公正証書遺言がビデオ通話で作成可能に(令和7年ごろ)

2023年07月03日

令和7年ごろ、公正証書遺言がビデオ通話で作成可能になるということが発表されました。現状、公正証書遺言を作成するためには、公証人とじかに合う必要があります。私が受任した公正証書遺言書の作成も、施設や病院に入院されている場合で面会謝絶状態だった時には大変苦労いたしました。このような状況でもビデオ通話で公証人と会うことが許されれば、飛躍的に活用しやすくなりますね。それでは解説していきます。

目次

1.公正証書遺言について

2.現状の公正証書遺言書作成の流れ

3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成

4.「公証人が相当と認めるとき」とは

5.ビデオ通話で問題のないケースについて

6.まとめ


1.公正証書遺言について

 公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことです。費用は掛かってしまいますが、自分で書く遺言書(自筆証書遺言書)より、以下の点でお勧めです。

 ①公証人が関与するので形式面での無効になる可能性がまずありません。

 ➁内容が不明瞭で相続手続きに支障が出る可能性も低いです。

 ③公証役場委に返本が保管されているので、紛失リスクがありません。

 ④相続開始後に家庭裁判所の検認手続きが不要。

2.現状の公正証書遺言書作成の流れ

 ①公証役場で相談する。(士業等にサポートを依頼する場合は士業等に相談して下さい。士業が代理人として公証役場との打ち合わせ等をいたします。)

 ➁必要書類意を取得する。

 ③予約の上、公証役場に実印をもって臨む。(実印での証明には、印鑑証明書が必要となります。)

  ※証人2人が必要。(士業サポートの場合、士業の方で証人をそろえていただくことも可能です。また、公証役場にお願いをすれば、証人の手配をしていただけます。)

 ※ここからは、公証役場で当日実施する内容です。

 ④遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述(証人以外は同席することはできません。)

 ➄公証人が遺言者の現行を読み聞かせを実施。

 ⑥遺言者と証人が署名押印(遺言者は実印で押印)

 ⑦公証人が署名押印

 ⑧公証人手数料を支払って、公正証書遺言の正本・謄本をもらう。

3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成

 令和5年6月6日、改正法が成立し、令和5年6月14日公布されております。そして、公布から2年6か月以内の政令で定める日が施行日となりますので、おそらく令和7年ごろからの開始となりそうです。

 改正後は、公証人の面前での手続きについて、遺言者が希望し、公証人が相当と認めるときは、ビデオ通話を利用できるということになっています。この場合の本人確認は、マイナンバーカードの電子証明書が利用されることになっております。

4.「公証人が相当と認めるとき」とは

 公証人が相当と認めるときとは、いったいどんな時なのかという疑問がわいてきますね。こちらについては、「法務省 公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会」の資料によると、「必要性と許容性とを総合的に勘案して判断」するそうです。これまた、よくわからない表現になっています。

 必要性とは?(必要性で問題とならない場合)

 ①心身の状況や就業状態等により公証役場に出向くのが難しい場合

 ➁公証役場委に行くのが困難な地域

 ③感染予防のため施設や病院に外部の人が入れない状態

などが挙げられます。

 許容性とは?(許容性で問題となる場合)

 ①本人確認、意思確認をビデオ通話でも問題なくできない。

 ➁遺言能力について問題となりやすい高齢者。

 ③遺言能力に影響を及ぼす可能性のある病気・症状の診断を受けている。

 ④合理的な理由なく一部の相続人に全財産を相続させる遺言内容。

 ➄公証人への事前相談が遺言内容に利害関係を有する一部の親族を通じてされている。

このような場合には、公証役場も後々にもめることを考慮して慎重に許容性を判断することになります。

5.ビデオ通話で問題のないケースについて

 ①事後的に紛争になる可能性が低い

 ➁中年層が遺言者

 ③相続人のいない遺言者が慈善団体に遺贈する場合

 ④高齢者であっても医師の診断書で判断能力が十分であることを確認できる場合。

などです。

6.まとめ

 ビデオ通話を利用した公正証書遺言書の作成は、令和7年頃より開始される予定です。ただし、どのような場合でもビデオ通話による作成が可能になるわけではなく、「公証人が相当と認めること」が必要です。この時の判断基準は、後に紛争になる可能性が高いか低いかとしている可能性があります。これから詳しい内容が出てくると思いますので、その時には、また取り上げたいと思います。

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