生前対策とは、将来の相続・認知症・家族間トラブルに備えて、元気なうちに財産・法的手続き・意思表示を整えておく準備のことです。早めに始めることで、相続手続きの負担軽減、争族の予防、認知症による資産凍結の回避が可能になります。本記事では、生前対策の全体像、優先順位、具体的な進め方を専門家の視点でわかりやすく解説します。
第2回:【香川県・高松市の生前対策】「亡き父の“メモ”が、家族を救った日」 ─ 遺言書よりも大切な“想いの残し方”の話

「遺言書までは大げさかもしれないけど、何か残しておいた方がいいですか?」
そんなご相談をよくいただきます。
今回は、正式な遺言書ではなかった"ある一枚のメモ"が、家族の心をつないだお話をもとに、司法書士として感じた「想いの残し方」の大切さをお伝えします。
■目次
- 一枚のメモから始まった相続相談
- 法的には「遺言」ではないけれど
- 家族の心を動かした"たった数行の言葉"
- 司法書士が橋渡しした「想い」の整理
- 遺言書の目的は"法的効力"だけではない
- まとめ:想いを残すことが、家族を救う
1. 一枚のメモから始まった相続相談

高松市内にお住まいの三人姉妹から、「父が亡くなった」とのご相談をいただきました。
葬儀も終わり、少し落ち着いた頃。
相続の話を始めようとしたとき、長女の方が小さな封筒を取り出されました。
「これ、父の机の引き出しに入っていたんです」
中には、折り畳まれたA4の紙。
震える字で、こう書かれていました。
『家は長女に。預金は三人で仲良く分けてほしい。
いつも助けてもらって感謝している。ありがとう。』
署名や日付はありましたが、押印はなく、いわゆる**「自筆証書遺言」**としての形式は整っていませんでした。
2. 法的には「遺言」ではないけれど

私はまず、「これは法律上の遺言書ではない可能性が高いです」と正直にお伝えしました。
ただし──その一言に続けて、こう言いました。
「でも、"遺志"としての力は十分にあります。」
形式が不備でも、家族がそれをどう受け取るかが一番大切です。
このメモは、少なくともお父さまが「家族を思って書いたもの」。
法的効力がなくても、"心の整理"を助けることはできるのです。
三姉妹の皆さんも、黙って頷かれました。
「父らしい書き方ですよね。几帳面じゃないけど、優しい人でした。」
3. 家族の心を動かした"たった数行の言葉"

話を進めていくと、家族の中で少し意見が分かれました。
「法的に有効じゃないなら、平等に分けた方がいいのでは?」
「でも、父の言葉を無視するのは違う気がする…」
議論が続いた後、三女の方がふとこう言われました。
「"ありがとう"って書いてある。それだけで十分じゃない?」
その瞬間、空気が変わりました。
泣きながら、三姉妹は封筒を見つめていました。
言葉よりも、想いが残っていたのです。
4. 司法書士が橋渡しした「想い」の整理
私の役目は、感情を整理しながら、法的に安全な形に落とし込むことです。
最終的には、メモの内容を尊重しつつ、
「家は長女名義」「預金は三人で均等に」
という内容の遺産分割協議書を作成しました。
その過程で、私はあえて時間をかけました。
「法的に正しい」ことを急ぐよりも、
**"全員が納得して署名できること"**の方が重要だからです。
完成した協議書に三人が署名したとき、
「父の言葉を守れた気がします」と言われたのが印象的でした。
5. 遺言書の目的は"法的効力"だけではない

司法書士として感じるのは、
「遺言書=法的文書」ではなく、
"人生のメッセージ"を残す手段だということです。
確かに、形式を整えることは大切です。
しかし、形式だけ整えても、心が伝わらない遺言書は少なくありません。
逆に、このお父さまのように、不完全でも"想いの温度"が伝わるメモが、家族を救うこともあるのです。
そこで私がよくお伝えしているのは、
「遺言書の効力についてはサポートしますので、まずは"自分の想いを書くこと"が大切です。」
そして、できればその想いを司法書士や家族と共有し、
**「想いを形にするサポート」**を受けておくと、より安心です。
6. まとめ:想いを残すことが、家族を救う
この出来事から、私は改めて感じました。
人は、財産を残すためだけに遺言を書くのではありません。
「家族がもめないように」「ありがとうを伝えたい」──
その小さな気持ちが、どれだけ大きな力を持つかを。
お父さまのメモは、法的には"遺言書未満"でした。
けれども、**家族をひとつにした"想いの証"**だったのです。
これから生前対策を考える方へ。
どうか「何を書くか」より、「何を伝えたいか」を大切にしてください。
司法書士として、あなたの"想いを形にするお手伝い"をいたします。
しかし、こんな風にうまくいくかどうかなんてわかりません。ちゃんとした遺言書をかければ一番ですので、元気なうちに専門家に相談しましょう。

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