があっても、
「そういう想いだったのなら納得できる」と受け入れやすくなります。
反対に、何の説明もないまま遺言がなかった場合、
「自分だけ冷遇された」と誤解されてしまうことも。
遺言書には、「なぜそうしたのか」という心情を添えることが何よりも大切です。
5. 遺言書が"ズレ"を埋める3つの効果

遺言書を残すことで、次のような「3つの効果」が期待できます。
① 不安を減らす
相続の方向性が明確になるため、家族が迷わず行動できます。
「どうしたらいいの?」という不安を減らし、心理的な負担を軽くします。
② 不信をなくす
財産や意図をきちんと明文化しておくことで、「不公平感」「隠し事」の疑念が解消されます。
③ 絆を残す
親がどんな気持ちで家族を思っていたかを伝えることで、
「家族を大切にしてほしい」という願いそのものが形として残ります。
遺言書は、家族のズレを埋める"心の設計図"。
それは法的な効力以上に、「想いを伝える手紙」として価値があります。
6. まとめ:家族の絆を守るための「伝える勇気」
「もめるような財産なんてないから」と思う方ほど、
実は"心のズレ"が原因で、関係が悪くなるケースがあります。
遺言は、財産の多い少ないに関係ありません。
家族への思いを「伝えるか」「伝えないか」。
その違いが、数年後の家族の関係を大きく左右します。
"伝える勇気"を持って、家族の未来を守る。
それが、司法書士として私たちが一番お伝えしたいことです。

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