相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
第3回:「書く」前にやるべきこと──家族会議と財産リストのすすめ

遺言書は「最後の手紙」であると同時に、家族の未来を守るための設計図です。けれど、いきなり書き始めてもうまくいかないこともあります。今回は、遺言書作成の前に欠かせない"2つの準備"――「家族会議」と「財産リストづくり」について、司法書士の立場からわかりやすくお話しします。
◆目次
- 遺言書を書く前に考えたい「準備」の重要性
- 家族会議──"思い込み"をほぐす時間
- 財産リスト──自分の財産を「見える化」する
- 家族会議+財産リストで防げる3つのトラブル
- 司法書士がサポートできること
- まとめ──「準備がすべて」を忘れずに
1. 遺言書を書く前に考えたい「準備」の重要性

「よし、遺言書を書こう」と思い立ったとき、多くの方がまず考えるのは「何を書くか」でしょう。
しかし実際に多くのご相談を受けて感じるのは、"書く前の準備"ができているかどうかで、その遺言が機能するかどうかが決まる、ということです。
たとえば──
- 財産の全体像を把握していない
- 家族の意向をまったく確認していない
- 想いを伝える言葉を整理できていない
このような状態で書いた遺言書は、形式的には正しくても、実際の相続の場面では「なぜこの分け方にしたのか」が伝わらず、かえって家族間の不信を生むことがあります。
だからこそ、まずは**"書く前の準備"**が大切なのです。
2. 家族会議──"思い込み"をほぐす時間

「家族会議」と聞くと、少し構えてしまう方も多いですが、堅苦しく考える必要はありません。
目的は、家族それぞれの考え方や希望を共有することです。
たとえば、親御さんが「長男に家を継がせるのが当然」と思っていても、長男は「自分は転勤族だから、実家を継ぐのは難しい」と考えているかもしれません。
また、次男や長女が「自分の取り分はどうなるの?」と心配しているケースもあります。
遺言書を「書く人の意思」だけで完成させると、こうしたギャップが表面化したときに"争族"の火種になります。
家族会議は、そうした**「思い込みのズレ」を解消する場**なのです。
家族会議をスムーズに進める3つのコツ
- 話す前に「目的」を共有する
「今日は遺言の中身を決める日ではなく、みんなの意見を聞く日」と最初に伝えましょう。 - 一度では終わらせない
一回で結論を出そうとせず、段階的に話すと安心です。 - 専門家の同席も有効
司法書士などの第三者が入ると、感情的にならず冷静に進めやすくなります。
3. 財産リスト──自分の財産を「見える化」する
もうひとつ大切な準備が、「財産リスト」を作ることです。
これは、遺言書を書くための"設計図"のようなものです。
財産リストに書くべき項目
- 不動産(土地・建物)
- 預貯金(銀行名・支店・口座種別)
- 株式・投資信託などの有価証券
- 保険(死亡保険金の受取人を含む)
- 負債(借入金・連帯保証など)
- 貴金属や骨董品などの動産
「思っていたよりも財産が多かった」「逆に、名義変更を忘れていた」など、書き出してみて初めて気づくことも多くあります。
また、財産を整理する過程で、
- 認知症対策(信託や後見制度)
- 生前贈与
- 不動産の名義確認
といった、将来のリスクにも自然と目を向けることができます。
4. 家族会議+財産リストで防げる3つのトラブル

① 「知らなかった」が原因の不信感
財産や方針を知らされていなかった家族が、後で遺言書を見て驚くケース。
→ 家族会議で事前に方向性を共有しておけば回避できます。
② 相続人同士の"感情のズレ"
金額の問題よりも、「自分だけ軽んじられた」と感じることが原因になることが多いです。
→ 財産リストをもとに、全員が納得できる形を探す過程が重要です。
③ 財産の漏れ・重複
銀行口座や不動産が複数ある場合、把握漏れが争いの種に。
→ リスト化で「抜け」や「重なり」を防げます。
5. 司法書士がサポートできること

司法書士は、遺言書を"法的に有効にする"だけでなく、
- 家族会議の進め方の助言
- 財産リストの作成サポート
- 不動産の調査・評価
- 相続人関係の整理
など、「書く前段階」から伴走できる専門家です。
「どこまで話していいかわからない」「家族にうまく切り出せない」
そんな方こそ、早めの相談をおすすめします。
中立的な立場から、家族に合った進め方を一緒に考えます。
6. まとめ──「準備がすべて」を忘れずに
遺言書づくりは、"書くこと"より"準備すること"が大切です。
家族会議でお互いの考えを共有し、財産リストで現状を整理する。
そのうえで初めて、「自分らしい遺言」が形になります。
準備の段階で時間をかけることが、のちの安心につながります。
次回は、実際に「どんな遺言書を選ぶか」「自筆・公正証書の違い」など、形式面のポイントを詳しくお伝えします。

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