相続対策(生前、妻に自宅を贈与)

2024年04月15日

先日、ニュース記事で「妻に自宅を贈与する」記事が出ていました。贈与税を念頭に贈与を検討していました。婚姻期間20年超の夫婦間の配偶者へ住宅又は住宅を取得するための資金を贈与した場合の特別控除があります。果たして、これだけで問題がないのでしょうか?また、生前贈与した自宅を相続発生時に「みなし相続財産として持ち戻し」の対象になるのかについて、お話をしたいと思います。

目次

1.夫婦間で20年以上の期間の贈与税の控除額

2.記事「「結婚後20年経てば贈与税がかからない」は本当か?」(健美家記事引用)

3.司法書士の答え(健美家記事引用)

4.生前自宅が贈与されていた場合、みなし相続財産として持ち戻しされないのか?

5.まとめ


1.夫婦間で20年以上の期間の贈与税の控除額

 戸籍上、夫婦としての婚姻期間が20年以上経過していれば、配偶者へ住宅又は住宅を取得するための資金を贈与した場合、2000万円まで(基礎控除110万円と合わせれば2110万円まで)贈与税がかからないことになっています。 同じ配偶者から一生に1回だけ認められる非課税特典です。

 つまり、贈与税という観点から見れば、自宅が2110万円以内であれば、贈与税は発生しませんが、要件があります。

 ①夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

 ➁配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること

 ③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

要件クリアしても、贈与する金額が2110万以下だった場合は、贈与税は0円となりますが、必ず申告期限(贈与を受けた翌年3月15日)までに贈与税の申告書を税務署に提出する必要があります。

2.記事「「結婚後20年経てば贈与税がかからない」は本当か?」(健美家記事引用)

 それでは、記事に書かれていた内容を見ていきましょう。(健美家記事引用)

「(略)令和4年末に住宅ローンを完済しました。

そして、住宅ローンを完済したタイミングで自宅を妻に贈与しようと考えました。

自宅を贈与する目的は、私の不動産投資に何かあっても妻と家族に自宅を残すためです。不動産投資が上手くいかなくなった時に、自宅が任売や競売になるのは、妻や家族には大変申し訳ない事になります。

私は、毎月税理士事務所に打ち合わせに行っていますが、以前、税理士さんが、「結婚して20年過ぎると、配偶者に自宅を贈与しても税金がかからない」と言っていたのを覚えていたことも、後押しになりました。」(引用終わり)

 おそらく、この方の物件も要件を充たしていたため贈与税はかからなかったのでしょう。

 しかし、不安なようで司法書士にも相談してみたいですね。

3.司法書士の答え(健美家記事引用)

「(略)とりあえず司法書士さんに相談することにしました。

25年以上前に自宅の登記でお世話になり、現在は収益物件の登記でお世話になっている司法書士さんです。司法書士さんから最初に出てきた言葉は、「本当にやるんですか?」と、いうものでした。

司法書士さんは、明らかにこの贈与の話を思い留まらせようとしていました。詳しく説明を聞くと、無税なのは贈与税だけで、不動産取得税と登録免許税は、普通にかかるという事です。

さらに司法書士費用も必要で、妻への自宅の贈与にかかる費用は、総額で40万円くらいという話でした。不動産取得税、登録免許税、司法書士費用という言葉は、収益物件の購入ではよく聞く言葉ですが、自宅となると全く頭から抜けていました。

司法書士さんは、再確認するように、「本当に贈与税の免除のためだけに40万円もかけるんですか?普通はやりませんよ」と、真顔で聞いてきました。」(引用終わり)

 総額40万円というのは、物件価格(固定資産税評価額)によって変わってきます。

 まずは、所有権の名義を変更するために必要な「登録免許税」があります。贈与ですと1000分の20ですが、相続で行う場合、1000分の4となります。贈与の時の5分の1ですよね。

 また、これだけではありません。相続の場合、配偶者控除として1億6千万円の枠があります。

 生前に贈与する場合、自身の相続後の二次相続対策のケースが圧倒的に多いです。なぜなら、もらった配偶者に相続が発生した(二次相続)では、相続の配偶者控除1億6千万円が使えなくなってしまうためです。同じ相続で不動産の名義変更を予め子供にしておくことで、配偶者の相続発生時に相続税がさらに発生してしまうことを嫌う方が多いためです。

※相続税のご相談は税理士に確認してください。

4.生前自宅が贈与されていた場合、みなし相続財産として持ち戻しされないのか?

 それでは、生前に配偶者へご自宅を贈与してしまったのちに相続が発生し、みなし相続財産の適用で持ち戻しが発生するのかどうかについて解説します。

「民法第903条第4項

婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」

とあります。つまり今回のケースのように、生前、配偶者に自宅を贈与していても、相続財産の持ち戻し(贈与でもらった住宅を相続財産とすること)は、発生しないことになります。

5.まとめ

 今回は、配偶者に自宅を生前贈与した場合について、事例を交えてお話をいたしました。

 仮にアイリスに同様のご相談があった場合、情報はすべて開示して、最終判断は、相談者の方に決めていただいております。今まで同じような相談が何件かありましたが、半数の方は費用の面でやめられる方がいました。一方で、そのまま進められる方もいらっしゃいました。どちらの方も、その後の相続対策について、熱心に相談されていました。

 相続対策は、きっかけがないとなかなか進められないものです。このように何か一つでも、きっかけがあれば、対策をすることができます。

 アイリスでは、相続関連(相続登記だけでなくその生前対策も)の無料相談を随時受け付けております。いろいろとお話を聞くために、あえて時間設定は設けておりません。ただし、予約優先となりますので、必ず事前にお電話で予約をしてください。手続きが発生するまでは、相談の費用は掛かりません。(登記の方法を教えてほしい等、ノウハウを相談事項とする方は、ご遠慮ください)

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