(論点)不動産を含む遺産分割の方法とその注意点

2025年05月02日

相続において、遺産の中に現金や預金といった流動性の高い財産が含まれている場合、それを相続人間で分けるのは比較的容易です。しかし、遺産に不動産が含まれている場合は、流動性が低いため、相続人同士でどのように分割するかを慎重に検討する必要があります。不動産は、個々の相続人が物理的に分けることができないため、分割方法に迷うことが多く見られます。本稿では、不動産を含む遺産分割における具体的な方法と、それぞれのメリット・デメリットについて解説し、スムーズな相続を進めるためのポイントをまとめます。

目次

  1. 遺産分割の基本とは
  2. 不動産の遺産分割における選択肢
     2.1 換価分割のメリットとデメリット
     2.2 代償分割のメリットとデメリット
     2.3 共有分割のリスク
     2.4 現物分割の実際
  3. 不動産分割における実務上の注意点
  4. まとめ

1. 遺産分割の基本とは

 遺産分割とは、相続人全員で亡くなった人の財産をどのように分けるかを話し合い、合意することを指します。この遺産分割協議は、全ての相続人の合意が必要であり、合意が得られた場合はその内容を「遺産分割協議書」にまとめます。この協議書が公正かつ適切に作成されていないと、後々法的な問題が生じることもあります。

 遺産分割の対象となる財産には、現金や預金、不動産、株式、債券、その他の有価証券などがあります。特に不動産の分割は、その性質上物理的に分けることが難しいため、慎重な対応が求められます。次章では、不動産の分割方法について詳細に解説します。

2. 不動産の遺産分割における選択肢

 不動産を相続する場合、物理的に分割することができないため、主に以下の4つの方法で分割が行われます。

2.1 換価分割のメリットとデメリット

 不動産を売却し、その売却代金を相続人間で分ける方法を「換価分割」といいます。この方法は、相続人間で不動産を実際に共有することなく、現金として遺産を分けられるため、公平かつシンプルです。しかし、不動産の売却には時間がかかることがあり、売却価格が期待通りにならないリスクも伴います。相続税の支払期限が迫っている場合には、売却が間に合わない可能性もあるため、事前に売却のスケジュールを考慮する必要があります。

2.2 代償分割のメリットとデメリット

 「代償分割」とは、特定の相続人が不動産を単独で取得し、その代わりに他の相続人に対して相続分相当額の現金などを支払う方法です。この方法では、相続人の一人が不動産を引き継ぎたい場合に有効です。しかし、代償金の支払い能力があることが前提となるため、取得者の財政状況によっては難しい場合もあります。また、代償分割により取得者が一人で不動産を維持する負担が増すことも考慮すべきです。

2.3 共有分割のリスク

 「共有分割」は、不動産を複数の相続人で共有する方法です。一見して公平な方法のように思えますが、後々のトラブルの種となることが多いため、注意が必要です。不動産を共有したままにすると、売却や賃貸などの意思決定に時間がかかり、全員の同意を得ることが難しくなります。また、修繕費用や固定資産税の支払いを誰が負担するかなど、運用面でも課題が生じます。さらに、共有者の一人が亡くなった場合には新たな相続が発生し、さらに複雑化することが多いです。

2.4 現物分割の実際

「現物分割」は、不動産の一部をそれぞれの相続人に分け与える方法です。たとえば、一つの土地を物理的に分割して、それぞれの相続人が所有することが可能です。しかし、土地の位置や価値が不均等になりやすく、不公平感が生じることもあります。また、実際に土地を物理的に分割するには測量費用や行政手続きが必要で、時間とコストがかかります。そのため、現物分割ができるかどうかは、状況に応じて判断する必要があります。

3. 不動産分割における実務上の注意点

 不動産の遺産分割において、いくつかの注意点があります。まず、遺産分割協議が成立してから、不動産の名義変更(相続登記)を速やかに行う必要があります。相続登記を怠ると、後々の売却や貸借が困難になるばかりか、相続人が増えることでさらに手続きが複雑化するリスクもあります。

 また、不動産の評価額は時間とともに変動することがあるため、遺産分割のタイミングで適切な評価を行うことが重要です。専門家に依頼して不動産の鑑定評価を受けることで、相続人間の不公平を防ぐことができます。

 さらに、不動産に関わる固定資産税や管理費用についても、事前に相続人間で取り決めておくことが大切です。これらの費用が誰の負担になるのかを曖昧にしておくと、後にトラブルが発生する可能性があります。

4. まとめ

 不動産を含む遺産分割は、現金や預金と異なり複雑な側面があります。適切な分割方法を選択し、相続人全員が納得する形で話し合いを進めることが大切です。換価分割や代償分割、共有分割など、状況に応じた方法を選択し、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、後々のトラブルを回避することができます。また、不動産の評価や管理に関する事前の取り決めも忘れずに行い、スムーズな相続を実現しましょう。

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