財産目録がない状態で任意後見が開始された場合、本人の財産がどの程度存在していたのか、どの資産がどれだけ減少したのかを証明する手段が限られます。例えば、家族が「何かおかしい」と感じても、財産の移動や減少が不審であるかどうかを確認するのが難しくなります。
財産目録が存在すれば、後見が開始された時点の財産状況と現在の状況を比較することで、不正な取引や不審な財産移動がないかを検証できます。しかし、財産目録がない場合は、このような証拠を確保する手段がなく、不正が行われていたとしても、それを証明することが非常に困難になります。
例えば、本人が判断能力を失う前に不正な取引が行われていた場合、財産目録がなければその不正を証明するための証拠が不足し、後見人や家族が取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。結果として、本人の財産が不正に減少していたとしても、それを追跡し、適切な対処を行うことができなくなります。
さらに、財産目録がないことで、後見人が適切な財産管理を行っていたかどうかの判断も困難になります。家族や関係者が後見人の行動を監視・評価する際に、財産目録がないと透明性が欠如し、後見人に対する信頼が揺らぐ可能性があります。
4. 結論
任意後見契約において財産を開示することは、後見人が適切に本人の財産を管理し、本人の生活を守るために不可欠な手続きです。財産目録を作成しない契約も可能ですが、その場合、将来的に財産管理に問題が生じた際に、それを証明する手段がないため、リスクが高まります。したがって、任意後見契約を締結する際には、可能な限り財産目録を作成し、後見人が適切に業務を遂行できるような体制を整えることが重要です。