「相続登記はしなくていい」は本当?現場で起きた“誤解”と義務化の本当の意味
2024年4月1日から相続登記は義務化されました。しかし現場では「固定資産税を払っていれば大丈夫」「登記は不要」といった誤解が今も残っています。本記事では、実際の相談事例をもとに、相続登記義務化の正しい理解と注意点を司法書士の視点で解説します。香川県高松市を中心に、生前対策・相続対策を検討されている方はぜひご覧ください。

生前対策のご相談で多いのが、「通帳を子どもに見せられない」「任せるのが不安」という声です。
財産の問題と思われがちですが、実は"心の整理"の方が難しいことも。
今回は、実際のご相談をもとに、家族の信頼関係を取り戻したお話を紹介します。
■目次
1. 親子でも「見せられない」お金の話

「母が通帳を隠していて、全く見せてくれないんです。」
そんなご相談を受けたのは、高松市に住む50代の男性からでした。
お母さまは80歳を超え、足腰も少し弱くなってきた頃。
買い物や公共料金の支払いなども少しずつ息子さんが手伝うようになっていました。
ところが、ことお金の話になると、途端に顔を曇らせるのです。
「息子に任せたら、全部取られてしまうかもしれない」──そう感じていたようでした。
息子さんは困惑していました。
「別に財産を欲しいわけじゃない。
ただ、もし母が倒れた時、何も分からないと手続きができないから…」
親子の間に"信頼の壁"ができていたのです。
2. 通帳を手放せない"本当の理由"

お母さまのご自宅を訪問し、ゆっくりとお話を伺うと、理由が見えてきました。
かつてご主人を亡くした後、預金の名義変更や相続の手続きで苦労された経験があったのです。
「銀行の人が難しい言葉を使って、何が正しいのか分からなかった」
「それ以来、誰にも通帳を見せないようにしてきたの」
つまり、"通帳を手放せない"のは、お金への執着ではなく、
「過去の不安」や「誰かに迷惑をかけたくない」という想いが根底にありました。
私が司法書士として感じたのは、
生前対策の本当の壁は"制度"や"法律"よりも、"心の安心"だということです。
3. 司法書士としてできたこと

私はまず、専門用語を使わずに説明しました。
「通帳を預ける」のではなく、「使う範囲を一緒に決める」こと。
「権限を渡す」のではなく、「信頼を文書にして残す」こと。
具体的には、任意代理契約と見守り契約を組み合わせ、
お母さまが「自分の意思で決めた」と感じられるように手続きを進めました。
手続きの中で、私はこう尋ねました。
「どんな時に、息子さんに助けてもらいたいですか?」
すると、お母さまは少し笑って、
「病院の支払いくらいかな。でも、困ったら相談できるようにしておきたいね」と。
その一言で、息子さんの表情も和らぎました。
「母が自分で決められたのが一番うれしいです」と言われたのを、今も覚えています。
4. 「財産管理=支配」ではなく「安心の共有」

多くのご家庭で、「お金の管理を任せる=支配される」という誤解があります。
しかし、司法書士が介在することで、
"ルールを文書化することで安心を見える化"できるのです。
これは、法律的な安心だけでなく、
「家族の関係を壊さずに支える」ための設計でもあります。
生前対策とは、**「お金をどうするか」ではなく、「人をどう守るか」**の話。
お母さまの通帳を通して、私は改めてその原点を感じました。
5. 専門家が伝えたい、生前対策の本質

このケースは特別なことではありません。
「まだ元気だから大丈夫」
「子どもには迷惑をかけたくない」
そう思う方ほど、実は準備が遅れがちです。
生前対策を"財産の整理"と考えると重たく感じますが、
"安心を見える形にする"と思えば、前向きな一歩になります。
司法書士として大切にしているのは、
依頼者が「自分の意思で選んだ」と感じられるサポートです。
手続きの代行ではなく、"人生の選択を支える伴走者"でありたい──
そう思いながら、日々ご相談をお受けしています。
6. まとめ:お金よりも"信頼"を残す終活を
お母さまは、最終的に通帳のコピーを息子さんに渡しました。
「これで、もしもの時も安心だね」と笑顔で言われたその瞬間、
ご家族の中にあった"見えない不安"が、静かに溶けていきました。
終活や生前対策の目的は、
"モノやお金を整理すること"ではなく、
"信頼と安心を残すこと"。
司法書士としてできることは、
その「安心の設計図」を一緒に描くことだと思っています。

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