(論点)相続人確定における立ちはだかるハードル

2025年03月05日

相続手続きを円滑に進めるためには、まず相続人の範囲を確定することが必要です。しかし、状況によっては相続人の確定が難航し、手続きが大幅に遅れることもあります。特に、前妻との子供が存在する場合や、長期間にわたって相続登記が行われていない場合など、調査が複雑化するケースでは、相続人を確定することが難しい課題となります。本記事では、相続人確定に立ちはだかるハードルとその具体的な例について説明します。

目次

1.相続人の確定における一般的な手続き

2.前妻との子供の存在による相続調査の複雑化

3.相続登記の未了がもたらす問題

4.相続人確定における具体例と対策

5.まとめ


1. 相続人の確定における一般的な手続き

 通常の相続において、相続人の確定は比較的容易です。基本的な流れとしては、被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本を調査し、相続人の範囲を確認します。相続人は民法に定められた順位に基づいて決定され、子供、配偶者、直系尊属(親など)、兄弟姉妹が相続人となります。

 被相続人の戸籍謄本を辿り、家族構成を確認することで、法定相続人を確定することができます。一般的な家族構成であれば、この調査はスムーズに進みます。しかし、複雑な家庭環境や、相続登記の未了などの状況があると、相続人の確定は一気に難易度が上がります。

2. 前妻との子供の存在による相続調査の複雑化

 特に問題となるのが、被相続人が再婚しているケースです。再婚前の配偶者との間に子供がいる場合、その子供も法定相続人となります。再婚後の家庭でその子供の存在が知られていない場合や、長期間連絡が取れていない場合、相続人の確定は一筋縄ではいきません。

前妻との子供との関係性

 前妻との子供が法定相続人であることを認識していても、その子供との連絡が途絶えている場合や、所在が不明な場合は、戸籍を追跡する必要があります。戸籍の追跡には時間がかかる上、場合によっては海外に移住しているケースもあり、さらに複雑化します。加えて、被相続人が認知していない非嫡出子が存在する場合、その調査は困難を極めます。

3. 相続登記の未了がもたらす問題

 相続手続きにおいて、もう一つ大きなハードルとなるのが、長期間相続登記が行われていない場合です。これにより、現在の法定相続人が誰なのかを確定するのが難しくなります。

何代にもわたる相続登記の未了

 特に問題となるのが、何代にもわたって相続登記が未了のまま放置されているケースです。このような場合、被相続人の遺産が、既に亡くなっている先代の相続人たちに帰属している可能性があります。この場合、先代の相続人の相続手続きも同時に行わなければならず、手続きは非常に複雑化します。

 例えば、曾祖父の代から相続登記が行われていない土地があった場合、その土地の相続人は、曾祖父の子供、孫、曾孫にまで及ぶことがあり、全ての相続人を確定するのは困難を極めます。

4. 相続人確定における具体例と対策

具体例1: 前妻との子供が相続人であった場合

 Aさんが亡くなり、相続人として現在の配偶者と子供が確認されました。しかし、調査の過程でAさんには前妻との間に子供がいることが判明。この子供が長年Aさんと連絡を取っていなかったため、戸籍を遡り、所在を確認する必要が生じました。この場合、最初にAさんの戸籍をすべて取り寄せ、再婚前の戸籍に遡って調査を行うことが不可欠です。場合によっては、家庭裁判所に申立てを行い、失踪宣告の手続きを取ることも検討されます。

具体例2: 相続登記が未了の土地の相続人確定

 Bさんが相続することになった土地は、曾祖父の代から相続登記が行われていないことが判明しました。この土地の相続人を確定するためには、Bさんの親や祖父母、その兄弟姉妹に至るまで、相続人全員の調査が必要となりました。結果として、数十人に及ぶ相続人が確認され、各相続人の同意を得てようやく相続登記を完了させることができました。

5. まとめ

 相続人の確定は、単純なケースでは比較的容易に進むものの、再婚や長期間の相続登記の未了など、複雑な事情が絡むと一気に難易度が増します。前妻との子供の存在や、相続登記が行われていない場合は、時間と労力を要することを覚悟する必要があります。相続手続きをスムーズに進めるためには、戸籍調査や法的手続きを的確に行い、必要に応じて専門家に相談することが重要です。

 今まで、多くの相続に携わりましたが、一つとして同じ相続はありません。似ていることはあっても、全く同じということはまずないです。つまり、相続は個々の事情によるオーダーメードのような対応が必要になります。

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