相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
生前贈与の勘違い|「毎年110万円までなら大丈夫」が危険な理由

「毎年110万円ずつ子どもに贈与しています。」
相続相談の際によく耳にする言葉です。
生前贈与は相続対策として広く知られています。
しかし実際には、
制度を正しく理解しないまま行われているケースも少なくありません。
その結果、
「贈与したつもりだったのに認められなかった」
「税金がかかるとは思わなかった」
「兄弟間のトラブルになった」
という問題が起きることがあります。
生前贈与は確かに有効な対策の一つです。
しかし、
万能な方法ではありません。
大切なのは、
税金だけで判断するのではなく、
家族全体の未来を考えることです。
今回は、
「生前贈与の勘違い」
をテーマに、
未来設計(相続・生前対策)の観点から解説します。
目次
- 生前贈与が注目される理由
- 「110万円まで非課税」の誤解
- 名義預金という落とし穴
- 相続時精算課税制度とは
- 贈与だけでは解決できない問題
- 未来設計として考える生前贈与
- まとめ|贈与は手段であって目的ではない
1. 生前贈与が注目される理由

生前贈与とは、
生きている間に財産を家族へ移転することです。
相続を待たずに財産を渡せるため、
昔から相続対策として活用されてきました。
例えば、
- 子どもの住宅取得資金
- 孫の教育資金
- 将来の生活支援
など、
家族のために早く財産を活用できるというメリットがあります。
また、
相続財産を減らすことで、
相続税対策になる場合もあります。
そのため、
「とりあえず贈与しておこう」
と考える方も少なくありません。
しかし、
そこにはいくつかの注意点があります。
2. 「110万円まで非課税」の誤解

最も多い勘違いが、
「毎年110万円までなら絶対に大丈夫」
という考え方です。
確かに、
暦年課税制度では年間110万円の基礎控除があります。
しかし、
それだけで安心とは言えません。
例えば、
毎年同じ時期に、
同じ金額を、
同じ人へ渡している場合です。
最初から
「10年間で1,100万円を贈与する」
という約束があったと判断されると、
一括贈与とみなされる可能性があります。
税務上の評価は、
単純な金額だけで決まるものではありません。
実態が重要なのです。
3. 名義預金という落とし穴

実務上よく問題になるのが、
名義預金です。
例えば、
親が子ども名義の通帳を作り、
お金を積み立てていたケースです。
親としては、
「子どもに贈与したつもり」
かもしれません。
しかし、
- 通帳を親が管理している
- 印鑑を親が保管している
- 子どもが存在を知らない
という状況では、
税務上は親の財産と判断される可能性があります。
つまり、
相続財産として扱われることがあります。
単に名義を変えただけでは、
贈与にならないこともあるのです。
4. 相続時精算課税制度とは

近年利用が増えている制度の一つに、
相続時精算課税制度があります。
一定の条件のもとで、
まとまった財産を贈与しやすくする制度です。
ただし、
名前のとおり、
最終的には相続時に精算する仕組みです。
つまり、
「完全な相続税対策」
とは限りません。
制度の選択によっては、
将来の税負担や手続きが変わることがあります。
そのため、
制度だけで判断するのではなく、
家族全体の状況を踏まえて検討することが重要です。
5. 贈与だけでは解決できない問題

生前贈与を行っても、
すべての問題が解決するわけではありません。
例えば、
実家の不動産です。
現金は分けやすいですが、
不動産は簡単には分けられません。
また、
特定の子どもだけに贈与を行うと、
他の相続人との間で不公平感が生じることもあります。
さらに、
認知症になった場合には、
新たな贈与自体が難しくなることもあります。
つまり、
生前贈与は相続対策の一部に過ぎません。
6. 未来設計として考える生前贈与

アイリスが提唱する
「未来設計(相続・生前対策)」
では、
生前贈与を単独で考えません。
重要なのは、
- 家族構成
- 財産の内容
- 不動産の有無
- 認知症リスク
- 相続人同士の関係
などを総合的に考えることです。
場合によっては、
遺言書の方が適していることもあります。
家族信託が有効なケースもあります。
つまり、
贈与ありきではなく、
家族にとって最適な方法を選ぶことが大切なのです。
7. まとめ|贈与は手段であって目的ではない

生前贈与は有効な制度です。
しかし、
「110万円までなら安心」
「とりあえず贈与しておけば大丈夫」
という考え方は危険です。
本当に大切なのは、
税金を減らすことだけではありません。
家族が安心して暮らせる仕組みを作ることです。
未来設計とは、
財産を減らすことではなく、
家族の未来を整えることです。
生前贈与も、
そのための一つの手段として考えることが重要ではないでしょうか。
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