第3回:「書く」前にやるべきこと──家族会議と財産リストのすすめ

2025年12月03日

遺言書は「最後の手紙」であると同時に、家族の未来を守るための設計図です。けれど、いきなり書き始めてもうまくいかないこともあります。今回は、遺言書作成の前に欠かせない"2つの準備"――「家族会議」と「財産リストづくり」について、司法書士の立場からわかりやすくお話しします。

目次

  1. 遺言書を書く前に考えたい「準備」の重要性
  2. 家族会議──"思い込み"をほぐす時間
  3. 財産リスト──自分の財産を「見える化」する
  4. 家族会議+財産リストで防げる3つのトラブル
  5. 司法書士がサポートできること
  6. まとめ──「準備がすべて」を忘れずに

1. 遺言書を書く前に考えたい「準備」の重要性

 「よし、遺言書を書こう」と思い立ったとき、多くの方がまず考えるのは「何を書くか」でしょう。
 しかし実際に多くのご相談を受けて感じるのは、"書く前の準備"ができているかどうかで、その遺言が機能するかどうかが決まる、ということです。

たとえば──

  • 財産の全体像を把握していない
  • 家族の意向をまったく確認していない
  • 想いを伝える言葉を整理できていない

 このような状態で書いた遺言書は、形式的には正しくても、実際の相続の場面では「なぜこの分け方にしたのか」が伝わらず、かえって家族間の不信を生むことがあります。

だからこそ、まずは**"書く前の準備"**が大切なのです。

2. 家族会議──"思い込み"をほぐす時間

 「家族会議」と聞くと、少し構えてしまう方も多いですが、堅苦しく考える必要はありません。
 目的は、家族それぞれの考え方や希望を共有することです。

 たとえば、親御さんが「長男に家を継がせるのが当然」と思っていても、長男は「自分は転勤族だから、実家を継ぐのは難しい」と考えているかもしれません。
 また、次男や長女が「自分の取り分はどうなるの?」と心配しているケースもあります。

 遺言書を「書く人の意思」だけで完成させると、こうしたギャップが表面化したときに"争族"の火種になります。
 家族会議は、そうした**「思い込みのズレ」を解消する場**なのです。

家族会議をスムーズに進める3つのコツ

  1. 話す前に「目的」を共有する
     「今日は遺言の中身を決める日ではなく、みんなの意見を聞く日」と最初に伝えましょう。
  2. 一度では終わらせない
     一回で結論を出そうとせず、段階的に話すと安心です。
  3. 専門家の同席も有効
     司法書士などの第三者が入ると、感情的にならず冷静に進めやすくなります。

3. 財産リスト──自分の財産を「見える化」する

 もうひとつ大切な準備が、「財産リスト」を作ることです。
 これは、遺言書を書くための"設計図"のようなものです。

財産リストに書くべき項目

  • 不動産(土地・建物)
  • 預貯金(銀行名・支店・口座種別)
  • 株式・投資信託などの有価証券
  • 保険(死亡保険金の受取人を含む)
  • 負債(借入金・連帯保証など)
  • 貴金属や骨董品などの動産

 「思っていたよりも財産が多かった」「逆に、名義変更を忘れていた」など、書き出してみて初めて気づくことも多くあります。

また、財産を整理する過程で、

  • 認知症対策(信託や後見制度)
  • 生前贈与
  • 不動産の名義確認
    といった、将来のリスクにも自然と目を向けることができます。

4. 家族会議+財産リストで防げる3つのトラブル

「知らなかった」が原因の不信感
 財産や方針を知らされていなかった家族が、後で遺言書を見て驚くケース。
 → 家族会議で事前に方向性を共有しておけば回避できます。

相続人同士の"感情のズレ"
 金額の問題よりも、「自分だけ軽んじられた」と感じることが原因になることが多いです。
 → 財産リストをもとに、全員が納得できる形を探す過程が重要です。

財産の漏れ・重複
 銀行口座や不動産が複数ある場合、把握漏れが争いの種に。
 → リスト化で「抜け」や「重なり」を防げます。

5. 司法書士がサポートできること

司法書士は、遺言書を"法的に有効にする"だけでなく、

  • 家族会議の進め方の助言
  • 財産リストの作成サポート
  • 不動産の調査・評価
  • 相続人関係の整理
    など、「書く前段階」から伴走できる専門家です。

「どこまで話していいかわからない」「家族にうまく切り出せない」
そんな方こそ、早めの相談をおすすめします。
中立的な立場から、家族に合った進め方を一緒に考えます。

6. まとめ──「準備がすべて」を忘れずに

 遺言書づくりは、"書くこと"より"準備すること"が大切です。
 家族会議でお互いの考えを共有し、財産リストで現状を整理する。
そのうえで初めて、「自分らしい遺言」が形になります。

 準備の段階で時間をかけることが、のちの安心につながります。
次回は、実際に「どんな遺言書を選ぶか」「自筆・公正証書の違い」など、形式面のポイントを詳しくお伝えします。

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